セイコーのちょっと変わったミュージアムで開催中の展示会を見に行ってきました。
原宿駅前の再開発に伴い四年前に開業した WITH HARAJUKU 内にある「Seiko Seed」にて期間限定で開催されている展示会です。私はこの建物自体初めて入りました。
このイベントの詳細は Impress Watch のこの記事↓が詳しいです。
老舗時計メーカーとしてさまざまな専用時計を開発してきたセイコーが、「もしこんなこと/人専用の腕時計があったら」という想像に基づいて作ってみた腕時計のデザイン展です。
まずはこれ、金属のカタマリ感とメカ感があってカッコいい腕時計はその名も「晴れ男専用腕時計」。要するに日時計なわけですが、単に日時計と言わず「晴れ男専用」と呼んでしまうネーミングセンスの勝利(笑。
確かに晴れてないと時刻が分からないし、天候に関わらず屋内だと分からない腕時計としては致命的な欠点があるものですが、時計の原点に帰ってみました感は伝わってくる。
無駄にカッコいいデザイン、造形、ギミック。使わないときには折りたたんでおくことができるものですが、折りたたみ機構が複雑だから試すのにはスタッフの補助が必須。
でも妙にオトコノコ心をくすぐってきます。
折りたたみ時には影を出すための棒は本体内に収納可能。
時間なんてもうスマホで見られるんだし、腕時計なんてもう咄嗟に時刻を確認できる必要すらない、機能よりもファッションの一部として割り切って良いんじゃないの?と言っているようにも見えます。
なおここに展示されている「専用過ぎる腕時計」群はいずれも販売されている商品ではありませんが、ちゃんと取説まで用意されているのが細かい。
こういうジョークに本気出してくる姿勢、嫌いじゃないです。むしろ大好き。
このガチのスポーツウォッチ風に見えるこれは「すき焼き専用腕時計」。ちゃんと「SKYKMASTER PROFESSIONAL」という名前がついているし、タキメーターじゃなくスキヤキメーター装備(笑。
すき焼きを最高においしく食べるために具材の投入順序や加熱時間を確認しながら調理できる専用腕時計です。ベルトの表面が牛革、裏面がすき焼き肉柄になっているあたり芸が細かい。
そしてこの専用腕時計用のレシピを監修したのはすき焼きの名店である人形町今半。すき焼き屋の代名詞じゃないですか。ここに展示されている他の専用腕時計もそれぞれ各分野の専門家の監修を受けていて、ただのジョークとしては本気出しすぎている(笑。
ちなみに左側にある『かっこいいスキヤキ』は『孤独のグルメ』原作の久住昌之先生の代表作のひとつ(泉晴紀氏との共作)。これをここにさりげなく置いておくあたり「わかってる」感が強い。
腕時計にしては随分変わったデザインのこれは「かくれんぼ専用腕時計」。冗談もここまでくると訳が分かりません(笑。
この腕時計はかくれんぼの「鬼」専用の腕時計です。ちなみに最上面にあるダイヤルは、鬼が見つけた子をカウントするためのものだそう。
パカッと開けばルーペ状のものが出現し、これを左目で覗き込むことで必然的に右目も塞がれ、隠れ役の子が隠れている間にチラ見してしまうズルを防ぐことができるとのこと。
ルーペを覗き込むと盤面はこんな感じになっています。鬼は子が隠れ始めてから 60 秒後に探し始め、1 ゲームは 10 分という国際ルール(そんなのあるのか)に準拠した腕時計。スタートボタンを押すと電子音による音楽が流れ始め、鬼は 60 秒後に行動開始できます。
このルーペ型デザインは腕時計のデザイナーや職人が日々使っている「キズミ」と呼ばれるルーペがヒントになったそうです。
子ども遊びの道具と侮るなかれ、ウォッチやルーペのケースは金属製でしっかり高級感があります。
続いて「パタンナー専用腕時計」。
洋裁をやる人が腕に針山(アームピンクッション)をつけているのを見たことがありますが、どうせ腕につけるものならば腕時計と合体させれば便利でしょ、ということですね。
こういうポフポフした物体が腕時計と一体化しているというのは珍しいし、側面の操作ボタンがマチ針の頭を模しているのも面白い。
「マスキングテープ好き専用腕時計」。もう訳が分からないレベルを超越しています。
近年ではマスキングテープは本来の用途(塗装のマスキング)ではなく装飾用途のほうが広く使われているように思いますが、モデラー観点で見ても塗り分けが捗りそう(笑
なんてことはないハトメ形状でマスキングテープが装着できるだけの腕時計なんでしょ…と思っていたけどよーく見たら時計のインデックスがマスキングテープで作られてる(!)。
なにげに NATO ベルトもマステのデザインとコーディネートされているし、実は細部へのこだわりがすごい。
そして「パンダ好き専用腕時計」。もう訳が(ry
白い文字盤に黒のインダイヤルのクロノグラフを「パンダ」と通称しますが、そこから発想してデザインをパンダそのものにしてみたということでしょう。競合であるシチズンの「チャレンジタイマー」はそのデザインも相まって強いパンダ感を醸し出していますが、それをセイコーがガチでやってしまうとは(笑。しかも文字盤のテクスチャーがパンダの毛並みを表現していたり、無駄にこだわりが強い。
この尾錠、よく見たらパンダの手じゃん!(笑
パンダクロノからの発想でここまで突き抜けてしまうのがすごい。
ここまで見てきた中で最も普通の腕時計に見えるこれは「両利き専用腕時計」。
なんか時計が上下でキッパリ色分けされていて、なんだかキカイダーのようなデザインをしています。
この腕時計、ダイヤルの表面がギザギザに波打っていて見る角度によって白ダイヤルに見えたり黒ダイヤルに見えたりします。そして時針分針秒針がそれぞれ二本ずつついている。
左腕につけると黒ダイヤルに白い針が浮かび上がって現在時刻が見えてきます。
逆に右腕につけると、白ダイヤルに黒い針が浮かび上がってきて、どちらの腕につけても正確に時刻が分かる、というもの。
SEIKO のロゴやインデックスのデザインもどちらの腕につけてもちゃんと見えるよう工夫されています。
私も夏場なんかは腕時計焼けを防ぐために外出時には腕時計を左右交互に付け替えたりするので、別に両利きでなくともこの腕時計アリなんじゃないでしょうか。
今回の展示会用に用意された試作品は以上ですが、会場内にはセイコーが過去に製品化してきた本物の専用時計群も多数展示されていました。
やはり競技用の時計なんかは専用品が多くなりますね。
これは飽和潜水専用のダイバーズウォッチ。そのデザインから「ツナ缶」の愛称で親しまれているモデルです。
今までに何度も復刻している腕時計ですが、ここに展示されているのはおそらく初代モデルでしょう。近年では PROSPEX シリーズとして復刻しており、co1 さんも愛用しているようですね。
今回展示されていた「専用過ぎる腕時計」群は、普段はグランドセイコーやアストロン、プロスペックスなどを担当しているセイコーの社内デザイナー陣が作ったものとのこと。かなりふざけた内容ですが、こういう遊びに本気を出すことで本来の腕時計のデザインに着想を得られる部分もありそうに思います。遊びに本気を出せる人こそいい仕事もできる、ということじゃないでしょうか。
それほど広い展示スペースではないのでじっくり見ても一時間程度ですが、とても楽しかったです。この Seiko Seed Harajuku では一定期間ごとにテーマを変えてさまざまな展示を行っているようなので、また興味がある展示が始まったら行ってみようと思います。
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