「焼肉、ラーメンにおでんまであるとは。ちと面白き店」
12月。近年は年の瀬の風物詩といえばもう『孤独のグルメ 大晦日スペシャル』が定着した感があります。今年の大晦日は北日本から関東までお米を運ぶロードムービーになるそうですが、私はその前に2017年の大晦日SPの聖地に巡礼してきました。2017年の聖地、高松の讃岐うどんと松山の海鮮居酒屋は巡礼したけど広島だけは未訪だったんですよね。
私としては12年ぶりの広島。久しぶりに来てみたら駅周辺が再開発で様変わりしていて驚きました。路面電車が駅の二階に乗り入れている!まるで初めて来た街のように新鮮。
2017年の大晦日SPではお土産が小道具として印象的な役割を果たしていました。愛媛のじゃこ天と広島のもみじ饅頭。もみじ饅頭は劇中では「井が屋」(井之頭にちなんで?)というお店の紙袋に入っていましたが、これはロゴや紙袋のデザインまで含めて宮島の老舗「藤い屋」さんのパロディーですね。私は敬意を表して藤い屋さんのもみじ饅頭をお土産に買って帰りました。
ということで今回のお店がこちら。広島駅からだと徒歩20分ほどの距離にぽつんと存在する赤のれん。
このお店、長らく「県外・一見客お断り」状態でした。高齢のおかみさんが営むお店でお客が増えすぎると対応できないからという理由。私も以前予約しようとして断られ、これは事実上巡礼不可能だなあ…と諦めていたところ最近になって制限が解除されたことを知りました。それだけでなくお店の公式Instagramまで開設されてるし!速攻でインスタのDMで予約を取ったというわけです。
川にはみ出た焼肉屋。京都鴨川の川床の店とは大違い。でも好き、こういうの。
駅から歩いてきたらいい感じに腹が減ってきたぞ。空腹砂漠に現れしオアシス、期待大。
放送から8年が経つにもかかわらずお店はほぼ当時のままでした。唯一違うのはお店を営むのが男性だったこと。聞くと「おばあちゃんが八十歳を過ぎて引退したから今は僕が引き継いでやってます」とのことで、この夏くらいにおかみさんのお孫さんに代替わりしていたんですね。8年も経てばそりゃあ世代交代もするか。
開店直後に到着したら一番乗りで、ゴロー席に通されました。
店の奥にある階段、劇中では地下にも席がある描写はされていたけど地階の様子が具体的に写されることはありませんでした。そういえば下がどうなってるか気になってたんだよなあ。
お手洗いが地階にあるということでついでに探検。古い日本家屋にありがちな急階段!昔の実家を思い出す。
注文を取ったり料理を運んだりするたびにこの急激な階段を上り下りしないといけないのなら、高齢な先代おかみさんが常連客以外が増えるのを避けたかったのも理解できます。
しかも地下の座敷席、想像以上に広し。上階よりも全然広い。
壁にはサンフレッチェ広島の選手を中心に有名人のサイン多数。うまい焼肉屋ってスポーツ選手のサインがたくさんあることが多いよな。
自席に戻ってまずは生ビールから。
もうすっかり寒くなったけど空気は乾燥しているし、歩いてきたからこのビールで喉を潤す感じが最高。ロースターの揺れる炎を眺めながらでもビールが進む。
そしておでん。焼肉屋なのにおでんってのがいいよなあ。しかも一つ一つに串が刺してあって、自分で取るビュッフェスタイル。
身体冷えてるし、俺もおでんいっとくか。
五郎’s セレクションは牛すじと大根でした。私もこの二つ、大好物。
大根、いい……しみる。やっぱり冬といえばこれだよなあ。ホロホロに溶けるような食感がまたいい。
牛すじは…おお、柔らかい柔らかい。汁をたっぷり吸い込んでる。こいつ、スジの良い牛すじだ。
定番の厚揚げとこんにゃくも。
あぁ…このおでん汁、甘いぞ。なんだか心が少し緩む味。
東京のおでんとは全然違う。甘おでん、ちょっと駄菓子感覚。
広島おでん、いいじゃないか。
さてここで肉を迎え撃つためのキムチと豆もやしがご登場。
単体でもビールのつまみになるし、焼肉と一緒に食べたっていい。焼肉におけるユーティリティプレーヤーだ。
さぁ、肉だ。今年最後の焼肉、心置きなく焼くぞ。
まずは牛タン塩から。
プリプリ、コリコリとしたやや厚めの牛タンに刻みタマネギを乗っけて食べる!
のっけから抜群にうまい。
お次は牛ハラミ。
肉肉しいハラミにタレの濃い味。まさに肉食ってる実感がある。
しかもこのタレ、生姜が効いててうまい。最ッ高。
そしてこれが例の「コウネ」。
馬肉だと「コウネ」はたてがみ(首後ろの脂身。刺身で食べる)のことで私の大好物。でも牛のコウネは肩バラ肉的な部位で、ここだけを切り分けて食べるのは広島独特の文化だとか。
赤身と脂身のコントラストが見事な、巨大な一枚肉。見るからに食べ応えありそうだ。
と、その前にビールが空いたから飲み物補充。
ここからはハイボールでさっぱりといこう。
ド迫力のコウネ焼き。見た目だけじゃなく、しっかりとした噛み応えのあるうまいやつ。
いかにも肉って感じの肉のうまみとけっこう強烈な脂身。
カルビともロースとも違う、ガツンと来るパワフルな焼肉!
うんうん、これぞ広島焼肉じゃけん、やめられんのう。
コウネ単体で食べてもうまいけど、ゴローと同じくタマネギや豆もやしを巻いてもうまい。
いや、肉のパンチ力が強いぶん、むしろこうやって野菜や白飯を合わせて食べるのがうまいような気がする。
なるほどなるほど。これはうまい。コウネ、懐深し。
続いて牛ロース。
おぉ…ロース、やっぱりうまい。
コーネの珍しさが王道ロースの味を引き立てた。貫禄のうまさ。
これ、肉自体ももちろんうまいんだけどこの生姜タレが効いてるなあ。いくらでも食える。
さらに牛レバー。
生でも食べられそうに見えるプリップリのレバー、焼いてももちろんうまい。
…もうそろそろうまい以外の語彙が言語野から消えかかっている。
みそ漬けホルモンも。
煙をモクモクさせながら食べるホルモンってどうしてこんなにうまいんだ。しかもみそ漬けってのがまたいい。生姜タレから目先が変わって、またどんどん食べられそうな気がする。
ここまで来たらマッコリ飲むしかないでしょう。
マッコリの乳酸感が口の中の脂分を洗い落として、サッパリと改めて肉に向き合わせてくれる。
はー、焼肉うまし。
生姜タレとコーネのうまさを知れたのは、広島の大収穫だ。
そして…、
〆はもちろんこれ。ラーメン。
焼肉屋の〆でラーメンってのも珍しいけど、それがとんこつ醤油ベースのスープっていうのがすごい。最後まで攻めの姿勢を崩さない。
ここで、大根のアンコールとラーメンにおでん玉子投入。
ラーメンに玉子が入ってなくておでんに玉子があるの、まるで謀ったような組み合わせ。
うーん、いい。この濃厚スープ、麺を追いかけるのに最高だ。
麺が細麺なのも最後にツルツル入っていくのがありがたい。
とんこつ醤油といっても、東京のとんこつ醤油ラーメンとはひと味違う。これが広島のとんこつ醤油か。
ああ…う ま か っ た 。
まずおでん、焼肉食べて締めラーメン。
近年まれに見る、変わった食べ納めだった。
身体には絶対良くない食べ方だけど、8年越しの聖地巡礼なんだもん。今回ばかりは食欲全解放。
常識に流されず、食べたいときに食べたいように食べる。これが幸せに繋がっている。
長年行きたくとも行けなかったお店にようやく行けました。これで、『孤独のグルメ』の現時点での国内全店舗コンプリート。
とはいっても、二週間後には新しいお店がいくつか増えることになるんだけど。
代替わりしたこのお店が、いつまでも続いていきますように。
ごちそうさまでした。

■ドラマ『孤独のグルメ 2017大晦日スペシャル』聖地巡礼エントリーまとめ
1. 香川県高松市のセルフ讃岐うどん
2. 愛媛県松山市の鯛どんぶり
3. 広島県広島市の焼肉とラーメン
4. 千葉県成田市本町のせいろそば



























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