東京国際映画祭で先行上映された『劇映画 孤独のグルメ』を一般公開に先駆けて鑑賞してきました。
映画祭って初めて参加したのですが、会場は日比谷~有楽町周辺の複数の映画館を横断的に利用しているんですね。さらに日比谷ミッドタウン前の広場では無料上映作品もあったりしてまさにお祭り状態。チケットは各映画館ではなく東京国際映画祭の公式サイトから別途購入する必要がありますが、それ以外はいつもの映画館の感覚で鑑賞できました。
『劇映画 孤独のグルメ』は東京宝塚ビル地下にある TOHO シネマズ日比谷のスクリーン 12 で上映されました。
テレビシリーズとは異なり、主演の松重豊氏が企画・脚本・監督も務めるということでレギュラードラマとはけっこう雰囲気が違う。レギュラードラマは食事パートがメインでドラマパートはあくまで導入というか余興(笑)みたいな感覚で、毎年恒例の大晦日スペシャルも長編を作るために一応シナリオはあるけどそれでも食事が主役。しかし本作は作り方が全く異なり、まず本筋のストーリーがしっかりあってそこに食が絡んでいく形になっています。
現時点でネタバレは避けますが、大晦日スペシャルの延長線上にあるものを映画館で流すのではなく、映画作品として成立させるために最低限何が必要か?ということを真摯に考え抜いた上で作られた作品だと感じました。この「食とドラマの比重の違い」は現在テレビシリーズとして放送中の『それぞれの孤独のグルメ』でも感じるところで、Season10 までのドラマが「久住昌之の孤独のグルメ」だったとすれば『それぞれ』と本映画は「松重豊の孤独のグルメ」になったのだと思います。まあ、それは今年唐突にそうなったというよりはシーズンを重ねるうちに久住流と松重流が徐々にミックスされていって、今やどちらかというと松重さん中心の作品になったという方が正確かもしれませんが。シリーズが始まった頃の松重さんは単にいち演者だったのが、近年はドラマで「追加の一品」を松重さんが提案するようになった、というあたりに徐々に関与度が変わっていったことを感じます。
ちなみに松重さんが映画の PR コメントで「大冒険あり、ラブストーリーあり」と言っていたのがさすがに松重さん流の冗談だろうと思っていたのですが、映画を観てみたら本当に大冒険もラブストーリーもありました…。そしてラストは何とも言えずジーンとくる結末。今までの孤独のグルメとはちょっとテイストが違う、これが松重監督がやりたかったことか。
映画の作りについて言及すると、秒間 24 コマという映画用フォーマットで映るゴローはテレビとは雰囲気が違ったし、カラーグレーディングもかなり映画的。特にパリパートはちょっとやり過ぎなくらいグレーディングかかってましたね。そして劇伴はいつものスクリーントーンズの楽曲を軸としながらも、松重さんも交流の深いアーティスト Kan Sano 氏の楽曲とアレンジが映画らしさを支えていて、テレビシリーズとはちょっと違う少しシリアスながらも優しい空気感を醸し出しています。それと主題歌を務めるザ・クロマニヨンズの「腹減った!」というシャウトのコントラストが強烈で、音楽を聴いているだけでも腹が減る。
上映後には 30 分ほどの舞台挨拶があり、演者というよりは監督としての松重豊さんが登壇されました。私は久住さんとは何度かお会いしたことがありましたが、生松重さんは今回が初めて。ここでは書けないネタバレ話も含めていろいろと映画の裏側を聞かせていただきました。セッションの様子は既に各メディアで記事化されているので概要はそちらにて。
松重さん、メディア向けのフォトセッション中も観客を飽きさせないよう細かく笑いを入れてきて楽しい方でした。「聖地巡礼をする方は大変貴重な経験ができると思います」というコメントもあり、なんか名指しされているような気分になりました(笑。
一般公開は年明け 1 月 10 日から。実は私は映画祭の明日の上映回のチケットも取れてしまったので、もう一回観てきます(笑。
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