CP+ のレポート、今日は各社のコンデジ編をお送りしたいと思います。今年の CP+ は一眼レフの製品発表は少なかったですが、その分コンデジは花盛りといった様相で、なかなか楽しめました。
まずは今回の CP+ におけるコンデジで最も注目度の高かった富士フイルム。
FinePix X100 です。2 日目以降は数十分待ちコースの行列ができていたようですが、私は初日午前中(プレミアタイム)に行ったのでさほど待たずに触れました。
35mm F2 相当の FUJINON レンズ、1,230 万画素の APS-C CMOS センサ、OVF/EVF を切り替え可能なハイブリッドビューファインダ、そしてカメラ好きの心をくすぐるオールドライカ風のデザイン・・・と話題の要素満載ではありますが、個人的にはサイカ先生と同じく
原点回帰と懐古趣味は違う
という考え方なので、このスタイリングにはあまり感心しません。デジタル時代にはデジタルなりの造形というものがあるはず。
まあ、いくら高品質なレンズとイメージャを備えているからといって、レンズ交換ができない単焦点のコンデジに¥10 万オーバーの金額を払ってくれる顧客は限られるので、「そういう人向け」のマーケティングとしてはこれも間違いではないのだとは思いますが。
主な操作系は機械式。絞りはレンズ周りの絞りリングで、シャッタースピードや露出補正もダイヤル式。OVF/EVF の切り替えは前面のレバーだし、シャッターボタンにはレリーズボタン取り付け用のネジ孔が空いている、という徹底ぶり。まあこれらはあくまでギミックであり内部的には電子制御しているのでしょうが、こういうところが「くすぐる」ポイントの一つなのは分かります。直感的、かつスピーディに操作できるし。
肝心のハイブリッドファインダですが、光学ファインダの見え味はなかなか良いですね。とても明るくシャープに見えます。EOS の OVF よりもよく見えるので、気持ち良く撮影することができそう。表示倍率が EVF よりも低いので切り替えると被写体が小さく感じられてしまうのはちょっと残念ですが、OVF 上に各種情報が透過表示されるのも面白い。EOS 7D のインテリジェント VF ともまたちょっと違った感じです。
しかし EVF のほうは正直言って期待はずれ。本当に 144 万ドット?という解像感しかないし、色も変(白飛びして見える)。これならα55 の EVF のほうが全然いいような・・・私だったら X100 は OVF でしか使わないでしょうね。OVF のほうはそれくらいイイ。
続いてオリンパスの「XZ-1」。こちらは合計 5 台くらい展示されていましたが、けっこうな取り合いでなかなか触れず。注目度は高いようでしたね(でも、オリンパスは m4/3 のイメージが強いのか、「これレンズ交換できないの?」と質問しているお客さんもいたようです)。
背面ディスプレイは 3inch 61 万ドットの有機 EL。92 万ドットの液晶を見慣れると解像度的に物足りないかな、と思っていたんですが、有機 EL の発色の良さも手伝って、粗い印象は受けず。なかなか悪くないと思います。
オリンパスの PEN シリーズは世代を重ねるごとに(特に E-PL シリーズになってからは顕著に)コストダウンが製品から感じられるようになってしまい、製品としては残念感が漂っていますが、この XZ-1 は新シリーズの初代モデルだからかもしれませんが、けっこうちゃんと作ってある感触で好印象。でもデザインはオリンパスというよりもパナっぽい(LUMIX GF1 の下位機種に見える)イメージになってしまい、アイデンティティが感じられないのは寂しいところ。
でも上から見るとそこはかとなく PEN っぽいラインは残っています。あとこのヘアライン加工が施された天板とかスピン加工されたモードダイヤル/シャッターボタン/電源ボタン周りの作りはけっこう好き。
レンズ周辺部はコントロールリング。PowerShot S90/S95 のそれと同じような位置づけの操作デバイスで、触感や回転時のクリック感もよく似ています。操作上の気持ちよさという点ではなかなか良いんですが、これがカスタマイズ不可能で、絞り値の変更にしか使えないっぽい。私は PowerShot S90 ではこのリングをステップズームに割り当てているので、それができないのがとても惜しいです。でもそのうちファームアップで対応しそうな気もしますが。
ホワイトボディはつるつるした塗装であまり好みではありませんが、ブラックボディは金属の質感を残したブラスト加工なので、こっちのほうが好み。
事前に持っていた印象よりもかなり好感触だったので、これはちょっと買ってみても良いかな、と一瞬思ったんですが、1/1.63inch の 1,000 万画素センサ、28-112mm F1.8-2.5 相当のレンズ、というスペックって今の私のメインコンデジになっている PowerShot S90(1/1.7inch 1,000 万画素センサ、28-105mm F2-4.9 のレンズ)ともろかぶり。まあ XZ-1 自体が PowerShot S95 や LUMIX LX5 のラインを狙って開発されたものだと思われるのでかぶって当然ですが(レンズのスペック的にはこの 3 機種の中では最も良い)、S90 からわざわざ買い換えるほどのこともないよなあ、と思い直しました(´д`)。
次にカシオ。海外名「TRYX」(「トライ-エックス」じゃなくて「トリックス」)、日本名「EXILIM EX-TR100」。私が今回の CP+ で最も見たかったコンデジはこれだったりします。FinePix X100 の対極を行く未来的なデザイン。回転レンズ式ってデジタルカメラの黎明期にはポピュラーでしたが、次第にコンサバな製品ばかりになってしまったコンパクトデジカメ市場に一石を投じる機種であることは間違いありません。
液晶をくるっと回転させてレンズと同方向に向けると自分撮りモードに。
このカメラ、操作ボタンは電源とシャッターボタンしかなく、それ以外の操作は全てタッチスクリーンになっています。レンズも 21mm の単焦点という思い切った仕様だし、デザインやサイズ感、開閉・回転式のギミックなんかも相まって、コンデジというよりは携帯電話のカメラ感覚で使うイメージ。ケータイカメラ世代にはこのくらいのほうが受けるかもしれません。
でも、自分撮りしたりレンズの向きを変えたいだけなら回転レンズだけで良く、フレームまで回転する必然性はあまりないんじゃないか(笑)と思っていたのですが、フレームを回転させることでこのように三脚要らずで自立するのはなかなか面白いポイントかも。動画撮影モードにして机の上に置いておき、会議やブロガーイベントを撮影しておくのには便利そうです。
フレームの向きを変えるとフォトスタンドっぽくも使えます。撮った写真や動画をその場でみんなで見るようなときとかに使えそう。
ただ、この状態だとレンズが下を向くので、撮りながら見ることはできません(笑。
あとは、このようにレンズを被写体に向け、液晶は自分のほうを向かせた状態でフレームを握りこむことで、カムコーダ的な使い方をすることもできます。コンデジでの手持ち動画撮影はとかく手ブレがきになるものですが、こういう持ち方なら安定感があってよさげ。
このカメラはもともとスチルだけでなくムービーを撮りやすくするというコンセプトで開発されたそうなので、この 2 軸回転ギミックはこのスタイルのためにあると言っても過言ではないのかもしれません。
非常に面白いこのカメラですが、大いに不満を感じたのはタッチパネル。ほぼ全ての操作がタッチ式という割り切り自体は(コンデジの使い方の提案としては)悪くないと思いますが、タッチパネルが感圧式なせいか、UI の作り込みが甘いせいか、操作性が悪すぎ。私が触った展示機ではタッチシャッター(画面上の触った部分にフォーカスを合わせて自動的にシャッターを切る)設定になっていたので、メニューを呼び出そうと画面上の「MENU」をタッチしたところ、画面隅にピントを合わせてシャッターが切られるばかりで、なかなかメニュー画面が呼び出せませんでした。慣れによる部分もあるのかもしれませんが、静電式タッチパネル搭載のスマートフォンがこれだけ増えてきた中で(最近では和式ケータイにもタッチパネル搭載機種が増えてきています)反応性が悪い感圧式を採用しているのは、それだけでデメリットだと思います。
私は実機を見るまでは買ってみても良いかな、と思っていたんですが、これで一気に萎えてしまいました(´д`)。
最後はビクター。ビクターってコンデジのイメージがほとんどありませんが、今回は気合いを入れて GC-PX1 という新製品を出してきました。オフィシャルには「デジタルスチルカメラ」ではなく「HD ハイブリッドカメラ」とのことで、スチルカメラとカムコーダの中間的な位置づけのようです。ということなので、セールスポイントも画質云々じゃなくて高速連写と HD 動画、となっています。
まるで NEX-5 と懐かしの DSC-F707 を混ぜ合わせたようなスタイリングですが、私がこのカメラに興味を持ったきっかけもカメラとしての機能面よりもこのデザイン(笑。
モードダイヤルをはじめとする、シャッターボタン以外の操作ボタンや入出力系はほぼレンズ鏡筒の側面にまとめられています。スチルよりもカムコーダのほうが主力なビクターらしく、スチルカメラベースではなくカムコーダをベースにスチル撮影用のグリップと液晶を取り付けたような作りになっていることがよく分かるデザインです。
液晶はチルト可能なタイプですが、一般的なスチルカメラであればボディにあたる部分が激薄。ほぼレンズとグリップ(兼電池ボックス)、液晶を接続するためのフレームとしてあるだけ、という感じです。
カットモデルも展示してありましたが、やっぱり中身はほぼカムコーダそのもの。でもこの構造のほうがイメージセンサとメイン基板を離せるため、動画撮影時のイメージセンサの温度上昇を抑えやすいはず、とはクマデジタルさんの弁。α55/33 も動画撮影時のイメージャの過熱問題ありますからね・・・。
今までもビデオカメラの発想でスチルカメラを作るというアプローチがなかったわけではありませんが、ここまで直球勝負で来た製品は初めてではないでしょうか。自分で買うことはないでしょうが、スチルとムービーの境界が曖昧になりつつあるカメラの世界に一石を投じる可能性はあると思います。でも、残念ながら売れないだろうなあ・・・。
とりあえず、ここに来たらやってみたかった、お約束比較写真(ぉ。説明員さんの目の前で堂々とやってごめんなさいごめんなさい(ぉ
CP+ のレポートはさらに続きます。
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