元アストンマーティン F1 チームで車体開発を担当されていた日本人エンジニア・神野研一氏がアウディ F1 に移籍することを公表されました。一年ほど前にアストンを退社されてから次はどこに行くのかと思っていたら 2026 年からザウバーを買収して参戦するアウディで、それも PU 開発とは。ビークルダイナミクスから PU 開発への転身というのもすごいことですが、さらに 2026 年の新レギュレーションに向けて新規参戦 PU メーカーに移籍、というチャレンジングすぎる挑戦にはただ感服します。
神野さんといえば、つい半月ほど前に私がホンダウエルカムプラザ青山で撮ってきたレッドブル RB16B「ありがとう号」の写真をご自身の blog に引用したいというご連絡をご本人からいただき、掲載いただいたところでした。
私が RB16B の実車についていた謎の機構について「これはレーキ角調整のためのシステムか?」と書いていた部分に関して、別チームとはいえまさにその機構を開発していたエンジニアの方から直接解説いただけるとは、これ以上の光栄はありません。
私は神野さんのことは以前からフォローしていて同世代だろうなと思ったいたのですが、実際同い年だったことが判明。私もレース、できれば F1 にエンジニア/デザイナーとして関わることを夢見て工学系の大学に進んだので、同世代で同じ夢を追って本当に実現してしまった人のことは尊敬するほかありません。私が大学に入った頃はちょうどインターネット黎明期で、入学後には IT のほうが面白くなってしまい学校の勉強そっちのけで PC や IT ばかり触っていたからなあ…。
ちなみに、現在の F1 の世界ではホンダ系以外にも日本人エンジニア/メカニックが多数活躍されています。今季からハースのチーム代表に就任した小松礼雄氏はその筆頭でしょうが、それ以外にも様々なチームやポジションで F1 に携わる方々がいらっしゃいます。
私の把握している範囲で、ホンダ系以外の日本人現役 F1 エンジニア/メカニックは以下の通り。
経歴 | |||
---|---|---|---|
小松礼雄 | ハース | チーム代表 | B・A・R→ルノー→ロータス→ハース |
徳永直紀 | アンドレッティ | 上級戦略顧問 | ルノー→ロータス→ルノー→アルピーヌ→アンドレッティ |
羽下晃生 | アストンマーティン | チーフデザイナー | ジョーダン→ミッドランド→スパイカー→フォースインディア→レーシングポイント→アストンマーティン |
今井弘 | マクラーレン | ダイレクターレースエンジニアリング | ブリヂストン→マクラーレン |
松崎淳 | アストンマーティン | チーフタイヤパフォーマンスエンジニア | ブリヂストン→フォースインディア→レーシングポイント→アストンマーティン |
Toshi Iguchi | メルセデス | Senior Suspension Designer | マクラーレン→BMW ザウバー→トヨタ→メルセデス |
神野研一 | アウディ | パワーユニットエンジニア | フォースインディア→レーシングポイント→アストンマーティン→アウディ |
吉田直実 | ハース | メカニック | アーデン(F2)→ハイテック(F2)→ハース |
新木崇弘 | ウィリアムズ | メカニック | ハイテック(F2)→ウィリアムズ |
Taichi Yoshida | メルセデス | パワーユニットエンジニア | メルセデス |
こうしてみると、上級エンジニアから現場のメカニックまで幅広く、かつ様々なチームに日本人エンジニアが所属していることが分かります。日本人技術者だけで一つ F1 チームが作れそうな勢い(笑。
これ以外にも F1 の世界で活躍する日本人はいるかもしれません。ファクトリー勤務の開発系エンジニアは上級職でない限り一般のファンに名が知れる機会も限られますからね。逆にレースチームの一員としてサーキットに来ている小松さん、今井さん、松崎さんは国際映像にもたびたび写ります。
また徳永直紀氏は 2000 年から長きにわたりエンストンの F1 チーム(ルノー系)のエンジニアとして活躍されていましたが、2022 年にチームを離脱しつい先日アンドレッティへの加入を公表されたばかり。アンドレッティの F1 参戦はまだ承認されていませんが、2026 年のアウディ参戦に並ぶ楽しみの一つです。
面白いのが、タイヤサプライヤー時代のブリヂストンから F1 チームに移籍した今井さんと松崎さん(かつては浜島さんもそうでした)、あと日産からルノーに入った徳永さん以外は自動車メーカーとは関係なく単身でヨーロッパのレース界に挑戦した方ばかり、という点。仮に自分が機械工学を続けていたとして、そこまでの行動力はあったかなあ。当時は自動車メーカー経由で F1 に関わるルートしか考えていませんでした。
私としては、いち日本人として、またかつて自分もレースの世界に憧れた一人として、チームを問わず日本人エンジニア/メカニックの方々を応援しています。ドライバーのように脚光を浴びる仕事ではありませんが、それぞれのチームが活躍するたびに裏方で支える彼らに思いを馳せています。
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