先週末から公開されたばかりのこの映画、さっそく観に行ってきました。
細田映画ファンとしては 3 年ぶりの新作ということで、ずっと楽しみにしていました。反面、今までの作品とはちょっと毛色が違いそうな雰囲気も漂っていたので、不安半分・・・というのもありつつ。「おおかみおとこ」と人間の女性の間に生まれた二人の「おおかみこども」の物語、という以外にほとんど事前情報を仕入れずに観に行きましたが、今までの細田映画とも、私が想像していたような方向性とも随分違っていて、驚きました。
どちらかというと『トトロ』や『ポニョ』のような、大人も子どもも楽しめる作品なのかな、と思っていたら、むしろ子どもには難しいだろう、大人向けの作品でした。『おおかみこどもの雨と雪』というタイトルながら、主役はむしろ宮﨑あおい演じる母親の「花」の子育てと人生の物語。二児の親としては、姉の「雪」が生まれた瞬間から、私も完全に人の親の目線で作品の世界に没入していました。
まだ公開直後なので内容のネタバレは避けますが、クライマックスはもっと盛り上がるのかと思ったら、案外淡々と進んでいくものですね。物語のダイナミクス的には『アリエッティ』的な抑揚なので、予告編の躍動感あふれる映像の延長線上を期待していると、静かなクライマックスに肩透かしを食らうかもしれません。でも、このストーリーと、主人公・花のキャラクターにとても相応しい結末で、エンドロールを観ながら何度も余韻をかみしめてしまいました。
ストーリーは花とおおかみおとこの出会いから、雪が 13 歳になるまでを描いているので、私の長女はちょうどその半分。雨と雪の姿が、あまりにも自分の娘たちの姿にオーバーラップして見えたので、これからの 6 年、そしてその先、を想像すると、なんだか自分が全然足りていないような気がしてきます。
さておき。
この作品の舞台は、二人の出会いから子どもたちが生まれる前までを国立(明らかに一橋大学と思われる学校がありましたね)、そして花が二人のおおかみこどもを育てていく山あいの農村を富山県上市町をモチーフとしているようです。富山が舞台になったのは、細田守監督自身の出身地がこの上市町だからというのが大きいでしょうが、花たち三人が田舎に引っ越し、あの独特の稜線が画面に現れた瞬間に、立山の麓が舞台であることを認識しました。それくらい、海沿いに生まれ住んだ私ですら判るほどに、富山県人はあの山の形を毎日目にしながら生きていて、心に刻まれているということだと思います。
私は山のほうの暮らしは分かりませんが、10 歳の頃に建て替えられる前の生家は築 100 年を超える古民家だったので、花たちのボロ家での住まいには本当に懐かしくなりました。そういう、建物だったり街角だったり風景だったり気候だったりするものの描写が本当にリアリティがあって、もしかしたらこの作品の本当の主役はこの映像美術そのものなのではないか、と思ったほどです。ジブリのそれとはちょっと方向性が違うし、リアルに描写しすぎなんじゃないかというのが少し鼻につくほどでさえありましたが、この美術はアニメ作品の中でもマイルストーンのひとつになると思います。
いい映画でした。そして、私が家にいない間子どもたちを見てくれている奥さんに、もっと感謝しないといけないなあ、というのを痛感した映画でもありました。
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