ノリスがモナコ初制覇。特別ルール適用の”チェスマッチ”で悲喜こもごも……角田裕毅は奇策実らず17位|F1モナコGP決勝
「2 回のタイヤ交換が義務」という特別ルールが適用された今年のモナコ GP はひどいレースになりました。まあ去年もルクレールがノロノロ運転でポジションをキープした(角田もタイヤマネジメントのためにかなり長い間遅く走ったりした)退屈なレースでしたが、今年はそれに輪をかけてひどかった。
最初に「やった」のはレーシングブルズでした。ハジャーとローソンのポジションが近かったのをいいことにローソンがペースを極端に落として後続を抑え続け、ハジャーにフリーピットストップ 2 回分の余裕をプレゼント。それを見ていたウィリアムズとメルセデスも同様に下位のドライバーを犠牲にする作戦を採り、結果的に後ろのクルマほど大きな被害を受ける構図に。3 チームがこぞって捨て石戦略を採ったことでブルズとウィリアムズの「犠牲になったほう」も結果的にポイントを獲得する、というおいしいリザルトに。唯一、チームメイトが後方に沈んで援護を受けられなかったハースのオコンが彼らのおかげでちゃっかり 7 位入賞を果たしています。
予選 Q2 で敗退しそのままでは入賞に届かない角田はソフトタイヤでスタート。序盤でピットインしてフリーエアで走るギャンブルで、ピットインとほぼ同時に VSC が出たときには戦略が見事にハマったか?と期待したのですが、3 チームのノロノロ作戦で水の泡に。モナコは予選で勝負が決まるという定説そのままのレースになりました。
抜けないモナコはこれまでに退屈なレースは何度もありましたが、今回は過去にないひどいレースでした。抜けないのは仕方ないにしても、入賞圏にいるチームがトップよりも 5 秒も遅いペース(1 周 75 秒程度のトラックなのに!)でわざと走るのが世界最高峰のレースに相応しいのか。マンセルが最後までセナを抜けなかった 1992 年のモナコはレース後にマンセルが立っていられないほど疲労困憊したレースでした。同じ抜けないにしても、ちゃんと「レースしてる」レースが見たい。
でも今回のことでドライバーやチームを責めるのはお門違いだとも思います。彼らはレギュレーションの中で最大限にポイントを獲得できる戦略を遂行するのが仕事なので、退屈なレースにしたのはサーキットとレギュレーションが原因。抜けないなら何とかしてレース展開に動きをつけたいという特別ルールの意図は理解するものの、少なくとも今のクルマとコースではピットストップを何回義務化しようと状況が変わらないことはよく分かりました。レース終盤にペナルティー覚悟でシケインカットしたラッセルの行為はアスリートとして褒められたものではありませんが、それをやりたくなる気持ちは分かる。
私は今まではレースが退屈だろうとモナコはカレンダーに存在することに意義があると思ってきましたが、レースとは言えない何かを見せられるくらいならモナコはカレンダーから外して良いんじゃないでしょうか。あるいは、残すなら少なくともレイアウト改修はしてほしい。
レースってスポーツであると同時にそれでお金を稼ぐ興行でもある、でもそれと同じくらい観客を楽しませるエンタテインメントでもあるわけです。そろそろそのバランスを真剣に考えるときが来ているんじゃないのかなあ。
コメント
もうモナコは余興として、現役ドライバーによるヒストリックカーレースにでもした方がいいですね。
馬鹿馬鹿しくて、リアルタイムで見た事を後悔しました。
仰るとおりですね。初期の F1 にあったようなノンタイトル戦にして、ポイントじゃなくて名誉だけを賭けてレースした方が盛り上がるのでは。ヒストリックカーレースも見たいけど、クラッシュしたときの被害が怖いです(笑