F1 はヨーロッパラウンドを終え、アジア方面への終盤戦フライアウェイに突入しました。ナイトレースのシンガポール GP、こういう公道コースはハミルトンが大得意とするところ。完勝でランキングトップを盤石のものにするかと思いきや、予想とは全く逆の結末になりました。
今回のレースは予選からロズベルグが速かった。Q3 ではハミルトン自身のミスもあり、かつストレートが少ないコース特性もあってレッドブルやフェラーリが健闘。ロズベルグ PP にリカルドが 2 番手につけ、ハミルトンは 3 番グリッドからのスタートになります。
決勝スタートはロズベルグもハミルトンも大きな失敗なく蹴り出したものの、後方でクラッシュがありスタート早々にセーフティカー導入。結果、上位のトラックポジションはスタート時のまま固定されます。そこへメルセデスの二台にブレーキの冷却トラブルが発生し、思った通りにペースが上げられないという問題に見舞われます。クリーンエアを受けながら走れる首位ロズベルグはまだしも、追い上げ展開となったハミルトンにこの状況は厳しい。中盤までこのまま膠着状態が続き、いっぽう後方からは予選でのマシントラブルでほぼ最後尾スタートとなったヴェッテルが猛烈なペースで追い上げてきています。
33 周目、ずっとチャンスをうかがっていたライコネンがハミルトンのミスを見逃さずに乾坤一擲のオーバーテイク!ハミルトンは 4 位に順位を落とします。このままでは表彰台すら逃してしまうハミルトンはピット戦略を変更し、その時点で履いていたタイヤを使い切るまでペースアップした後にスーパーソフトに交換。ポジションを守りたいフェラーリは、ギリギリまでタイヤ交換を迷った挙げ句ピットインしたところ、結果的にハミルトンにアンダーカットを許してしまいました。これは完全にフェラーリの判断が遅すぎた。今季のフェラーリ不振はマシン開発の停滞もさることながら、こういうオペレーションの拙さで落としているポイントがあまりにも多いことに原因があると思います。
終盤はリカルドが魅せてくれました。残り 13 周でピットインしスーパーソフトタイヤに交換すると、怒濤の追い上げで 1 周 2~3 秒ずつロズベルグとの差を詰めていきます。ロズベルグもタイヤ交換をして合わせに行くかと思われましたが、そのままステイアウト。これはもしかするとフェラーリのように判断が裏目に出るのでは…と思われましたが、リカルドが追いつくよりも先にスーパーソフトタイヤのパフォーマンスが落ち始め、わずか 0.5 秒差を守ったロズベルグがそのままトップチェッカー。
結果的にはメルセデスの 1-3 フィニッシュだったとはいえ、メルセデスがこうしてフェラーリにオーバーテイクされたりレッドブルに追い立てられたりするレースは久しぶりで、非常に見応えがありました。メルセデスのブレーキに不安があったのが一因ではありますが、これだけ面白いレースを魅せてくれたライコネンとリカルドには拍手を送りたい。
このレースの結果、チャンピオンシップでは再びロズベルグがランキングトップに返り咲きました。この期に及んでまだロズベルグがハミルトンを直接対決で下したと言えるレースがないのは気になりますが、いよいよ残り 6 戦、ロズベルグが今回のように予選から決勝まで完璧なレースを組み立てることができれば、彼岸のチャンピオン獲得の可能性は十分にあり得ます。いっぽうのハミルトンはまだ全く自信を失っていないでしょうから、トラブルなく自分らしい走りに集中できるかどうかにかかっていると言えます。
マクラーレン・ホンダは、予選は最近の定位置付近と言える 9・12 番手。マシン性能の差が出にくく、またセーフティカーがほぼ確実に導入されるレースで上位入賞が期待されましたが、バトンはスタート直後の接触が原因でほとんど走らない間にリタイア。アロンソは得意のジャンプスタートを決め中盤まで 5 番手を走行するなど、安定感ある速さを見せてくれました。その後ヴェッテルとフェルスタッペンに交わされたものの、後続を寄せ付けず 7 位フィニッシュ。6 位までは「三強」が順当に二台ずつ収まったことを考えると、確実に中堅チームのトップを争える実力がついていることが確認できたと言えます。さすがにこれから 50pt 差のあるフォースインディアやウィリアムズに追いつくことは難しいかもしれませんが、トロロッソを抑えてコンストラクターズ 6 位の座は確実なものにしてほしいところ。
次は 16 年ぶりの秋開催となるマレーシア GP。さらにその翌週には日本 GP が控えていることもあり、マクラーレン・ホンダのさらなる躍進に期待したいところです。
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