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本田×石野×西田 スマホ業界 楽屋裏トークに行ってきた

昨日、原宿の KDDI デザイニングスタジオで開催されたスマートフォン関連のトークショーを観覧してきました。

本田×石野×西田 スマホ業界 楽屋裏トーク 2011春 : ATND

スピーカーは、写真左から司会進行の週刊アスキー副編集長伊藤有氏、パネリストの IT ジャーナリスト本田雅一氏、石野純也氏、西田宗千佳氏。いずれも IT ジャーナリストの中でも私が特に高い信頼を置いている方々なので、楽しみにしていました。

このエントリーで内容をまとめようかとも思ったんですが、4 時間という長丁場だったのでまとめようにもまとまらない(´д`)。とりあえず、当日の Ustream 中継の録画が公開されているので、気になる方は以下から。



Video streaming by Ustream

まあ、録画とはいっても 4 時間試聴するのは厳しいですかね(笑。大まかな話の流れについては、Twitter のハッシュタグ #gakuya_ura2011 を参照すると良いと思います。おそらく誰かが近々 Togetter でもまとめてくれるでしょう。

ともあれ、私自身の理解の整理の意味も含め、一応ここでも軽くサマリーしておきます。


■スマートフォンで変化するインフラとコンピューティング

  • スマートフォンは実はそれ自体は賢くない。通信帯域を使いまくり、ネットワークに負荷を掛ける。そういう意味ではフィーチャーフォンのほうが狭帯域でも快適に使えるように細かい作り込みがされており、通信の部分に限って言えば賢いと言える
  • でも今のスマートフォンはフィーチャーフォンに比べて賢い、高付加価値な雰囲気を醸し出すことに成功している。でもハードウェア的にはスマートフォンのほうがフィーチャーフォンよりも部品点数が少ない分、低コスト
  • メーカーが作り込まなくてもパートナー(アプリや Web サービスの開発者)がどんどんいろんなアプリやサービスを提供し、スマートフォンの価値を高めてくれる。従来のフィーチャーフォンは回線事業者が全てのアプリやサービスを揃える必要があった
  • 観点をコンピュータに移すと、従来はローカルアプリケーションかブラウザベースの Web サービスだったものが、スマートデバイスでは「アプリ」という形態で Web サービスを利用できるようになり、アプリケーションのレイヤーを意識する必要がなくなった。つまり、概念が変わった
  • PC で IT に触れるようになった我々の世代は、サーバー/クライアント的な概念に慣れているが、スマートフォンが一般化するこれからはサービス・ハードウェア・ソフトウェアを一体的に捉え、理解して利用できる「スマートネイティブ」の時代
  • では PC はスマートデバイスに取って代わられるか、というとそういうわけではない。キーボードがついた PC の価値は不変。ただ、パーソナルコンピューティングのスタイルは常に変化している。タブレットでも構わないという人も出てくる
  • でも例えば高齢者など、情報発信はあまりしないが Web サービスを利用したい層は PC ではなくスマートデバイスを使う、などのように「リテラシを必要としないデバイス」として新しいユーザーを開拓していくだろう。スマートデバイスは PC に比べればできることは限られているが、それでもリテラシが高くない人がやりたいことはほぼ網羅している
  • また、PC ヘビーユーザーでも全ての作業に PC が必須なわけではないので、PC とスマートデバイスを用途によって使い分けていく
  • また、パーソナルの記録はローカルからクラウドに移行していく。現時点では「インターネット上の情報を整理する」Google の時代だが、これからはあらゆる情報やサービスを個人を起点にまとめていく時代。Facebook がインターネットを支配するかもしれない
  • 本田さん)・・・という本を書いたのでよろしくお願いします(笑)。5/20 発売

本田 雅一 / これからスマートフォンが起こすこと。

■スマホ向けマルチコアプラットフォーム性能大予測

  • 現在販売されているスマートフォンのプロセッサはほぼ全てが ARM 系の SoC(System-on-a-Chip)で、それにどういったグラフィックコアを組み合わせるか、が差異化のポイントになっていると言っていい
  • 主なスマートデバイス向け SoC の種類は NVIDIA Tegra 2(GeForce 系グラフィック;搭載製品は Motorola XOOM や LG Optimus Pad、Sony Tablet)、Qualcomm Snapdragon(AMD から買い取った Adreno 系グラフィック;Xperia や HTC Desire)、Apple A4/A5(PowerVR 系グラフィック;iPhone や iPad)、SAMSUNG PC110(PowerVR 系グラフィックなので素性は Apple A4/A5 にかなり近い;GALAXY S や GALAXY Tab)など
  • 現時点ではスマートフォンでは Motorola の Atrix 4G を除き、ほぼ全てがまだシングルコア CPU を搭載。タブレットでは iPad 2 や XOOM、Optimus Pad などデュアルコアが主流に
  • ちなみに年末発売と言われている NGP(コードネーム)では、Cortex 系のクアッドコア CPU+PowerVR 系のクアッドコア GPU という組み合わせ
  • 今後はスマートフォンでもデュアルコア製品の比率が高まっていく見込み。クアッドコアも技術的には可能だが、当面は主流にはならないだろう
  • というのはデュアルコアならばアプリケーションとシステムタスクを並列処理できるので効果が高いが、現在のスマートフォンのアーキテクチャではそれ以上並列化してもあまり意味がない。消費電力や LSI のフットプリントを考慮すると、バランスが悪い
  • デュアルコアでさえ、現時点では「体感的な快適さが演出できる」以上のメリットを出せていない。シングルコア CPU 搭載でもデュアルコアと同等に快適な製品はいくつかある
  • とはいえ、ハイエンド機としてクアッドコア CPU を搭載したスマートフォンを出してくるメーカーは必ずあるだろう。でもそれがすぐに主流になることはあり得ない
  • スマートデバイス向け OS は現時点ではシングルタスクのほうが良い。Android はマルチタスクに対応しているが、アプリ側の作りが悪いとバックグラウンドでの振る舞いがひどく、無駄にバッテリを消費するだけ。iOS や Windows Phone 7 はシングルタスク
  • Windows Phone 7 はまだ国内では搭載製品が発表されていないが、海外版を触った限りでは非常に出来が良い OS。Windows Mobile 6.x までとは全く違う OS で、Android よりもむしろ iOS に近いイメージ。日本語版も開発されているので、いずれ出てくるだろう
  • Android はガジェット好きにはいじり甲斐のある OS だが、UI を分かりやすくするという発想がないのか、初心者には取っつきにくい。iOS は比較的分かりやすいが、「Apple の狭い箱庭の中で遊ばされている」イメージ。その中でやれることしかやらない人には良いが、それでは物足りないという人も出てくるだろう
  • そういう意味では Android はメーカー側の作り込みで分かりやすくすることが重要だが、あまり手を入れると Xperia X10 のように OS のアップデートに対応しづらくなるという問題が出てくるので、難しい問題。その点では、HTC は OS にほとんど手を入れないが、機種ごとに基本的な UI を大きく変えないことで分かりやすくなっている。このバランス感覚はなかなか秀逸

■LTE/WiMAX 4G 通信どうなる!? 日本と世界のモバイルインフラ最新動向

  • 現在販売されているスマートフォンはほぼ全て 3G だが、au が初の WiMAX(+3G)対応のスマートフォンとして発売したのが HTC EVO WiMAX。2 週間以内に発表される au のスマートフォン夏モデルでも、WiMAX 対応機種が出てくるらしい
  • どのキャリアでもここ 1 年でスマートフォンの比率が上がっており、急激に回線を逼迫させている。各キャリアは Wi-Fi スポットを増やしてトラフィックをオフロードさせる施策を打っているが、「Wi-Fi の電波は掴んでいるのに圏外ギリギリなので通信できない」「認証が要るのでプロファイル設定していても接続に手間がかかるため、利用されない」といった問題が起きている。3G+WiMAX のほうが使い勝手は良い
  • いっぽう、docomo と au では次世代 WWAN 規格である「LTE(Long Term Evolution)」を推進中。特に docomo は「Xi」として既にサービスインしている
  • au は LTE に対する投資額は減らしているが、エリア展開・容量ともに docomo と同等のロードマップであることは変わっていない
  • LTE は今まで「3.9G」と呼ばれていたが、従来単にマーケティングネームとして使われていた「4G」の呼称が認可された(従来は次世代の「IMT-Advanced」が 4G 規格と言われていた)。今後は LTE は正式に「4G」と呼称される
  • ソフトバンクは 3.9G として当初は LTE を導入する予定→ウィルコムから XGP 事業を取得→XGP 事業を廃止し、その帯域を TD-LTE(LTE とは名前は似ているが異なる方式)で使用する方針、と戦略が二転三転。が、XGP 事業を継承する名目で手に入れた周波数帯を他事業に使用することには、総務省から物言いがつく可能性が非常に高い
  • WiMAX vs. LTE という観点で言うと、中長期的にはモバイルデータ通信は LTE が主流になっていくだろう。でも LTE は docomo のロードマップでは 2014 年度で人口カバー率 70% に過ぎない。FOMA の立ち上げに比べても緩やかなペース
  • なので、通信料金なども考慮すると、今後 3~4 年のモバイルデータ通信については、都市圏であれば WiMAX 最もリーズナブルな選択肢だろう。2 年縛りがあるとして、この先 1~2 回端末を買い換えるまでは WiMAX で良いのでは。LTE を考えるのはその後でも良い
  • UQ コミュニケーションズには KDDI の資本が 33% 入っているが、あくまで連結対象でもない別会社。docomo からも 3G+WiMAX のハイブリッド端末のリリースを期待したい

■知りたい聞きたい NVIDIA Tegra 2 の実力

続いて、NVIDIA のテクニカルマーケティングエンジニア、スティーブン・ザン氏(写真右)をゲストスピーカーに招いて Tegra 2 の技術解説。

  • Tegra 2 は Cortex-A9 デュアルコアプロセッサを CPU コアとし、グラフィック機能などを統合した SoC
  • CPU の周辺には 8 コアの ULP 版 GeForce GPU、および HD ビデオエンコーダ・デコーダ等が統合されている
  • デュアルコアプロセッサはシングルコアよりも消費電力が大きいと言われるが、同等の処理能力(1GHz シングルと 550MHz デュアルで同等と仮定した場合)では、理論上はデュアルコアのほうが 40% あまり消費電力が少なくて済む
  • Tegra 2 では、常に処理内容に応じてプロセッサ内の機能(CPU、GPU、HD エンコーダ等)ごとに電力制御を行うことで、最小限の消費電力で動作することができる

  • Tegra シリーズは現時点で 2014 年までのロードマップが存在。2011:Kal-El、2012:Wayne、2013:Logan、2014:Stark
  • ロードマップはアメコミヒーローの本名から引用。カルエル:スーパーマン、ウェイン:バットマン、ローガン:ウルヴァリン、スターク:アイアンマン。後に行くほど金持ち(?)
  • Kal-El は現行 Tegra 2 の 5 倍のエネルギーゲイン性能。Coremark でのベンチ結果では Core 2 Duo T7200 よりも高性能
  • NVIDIA は独自の ARM 開発プロジェクト「Project Denver」を推進中。次期 Tegra 用に Cortex-A15 のライセンス、および Denver 用に ARM のアーキテクチャライセンスを入手。独自に ARM コアを拡張して高性能 SoC を開発し、x86 に頼らずノート PC からスパコンに至るまでのマイクロプロセッサを網羅する計画
  • 次期 Windows(Windows 8)では x86 CPU に加えて ARM もサポートされる。Tegra シリーズを搭載したコンピュータで Windows 8 を使うことも可能に
  • アプリケーションに必要なコンピューティングパワーはクラウド側に移ってきている。スマートデバイスではローカルの処理性能よりもクラウドサービスのフロントエンドとして UI を司る部分の比率が高まってきている。つまり、デバイス側は CPU よりも GPU の重要性が高まっている。NVIDIA は以前から単体 GPU メーカーから総合マイクロプロセッサメーカーへの進化を提唱してきたが、まさにこの流れと符合

■ガラスマ vs. ガラケー、本当はどこが違う? ぶっちゃけトーク
■ガチ語り! スマホでのびるメーカー、厳しいメーカー

当初の想定よりもこの後のチャリティーオークションの出品が多くなり、時間がなくなったため、内容的に近いこの 2 つのテーマはまとめて扱われました。

  • ガラスマ(ワンセグやおサイフなどのガラケー的機能を搭載した日本独自使用のスマートフォン)とガラケーはどう違う?→ぶっちゃけ、できることに違いはない。ただし作り方は違う
  • 今年は各キャリアの製品は過半数がスマートフォン。今後はもうスマートフォンが主流になるだろうが、フィーチャーフォンも絶滅するわけではなく、一定の割合で残っていくだろう
  • 従来、キャリアは自分たちのサービスを使わせることを前提に製品を企画してきた。メニュー設計やボタン配置などはそうやって作られているので、ガラケー機能を使いたいならスマートフォンよりもフィーチャーフォンのほうが使いやすいのは当然
  • また、おサイフケータイなどは日本の社会にフィットするようにインフラ(Suica 対応の改札など)とセットで開発され、普及を促されてきた。そうでなければこれらの機能がここまで普及することはなかったはず
  • ただ、これからはスマートフォンでの利用を前提に、キャリアのサービスをアプリ化してインターネット上で利用できるようにするべき。そうでなければインターネット上の類似のサービスに取って代わられるだけ
  • 以前はサービスやコンテンツのプロモーションから課金まで、全てのプラットフォームをキャリアが製品に載せて提供してきた。それが、ここ 2 年ほどの間にモバゲーやグリーが台頭し、キャリアのサービスの外でキャリアに依存しない仕組みを作り上げ、それが一般的に使われるようになってきた。こういった事情も、端末とネットワーク/サービスを切り離して考えられるようになった背景にはあったのでは
  • スマートフォン時代で伸びるのは、トレンドを見極めて、ワールドワイドで売れるベースモデルを作れるメーカー。かつ、差別化できる基幹デバイスを持っているところ。例えば有機 EL ディスプレイを持っている SAMSUNG、Exmor R を持っているソニエリなど。中国を攻めているシャープ、東芝の携帯電話事業を買った富士通も可能性はある。シャープは(結果的にはうまくいかなかったが)Microsoft の KIN の契約を取り付けた実績がある。大口の需要を確保できる交渉力も重要になってくる
  • 逆に従来キャリアの指示に従って製品を開発し、海外展開に弱いパナソニックや NEC カシオなどは厳しいだろう
  • Nokia は現状としてはかなり微妙ではあるが、ヨーロッパと新興国に強い。Windows Phone 7 との組み合わせは非常に期待できる。ただ、日本市場への再参入はあまり期待できないのではないか

■チャリティーオークション

パネリストのお三方からチャリティーオークション用に大量の出品がありました。一部にトリニティフォーカルポイントといったスマートフォン向けアクセサリの取扱会社からの提供もありましたが、石野さんはこのためにわざわざ台湾まで買い付けに行ったとか(笑。
レアもの・掘り出しものからジャンクまで(笑)幅広い出品でしたが、入札の条件はなんと「おつりなし」。何故かみんな「大人力」を見せつけなくてはならない空気が漂い、市価の 3 倍の価格がついたものもありました(笑。

結果、募金とオークションで集まった金額はなんと 155,130 円。これが全額東日本大震災の募金としてあしなが育英会に寄付されるそうです。

■会場で登場したガジェット

パネリスト、観覧客ともに生粋のマニアと業界人が集まるイベントということで(笑)国内未発売のスマートフォンも多数登場しました。

こちらは Xperia PLAY。私の周囲では Xperia arc よりも PLAY を買った人が多いくらいだったりするので(ぉ)個人的にはもうあまり珍しくもないんですが、それでも日本ではまだまだレアかつ最も話題性のあるスマートフォンではないでしょうか。

こちらは HP の Palm Pre 2。「あの Palm」が HP に買収されたなれの果てですが、元 WorkPad/CLIE ユーザーとしては久々に Palm ロゴ(もうデザインが変わっちゃってますが)を目にできただけでも感涙モノです。
縦スライド方式で BlackBerry ライクな QWERTY キーボードを採用し、webOS を搭載したスマートフォンで、シングルコア CPU ではありますが、UI のレスポンスが良くスルスル動いてくれて気持ち良かったです。個人的には豆粒 QWERTY キーは好きじゃないんですが、こういう縦スライドキーは好きなので、テンキー仕様で日本向けに出たりしたらちょっと気になるところです。まあ HP が日本向けのスマートフォンを開発することは考えにくいので、日本メーカーが似たような仕様の Android スマートフォンとか企画してくれないかなあ。

この Motorola ロゴが入った黒い MacBook Air は Android 搭載ネットブック・・・ではなくて、Atrix 4G 用の「Laptop Dock」と呼ばれる拡張ステーション。パッと見では、11.6inch ディスプレイを搭載したネットブックか CULV 搭載ノート PC に見えますが、

ディスプレイの裏側にドックが用意されていて、ここに Atrix 4G をセットすることで「1,366×768 ドットのディスプレイとフルキーボードを備えた Android ベースのラップトップコンピュータ」として使うことができてしまいます。パフォーマンスは Atrix 4G 自体が Tegra 2 搭載なので十分。
会場には出ていませんでしたが、他にも HDMI と音声出力を備え、ディスプレイとキーボードを繋げばデスクトップ PC 的に利用できる「HD Multimedia Dock」というものも用意されているとのこと。ふと、かつて IBM が提唱していた「MetaPad」のコンセプトそのものじゃないか!と思ってしまいました。スマートデバイスの性能がかなり PC に近いところまで高まってきたからこそ実現できたアプローチと言えるでしょう。個人的には、使い途はないけどこのギミックだけのために欲しいな(^^;;

Laptop Dock の UI はこんな感じ(写真はディスプレイ出力経由でプロジェクタに投写された状態です)。一見 Mac OS X 風ですが、Atrix 本体側の画面を子画面的にウィンドウ表示することも可能なようですね。

ということで、4 時間ものイベントではありましたが、スマートフォン/タブレットの現在から未来を占う、非常に濃密で面白い内容でした。主催者の方々、および参加者の皆さん、連休中にも関わらずお疲れさまでした。また同様の機会があればぜひ参加したいと思います。

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