「青く透明な三陸の海が見えたぞ」
先日『孤独のグルメ』聖地巡礼で米沢に行った際、いったん宮城を経由した主目的は2016年の「真夏の東北・宮城出張編」の女川を再訪することでした。東日本大震災から15年という節目の年にあたり、当時大きな被害を受けた場所のひとつである女川をもう一度訪れてみたかったのです。前回ここに来たのは十年前、昨日のことのように思い出せるけどもうそんなに経ったのか…。
前回はレンタカーでの移動でスルーしてしまった女川駅。今回は公共交通機関(行きは石巻からバス、帰りはJR)で来たから駅からのスタートです。
駅舎は震災当日に津波で大きな被害を受けたため2015年に建て直されて現在の立派な建物になりました。劇中でも何度か写ってましたよね。
劇中で五郎が被災者に黙祷を捧げていた場所からの現在の眺望。ここは駅から徒歩数分、女川町地域医療センターの駐車場です。高台にある病院にも関わらず当時はここにまで津波が押し寄せたとのこと。
十年前に来たときにはまだまだ整地作業の真っ最中ですが、現時点では少なくとも工事は完了して穏やかな海辺の光景でした。工事に携わられた方々の努力にはただただ頭の下がる思いです。
駐車場の片隅には記念碑が建てられていました。
表面的な希望を綴った言葉ではなく、命を守るための切実な、そしてリアルな言葉。当事者だからこそ刻める言葉だと感じます。
駅前に戻ってきました。駅前に展開されている新しい商店街・シーパルピア女川の真ん中が、五郎が「腹が、減った」をやった場所。突き当りに女川駅が見えますが、反対側(写真を撮っている背後)はちょっと行くだけで三陸の海。そういう立地でしたか。
爽やかな商店街。劇中でも活気ある雰囲気が表現されていましたが、実際にそれぞれのお店が街を盛り上げようとさまざまな工夫を凝らしているのが伝わってくる。この日は平日の真昼間だったこともあり通行人は少なめながら、応援したくなりました。
そういえば、劇中では五郎がこの商店街を通りすがりに「ほやきそば」を食べている人を見かける…というくだりがありましたが(故・溝口監督のカメオ出演)、私は「ホヤピザ」の幟を発見。
女川、とにかくホヤ推し。ピザにホヤ、合うのかなあ?
…で、この商店街の傍らにあるのが今回の目的地。
震災で店舗を喪失し、その後十年前までは劇中にも登場した山の上の仮店舗で営業していたのが、現在は駅前に新築された店舗に移っています。以前のプレハブとは比べようもないほど立派なお店。
この日は交通機関の関係で正午頃にお店に到着したところ、商店街はさして混んでいないのにこの店だけ数組の入店待ちあり。なんと…この胃袋はすぐにでも海鮮を入れたい状況に陥っているというのに。
焦るんじゃない、俺は腹が減っているだけなんだ。
入口で整理券を受け取ってしばし待ちます。
以前の店舗でも遭遇したはみ出る穴子天丼のポスターに再会。
「はみ出しちゃってスイマセン」って、劇中で女将役の余貴美子も言ってたっけ。
入り口付近にある水槽は生け簀っぽい。
水族館に行ってさえ「うまそう」と思ってしまう俺だが、この水槽の前なら許されるに違いない。
という感じでいろいろ眺めていたら20分ほどの待ちで座席に通されました。
店内のテーブルや椅子はほぼ新調されてましたが、一人用として私が通されたカウンターテーブルは旧店舗時代のもののようでした。十年の時を経て再び同じテーブルに着いたのかもしれないと思うと感慨深い。
メニューは十年前と同じものもあれば、けっこう追加されているような感じ。とにかく選択肢が多くて迷わせるなあ!
しかしやはり海鮮丼だろう、だが組み合わせのセレクトが難しすぎる。ウニは絶対入れたいが、他のネタも入れたい。
散々迷った挙句に注文完了。
ワクワクしてきたぞ。
メインの海鮮丼の前にまずは旬のカキ。
生牡蠣やフライも惹かれたけど頼んだのは天ぷら。一年前に行った穴水で食べて以来、カキの天ぷらに魅了されてしまった。
やや小ぶりながらクリーミーな三陸のカキ、うんまい。同じ揚げ物でもカキフライとは別種の食べ物だ。
そして海鮮丼は「欲張りこのり丼」。やっぱり海鮮はいろいろ食べたい、でも穴子も捨てがたい、という欲求に抗えず。
しかしこの見た目は想定以上だ、お盆の上がなんだかすごいことになっちゃったぞ。
まさにオールスター、素晴らしい海鮮曼荼羅。
欲張りこのり丼は甘海老を筆頭に中トロ、鯛、生ウニ、イウラ、さらにはクジラ刺なんかも入ったまさに「欲張り」な丼。別途天丼もついているからこれ自体はごはんの量は少な目で、それ故に具の豪華さが際立つ。
とにかく新鮮な魚介が代わる代わる現れて、口の中をいろんな味で満たしていく。
うわぁ…これはうまい。そして楽しい。
さらにミニ天丼がセット。ちょっと小ぶりな穴子天に茄子、カボチャ、ししとうなどの野菜天の組み合わせ。
さっぱりした海鮮丼とは対照的に食べ応えある天丼。タレの味も絶妙。
刺身と穴子天って、最強タッグチームだなあ。
あら汁なのが嬉しい。いい出汁、出てるじゃないの。
野菜も根菜系を中心にたっぷり入っていて食べ応えがある。
こういう汁物を飲んでいるときにこそ、自分がこの店に、この地に歓迎されていると実感できる。
真心って言葉はこういうあら汁のためにあるんじゃないだろうか。
脇を固める小鉢陣も鮮やか。タコの酢の物に茶碗蒸し、それにちょっとゴージャスなイチゴのデザートまで。
イチゴって栃木とか茨城あたりのイメージがあったけど、宮城も負けず劣らずイチゴの名産地らしい。
これら脇役の活躍もあって本当に欲張りな昼食。はるばるここまで来た甲斐があった、大満足。
『孤独のグルメ』でも首都圏のお店は気に入ったら再訪することも少なくないですが、遠方のお店はそうはいきません。でもここは新しい店舗に移ったこともあり、いずれ絶対また行きたいとずっと考えていたのでした。米沢への巡礼のついでという口実ながら、震災から15年という節目のタイミングでここに来て、この店と女川の様子をまた見ることができて本当に良かった。
女川と、東北の方々の今後の安全と健康を心から願っています。
ごちそうさまでした。



















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