「こんな風に大勢で食べるの、いつ以来だろう」
一昨日放送された『それぞれの孤独のグルメ』第 6 話の聖地・平塚に行ってきました。
今回はいつもとはずいぶん毛色が違う、こども食堂の話。「孤独じゃないグルメ」だったのも史上初のことではないでしょうか。
長年聖地巡礼を続けてきた私としても是非行ってみたい場所ではありましたが、「大人も子どもも大歓迎の地域食堂」とはありつつも自分が食べることで本当にこれを必要としている子どもさんが一人食べられなくなるのでは意味がない。どうしたものか…と思っていたらちょうど今日、日曜の朝に誰でも参加可能な礼拝をやっているということでそちらに行ってみました。
私は今までの人生で結婚式場の付帯施設以外の教会に来たことは二、三回くらいしかありません。もちろん礼拝に参加したこともなく、映画『ブルース・ブラザース』の序盤に出てくる礼拝シーンのイメージがある程度。そんな私でも全く抵抗なく受け入れてくださいました。
入口で聖書と賛美歌集をお借りして礼拝に参加。ジェームス・ブラウンのようなファンキーな講話はありませんでしたが(笑)、初めて参加した礼拝は温かくも厳かな雰囲気でした。初見ながら楽譜を見ながら賛美歌を歌うのはけっこう楽しかったな。
信徒でも何でもないから端の方で邪魔にならないよう礼拝に参加し、タイミングが合えば牧師さんと少しお話しできたら良いな…というつもりでいたところ、牧師さんだけでなく他の信徒さんたちも含め温かく話しかけてきてくださって救われた気持ちになりました。ドラマを観て来た旨を伝えたところ、牧師さん自ら教会内を案内してくださいました。
ドラマにも登場したこども食堂の幟を持っているのがこの平塚バプテスト教会の平野牧師。今回初めて知ったのですが、こういう教会の牧師さんって赴任制で入れ替わりがあるんですね。この平野牧師は就任以来こども食堂(こひつじ食堂)を始めたりコロナ禍において礼拝のオンライン対応を進めたり後述するクラウドファンディングを実施したり、新しいことに積極的に取り組んでいるとのこと。
ちなみに『それぞれの孤独のグルメ』にこども食堂が登場することになったのは松重さんが最近 AC ジャパンのこども食堂の CM に出演したのがきっかけで、全国のこども食堂ネットワークからこちらの教会が選ばれた模様。8 歳から 89 歳(!)まで毎回三十人近いボランティアの方々による活気ある運営を制作陣が見学したことが決め手になったそうですね。
礼拝堂の二階席より。あの「腹が、減った」の孤独カットもここから見下ろしアングルで撮影されていました。
この二階席は子どもが上ると危ないからという理由で閉鎖されているそうですが、今回特別に上らせていただけました。
教会の裏手にある駐車場と、公民館的に地域に開放しているという離れ「こひつじ館」。
ドラマの撮影時にはこの駐車場がロケバスやエキストラさんの待機場所となったほか、五郎や村山(平田満)、健太(斎藤汰鷹)の「心の声」はこひつじ館で収録されたそうです。
劇中で豚バラ大根やシイラのフライが調理されていた厨房施設まで見せていただきました。
今日も平野牧師の奥様や信徒の方々が調理されていたようですが、「これが五郎さんが食べてたお皿です」とか「これが例のお鍋」とか、皆さんサービス精神が旺盛(笑
五郎や村山がボランティアとして食事の準備を手伝っていた作業場には、今日はテーブルが円卓状に並べられていました。
実は毎月一回程度、日曜の礼拝後にここでそのまま食事会が開催されています。私も「是非に」ということでご相伴にあずかることになりました。
今日のメニューはカレーライスでした。
それも、いかにも家庭的なカレーライス。それほど辛くない優しい味、これぐらいの味付けがいい。まるでこの教会の皆さんの人情のようなあたたかさ。
牧師さんや信徒の皆さんとテーブルを囲み、教会や『孤独のグルメ』の話をしながら一緒に食べるカレー、じわじわとおいしい。
副菜はカブとキュウリの酢の物。
この味付け、なんていうか実に人間的。
さっきのカレーといいこの酢の物といい、まるで親戚の家に遊びに来たかのような懐かしさと安心感がある。
こういうものが何よりも沁みる今日この頃。
食後のデザートは林檎。気分的には完全に自宅。
この林檎を囓りながら、教会という場所でありながらここに居る人たちはなんだか家族のような関係なんだなあ、ということを思いました。言われてみれば、宗教って教義がどうのというのもあるけど地域社会単位で見れば互助のためのコミュニティーという側面も持っているわけです。ならば 70 年以上続くこの教会の信徒さんたちは家族のような関係性なんだろうし、その延長線上でこども食堂などの地域活動に注力するのも自然なことだったのかもしれません。
さらにコーヒーまで!
まさに至れり尽くせり。私もすっかり寛いでしまいました。
林檎がデザートだと思っていたらお菓子まで出てきました(笑。
こういうお茶請けも、きっと信徒さんたちが互いに持ち寄ってきたものなのでしょう。
まだまだあります。信徒さんのお一人が「ウチで採れたサツマイモをふかしてみたけどあんまりおいしくなかったからスイートポテト作ってみたの」ということでこれまたいただきました。
やっぱりなんか、親戚の家に遊びに行ったときに「あれもこれも」といっていろいろ食べ物が出てくる感覚によく似てる(笑。
ああ…いい昼食だったなあ。
昼食会の後には再び礼拝堂へ。
なんと先ほどの礼拝のための映像・音響設備をそのまま使って『それぞれの孤独のグルメ』のパブリックビューイングが始まりました(笑。
こないだの稲荷町のサウナでもそうだったけど、ドラマの舞台になった場所で同じように食べて、そのままその場でドラマの映像を見られるというのは感激しますね。
鑑賞後には平野牧師自ら撮影の裏話をいろいろ披露してくださいました。例えば「教会に行く前と後に村山が仏前でチーンとやるのは宗教的に問題ないか、脚本の段階で局から教会に確認が入った」とか。言われてみれば確かに重要(笑
劇中で使用されたこども食堂のポスター。実際に教会が作成しているこひつじ食堂のポスターにデザインを寄せる形でドラマスタッフが作ったものです。
余りが何枚かあったようで、記念品として持ち帰り可能でした(笑
ちなみに「こひつじ食堂」は近隣の方々のための活動であり、遠方からの参加はご遠慮いただいているとのこと。ドラマを観てこの教会を訪れてみたくなった方は日曜の礼拝またはその他の行事(これからの季節だとクリスマス会ですかね)に参加するのが良いでしょう。
上映会後、礼拝堂は翌週のこひつじ食堂に向けてレイアウトを変更するということで私もお手伝い。
子ども用のテーブルと椅子を並べて劇中の状態を再現していくのを手伝えるのは私にとってはむしろご褒美です。作業後、ゴロー席に座って記念写真まで撮っていただけました。
こひつじ食堂、いい場所じゃないか。
さて、最後に重要なお知らせをひとつ。
平塚バプテスト教会のこひつじ食堂では、現在活動の継続・発展のためのクラウドファンディングを実施しています。実質的にはクラウドファンディングの仕組みを利用した寄付ですね。
クラウドファンディングで集めた資金の使い途は設備の更新です。
まずはこの冷蔵庫、現在使っているものは 30 年ほど前(パナソニックになる前の「ナショナル」時代)のもので容量は核家族向けの 300L しかありません。古いだけでなく最大で 200 食用意するというこひつじ食堂には容量的にも足りておらず、これを倍の 600L 級のものに買い換えたいとのこと。
もう一つはこひつじ食堂で使用する椅子。
ドラマでは写真左のきれいな椅子が主に使われていましたが、実は半分ほどは右側のかなり古いもの(40~50 年前のものに見える)で耐久性的にも限界に来ており、左のと同等品に買い換え予定とのことです。
クラウドファンディングはこのエントリー執筆時点で進捗率 11%。All-or-Nothing 方式(未達の場合はシステム手数料を除き出資者に返金される)ため、達成しない限り設備は何も更新できないという厳しい条件です。この活動に賛同される方は一口 1,000 円からでもぜひご支援を。私も微力ながら支援させていただきました。
ドラマを観て、かつ現場で状況を見せていただいた者としてプロジェクトを応援しています。
皆さんにこれほど歓迎されるとは思っていなかったので嬉しい驚きでした。劇中のあのほっこりとした空気感はドラマの創作じゃなくて、この教会そのものが持つ温かさだったんだろうなあ。
今日のことはきっと忘れないでしょう。心なしか、なんか愛着が湧いちゃってるよ、俺。
こひつじ食堂がこれからも長く続いていくことを願っています。
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