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人生の特等席 @渋谷 HUMAX シネマ

人生の特等席

グラン・トリノ』で引退したんじゃなかったんかい!という名優クリント・イーストウッドの最新主演作品を、劇場まで観に行ってきました。

年齢的な問題でチームから引退を勧告され、本人も視力を失いつつあるメジャーリーグのかつての名スカウトマンが、長らく疎遠だった娘を連れて最後のスカウトの旅に出る…というお話。日本だと野球はなかなか映画の題材になりませんが、こういう作品が出てくるところに、アメリカという国では野球が文化として根付いているんだなあ、ということを実感します。

イーストウッドの監督作品、というと近年はとても重い内容の作品が続いていますが、今回は監督ではなく俳優としての出演ということで、ストーリーや演出はちょっと軽め。でも、『グラン・トリノ』でも見せたがんこじじいっぷりは今作でも健在で、すっかりこういうキャラクターが板についちゃったなあ、と思います。まあ、昔気質の映画人、という意味では、本人の素に近いところで演技している部分もあるのかもしれません。


物語の争点は、イーストウッド演じるガスの目と耳、経験と勘に頼った昔ながらのスカウト手法と、データ中心の現代的なスカウト手法のどちらが勝つのか?というところなのですが、実際にはそこはそれほど重要なわけではなく。妻を亡くし、男手一つで娘を育てようとしてできなかった父と、捨てられたと思った娘の、お互いに対する思いや葛藤、を中心に回ります。個人的にはイーストウッドの芝居を観に行ったつもりでしたが、むしろ娘のミッキー(エイミー・アダムス)の視点で映画に入り込んでしまっていました。自分のできることと実現したいこと、認めてもらいたいこと、年齢、置かれた境遇、両親から与えられた能力、親と自分のそれぞれの人生、面と向かうと言えなくなってしまうこととか…どうにも客観的に観ることができませんでした。

助演のエイミー・アダムス、ってディズニーの『魔法にかけられて』でヒロインのジゼルを演じていた人ですが、ジゼルとは全く違うキャラクターで、映画を観ている間は気づかなかったほど。童話の世界から出てきたお姫様、ではなく、父親とのコミュニケーションがうまくできなくて悩んでいる三十代のキャリアウーマンという役どころで、私から見るとまさに等身大の生々しさがあり、イーストウッドに引けを取らない名演だったと思います。
いっぽうで、かつてガスに見出された投手であり、現在は引退してライバルチームのスカウトマンをやっているジョニー役のジャスティン・ティンバーレイク。この人は相変わらずどうにも薄っぺらくて、脚本のせいもあるかもしれませんが、なぜガスの信頼を得て、ミッキーと恋に落ちるのかが芝居からは理解できませんでした(´д`)。

抑揚が少なくてしんみりする映画ですが、たまにはこういうのもいいものですね。クリント・イーストウッドには失礼かもしれませんが、最近イーストウッドを見ると昨年他界した母方の祖父(イーストウッドとは一歳違い)を思い出します(笑。冬休みにはイーストウッドの過去作も観てみようかな。

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