私が普段聴く洋楽はブラックミュージック系ばかりだし、世代もちょっと違うから Queen については有名な楽曲くらいしか知らないのですが、音楽映画好きとしては観に行くべき作品だと予感したので劇場に足を運んできました。
最も偉大なロックミュージシャンの一人であるフレディ・マーキュリーの生涯とロックバンド「Queen」について描いた音楽ドキュメンタリー映画。
音楽映画というと被差別を含む底辺の生活からグループ結成、ブレイクからの生活の一変、成功したことで周りが見えなくなってのメンバーや友人との決裂、いったん落ちぶれてからの再起…というところまでがテンプレート。本作も、フレディ自身の生まれがそこそこ裕福な家庭だったというスタート地点を除いてはほぼその流れに沿っています。むしろフレディ自身の心情を描写する場面が少ないこともあり、他の音楽映画に比べるとドラマパートは凡庸と言っていい(私が Queen にあまり思い入れがなかったせいもあるかもしれません)。
しかしそれを補って余りあるのがレコーディングやコンサートなどの演奏シーンであり、音楽を通じてフレディが生きた時代を追体験できる点がこの映画の本質であると言えます。ラミ・マレックが演ずるフレディのパフォーマンスは本人そのものにしか見えないし、楽曲は Queen のマスター音源を使用しているというだけあって圧巻。”We Will Rock You” や “We Are The Champions” などのシーンでは、私もライヴ観客の一人となって歌い出したくなる感覚に襲われました。これ、音楽映画におけるライヴシーンとしては史上最高レベルなんじゃないでしょうか。個人的には『ブルース・ブラザース』に匹敵するパフォーマンスだと思います。
こういう映画だからこそ BD や配信を待たずに劇場で観るべきなのですが、単に劇場に行くだけでなく音の良い設備にはこだわりたい。そうなると IMAX かドルビーアトモスが導入されているシアター、あるいは関東ならチネチッタの LIVE ZOUND またはシネマシティの極上音響上映のいずれかが候補になります。私は最後まで LIVE ZOUND にするか迷った挙げ句、きっとスタジアムライヴの熱狂が味わえるに違いないと信じて久々にドルビーアトモスが導入されている日本橋 TOHO を選択。結果的に、期待したとおりに密度の高いサラウンド感が得られ、スクリーンの中にいるはずのスタジアムの観客たちとの一体感を味わえました。LIVE ZOUND や極音上映ではきっとまた違った感じで、ライヴ会場の PA を通したようなサウンドが楽しめるんじゃないかと思うので、機会があればそちらも聴きに行ってみたい(もはや映画を観るのではなくライヴを聴きに行く感覚)。
劇中に登場した楽曲はほとんどが聞き覚えのあるものばかりで、さすが大ヒット曲を多数もち日本でも馴染みの深い Queen の映画。これはファンでなくとも楽しめる、音楽好きならば観ておく価値があると言えます。私はまんまとサントラが欲しくなってしまいました。
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