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ものづくりの魂

ちょっと前の記事ですが、読んで以来ものすごく共感というか、いろいろ考えさせられてしまった小寺氏のコラム。

男は本当にメカメカしいものが好きなのか (ITmedia)

遺伝子とか本能とかそういうものに照らし合わせるとするならば、男とはメカメカしい云々ではなく、常に新しいものが好き、という感覚の方が強い生き物というべきであろう。

(中略)

モノを作るのが男であれば、男が欲しがるようなものを作るのは、そう難しくはない。変に市場調査なんかして、性別年齢別データなどに頼るから変なほうに舵取りしてしまうのだ。もっと単純に自分が欲しいモノを作ればいいのだし、我々男はそういう「男の本能、魂のシャウト」みたいな製品にガッツリ惚れるのである。

(中略)

「女性はこういうモノが好きなはずだ」と思って作ったものは、大抵上手く行かない。大筋では合っているにしても、根底の部分で何かを大きくハズしているのだろう。


一年ほど前まで、コンシューマーの世界での「ものづくり」に対してはイチ顧客でしかなく、顧客企業の求めるものを、要件どおりに作ることが必要とされる B2B の世界での「ものづくり」を生業としていた私としては、コンシューマー企業が顧客の求めるもの、世の中が求めるものを読み違えるその感覚が、ある意味理解できませんでした。技術者が、単純に自分がユーザーになることを想定して、欲しいモノ、使いやすいモノを考えれば、世の中は支持してくれるものでは・・・と考えていました。

確かに、市場を創造するようなどこか突き抜けた商品を生み出すのは、技術屋の独りよがりではなく企画屋の閃きが必要なのかもしれませんが、最近、「作りたいモノを作る」技術屋のこだわりや、「斬新なモノを生み出す」企画屋の発想が、あまりに欠如してはいないでしょうか。市場分析をした PowerPoint のキレイな資料を、ものづくりの起点としてどこか依存してしまってはいないでしょうか。

こんなことを書くと、調査会社の方には失礼かもしれませんが、市場調査やクラスタリングなどによって得られる「データ」はあくまでモノを作り、売る際の作りざま、売りざまを決める際に発想を裏付けするための材料であり、そのモノを作って売ることを会社認めさせるための道具に過ぎないのではないでしょうか。ロボットが自分より優れたロボットを「発明」することがあり得ないのと同様、優れたデータや市場分析そのものが新しいモノを生み出すわけではなく、それは人がそのデータを基に何かを思いついたり、思いついたことに説得力を与えるに過ぎない、と思います。
おそらく本当に素晴らしい「もの」 とは、データや蘊蓄で多くを語らなくとも、その「もの」自体が最も雄弁にその良さを語ってくれるもの。

自分が一番のユーザーになったつもりで、自分が欲しいものをつくる。その単純な、ものづくりの原点とも言えるやり方が認められなくなった原因は、果たして時代にあるのか、社会にあるのか、会社にあるのか、それとも人にあるのか。確かなことは言えませんが、それでもものづくりの「魂」と呼べるものは、そのモノを作っているとき、手にしたとき、使ったときに感じる「喜び」そのものではないでしょうか。

コメント

  1. むっちー より:

    ”モノを作るのが男であれば、男が欲しがるようなものを作るのは、そう難しくはない。変に市場調査なんかして、性別年齢別データなどに頼るから変なほうに舵取りしてしまうのだ。もっと単純に自分が欲しいモノを作ればいいのだし、我々男はそういう「男の本能、魂のシャウト」みたいな製品にガッツリ惚れるのである。”

    ここんとこに激しく同意です!

    自分の美意識をもっと信じて仕事したいですね
    理屈じゃ言えないけど、培ってきたものってきっと
    あるはずだからさ

  2. ぐっち より:

    どうも。ご無沙汰してます。

    この話、全然失礼じゃなく、その通りだと思いますよ。同感です。

    我々が言うのもなんですが調査データはあくまでも過去のデータで、新しい半歩先のことを考え、社内でその市場性を検討するための材料に過ぎず!です。

    ただ、組織は大きくなると自社の評価が
    ”他社に負けている”ことすら認められなくなる現象が
    よく起こるので、危機感とその内容を把握して
    共有化するには調査データは使えるツールになります。

    むしろ、データやクラスタをうまく使っている会社は、
    細かく市場を把握しているので、
    数が出ないけどとがった商品を出したりしています。

    私も商品企画そのものを受託することがありますが、
    あくまでもデータは顧客視点で顕在化した事象を示すものでしかなく残念ながら答えは導き出してくれません。

    企画者側が提案すべき内容を膨らましたり、ぶつける市場ターゲットや規模の判断精度を上げる程度のものです。

    でも、企業が大きくなると、その判断精度が1~2割あがったり、成功や失敗の理由を検証して学習できるようになるだけでもかなりパフォーマンスは変わってきます。

    ・・・やはり、PCやITの話と一緒で
    調査データやクラスタはあくまでも道具なので
    使い方次第、です^^

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