楽しみにしていたシリーズ最新作の封切り日、かつ映画の日で割安料金が重なったので、初日から早速観に行ってきました。
前作を観た後に原作小説や関連作品をひととおり読み、世界観への理解が深まった状態での三作目。今回は原作小説とは異なるオリジナルストーリーが展開するとのことで期待半分、不安半分でした。
が、蓋を開けてみると序盤のプロットは小説第一作『探偵はバーにいる』の流れをなぞります。主人公「俺」は相棒である高田の大学の後輩から「行方不明になった恋人を捜してほしい」と泣きつかれ、気分で安請け合いしてしまいます。しかしそれが面倒な事件に巻き込まれるきっかけとなり…という部分までは小説とほぼ同じ。でも、そこからは小説とは全く違った展開に突入していきます。
映画版の「俺」も一作目から 6 年の月日が経過し、四十代半ばになった大泉洋と同様に、旧作と比べてそれなりに歳を取った雰囲気が出ています。それもあってか、作風はアクションやコメディが多く派手さを狙った感じだった前作とは打って変わって、全体的に落ち着いたものに。アクションシーンも数が減り、演出も速さより「打撃の重さ」を感じさせるものに変わっています。それもそのはず、今回は前二作とは監督が替わっているんですね。前作は脚本が発散系でまとまりがなかったし、反原発とか時事ネタを半端に入れ込むなど鼻につく部分もありましたが、今作は脚本も演出も安定感があって良かったです。
今回のヒロインは北川景子。このシリーズのヒロインは基本的に物語を引っかき回す役どころですが、今回はシリーズ最大級に引っかき回してきます。その悪女感と、でもどこか嫌いになれない影のある感じがとても良かった。ただ、最後に明らかになる彼女の行動の動機が取って付けたような感じで肩透かしを食らいましたが、そこは「俺」自身が言っていた「人間は、他人から見れば馬鹿らしいようなことにでも命を燃やせることがある」というところに繋がるんだろうなあ…。
原作小説の読者目線では、小説版に登場したコールガールの「モンロー」が初めて映画版に登場しているのもポイントでしょう。小説版では第十作『旧友は春に帰る』で哀しいことになってしまうモンローですが、映画版では小さいながらも自分なりの幸せを手に入れた、そういう世界線の物語として描かれていることにジーンと来てしまいました。
キャラクターといえば「俺」の情報交換相手であるヤクザの相田(松重豊)。松重さんといえば以前なら「ああ、あのよくヤクザ役やってる人」というイメージだったのが、この五年ですっかりブレイクしてしまい、久しぶりのヤクザ役は却ってコメディに見えてしまいますね(笑。しかも今回は今までに比べて相田の見せ場が増えていたような…(笑
今作では「俺」と高田がコンビ解消か?という展開になるわけですが、エンドロール後にはちゃんと「オチ」も用意されていて笑いました。ここに限らず、小さい笑いを仕込んだシーンではシアター内が一つになったような笑い声が上がり、やっぱりこういう人気シリーズの最新作は初日に劇場で観るに限りますね。一週間も経ってお客さんがまばらになってしまうと、なかなかこうはいきません。
面白かったです。久しぶりに小説版を読み返したくなったし、ススキノに飲みに行きたくなりました。出張するような仕事が入らないかなあ…。
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