宮前平の「しお田」にとんかつを食べに行ったら、記名から開店時刻までの時間をどう過ごすかが一つの課題。今までは駅周辺の喫茶店を利用していたのですが、今回は東急が駅近で展開しているシェアオフィスを利用してみました。リモートワーク主体の生活になって以来、あちこちのシェアオフィスを試してみるのがけっこう楽しい。
ちなみに私なんかよりも全然鉄分の濃い某家電女子氏のエントリーが参考になるので、鉄な人はこちらで:
私はどちらかというとシェアオフィスとしての使い勝手を中心にレポートしてみようと思います。
東急のシェアオフィス「TSO DENBUS ワークスペース」は東急田園都市線の宮崎台駅近くにあります。ここの「電車とバスの博物館」の B 棟(キッズワールド)が暫定的にシェアオフィスとして営業しているわけですが、私は最初間違えて駅直結の A 棟に行ってしまいしばし右往左往しました。B 棟は道路を一本渡ったところにあります。
東急電鉄のシェアオフィス:TSO DENBUS ワークスペース
DENBUS ワークスペースの入口には自動改札機を模したゲートが設置されており、ここに掲示された QR コードをコワーキングスペース検索・予約アプリ Suup に読み込ませることで入場できます。チェックインした時点から課金が始まるわけですが、1 時間で 250 円、まる一日利用しても最大 1,250 円だからシェアオフィスとしては激安。他のシェアオフィスだと 1~2 時間で 1,000 円はかかりますからね。
シェアオフィスといっても本来は東急の博物館を再利用した場所だけに、設備はありものの使い回し感が出ています。でもとにかく安いことと、おそらく利用者が少ないためオープンスペースでも人目をあまり気にせずに利用できるのは大きなメリットかと。
机や衝立などの備品は建て替え前の池上駅や戸越銀座駅の駅舎の廃材を再利用して作られているとのこと。私は昔池上に住んでいたからあの駅舎の木材にここで再会できたのはちょっと感慨深いものがあります。
各座席にモニターは備え付けられてはいませんが、24inch モニターが 5 台無料で貸し出されています。
個人的には事務作業時にはデュアルディスプレイ必須だと思っているので、ここは重要なポイント。
コピー機や最低限の事務用品なども備えています。
あと当然ながら無料 Wi-Fi も利用可能。
ということでシェアオフィスとしてのファシリティは一応揃っていると言えます。
館内のあちこちには博物館だった名残がいろいろと残されています。
私はほとんど鉄分を持っておらずこういうものの価値はよく分からないのですが、それでも興味を惹かれてしまいます。
あと奥の方には何故か人工芝にターフ、ランタンが備え付けられたキャンプ場風のワークスペースまで用意されています。
電車やバスとキャンプって何の関連性もないと思うのですが、職員さんの趣味でしょうか…?でも事務机然とした場所よりもこっちのほうがリラックスして仕事できるかも。
キャンプエリアの脇にはキッズワールド時代のものと思われる大規模なプラレールが残置されています。
これ、電車好きな人だったら気になって仕事にならないんじゃないでしょうか(笑。
休憩スペース。かつては子ども向けの塗り絵コーナーだったと思われます。
無料のコーヒーメーカーなんて気の利いたものは置いてなくて、持ち込みの飲食物や館内の自販機で買ったドリンクをここで飲食してくださいということですね。
個室ブースも三箇所用意されています。
そのうち二箇所はこれ↑で、一畳分に満たないような極小のボックスに入ることになります。機密作業には十分でしょうが天井が空いていて防音は期待できないので電話会議等には向きません。ちょっと窮屈すぎるから私は利用したくないかな…。
こんな感じで、館内を見る限りではシェアオフィスとしては安いけど今ひとつ…というところなのですが、この DENBUS ワークスペースの目玉はむしろ館外施設にあります。
東急の各路線で昭和期に運用されていた車両「モハ 510 形」が屋外に展示されています。
私が上京した頃にはとっくに走っていなかった車両で、実物を見るのはこれが初めて。
この車両の内部もシェアオフィスとして利用できるというのがこの施設のハイライトでしょう。
この昭和レトロな車両が全てワークスペースとして提供されています。
現代の電車にはない木造の温かみある内装。現代でも銀座線や池上線・多摩川線ではレトロ風内装の車両はありますが、デザインだけそれっぽくしたのとは明らかに違うロマンが溢れています。
特に電車好きでなくてもこの中で仕事できるのはちょっと楽しい。館内の事務椅子に座るより、こっちの古めかしいベンチシートのほうが雰囲気も座り心地もいいじゃないですか。
古い車両ではありますが足元にはコンセントが増設され、電源を取りながらの PC 作業にも対応します。ここで本腰入れて仕事しちゃっていいということですね!
たださすがに冷暖房完備とはいかないため、真夏期の利用はちょっと厳しそうではあります。
まあ、こういう場所に来たら仕事そっちのけで写真撮りたくなってしまう気持ちは解ります(笑
現代の電車にはない光景だし、映画か何かのロケにでも来たような気分になる。
当時の運転席もそのまま残されています。
まるで博物館みたいだなあ…と思ったけどよく考えたらここ博物館だったよ!
こ ば た…? あ、「たばこ御断り」ね。
横書きが逆向きなところに時代を感じるし、そういえば昔々は電車内は完全禁煙ではなかったのでした。私は普通電車で喫煙可能だった時代は知りませんが、新幹線はつい数年前まで喫煙車がありましたね。
この路線図にも時代を感じます。現在の大井町線にあたる路線の駅名がかなり違っているし(自由が丘は昔は「九品仏」駅だった。現在は自由が丘の隣に新・九品仏駅がある)、路線図上に池上線が存在していません。その昔は目黒蒲田電鉄(現在の東急)と池上電気鉄道は競合関係にあり、1934 年に目黒蒲田電鉄が池上電気鉄道を吸収合併した結果現在の形になりました。このあたりは東急の「100 年の歩み」に詳細が記載されています。
戦前・戦後の時代の流れによって東急のみならず京王・小田急・京急など東京の西側を拠点とする私鉄の歴史にも大きく関わっていて、非常に読み応えがあります。
あと電車とバスの博物館のはずなのに何故か航空機 YS-11「なると」の機首部分も展示されています。なんで?と思ったら、この機体を運用していた日本エアシステム(JAS)はかつて東急のグループ会社だったんですね(後にグループから外れて JAL と経営統合)。
この機体は米子空港でオーバーラン事故を起こして解体され、以来ここで展示されているとのこと。
そしてこの YS-11 の機体が三番目の個室ワークブースとして利用可能になっています(笑
オープンスペースからは隔離されており、かつ飛行機の機体という特性上それなりに防音性は期待して良さそう。VC するならここですね。
内部には航空機のシートが 4 席分せっちされています。もちろんデスクとコンセントもあり。
プライベートジェットで移動しながら仕事している VIP 気分が味わえます。
ワークブースの隣にはコックピットがあります。さすがに立ち入り禁止ですが覗き込むのは自由。
横にこんなのがあったらこれはこれで仕事に集中できそうにありません(笑。
今回は仕事というより時間調整がてら様子見に来たつもりだったから普通に楽しんでしまいました。
シェアオフィスとしては理想的ではないけれど、用途や季節次第では十分に使えそうという感触。
「とんかつ しお田」までは歩いて 10 分ほど(近くに HELLO CYCLING のポートもあり)なので、お昼にとんかつを食べることを主軸に一日ここでリモートワーク、仕事が終わったら湯けむりの庄で疲れを癒やして帰る、ってのも悪くないなあ。今度やってみようかな。
なお、東急が展開するシェアオフィスとしては武蔵小杉と長津田にそれぞれあった施設が過去二年間に相次いで営業終了してしまったようで、利用状況次第ではこちらの DENBUS ワークスペースも危ういのかもしれません。ご興味のある方はお早めにどうぞ。
コメント