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くらげ

くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

ゆられ、ゆられ
もまれもまれて
そのうちに、僕は
こんなに透きとほってきた。

くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

だが、ゆられるのは、らくなことではないよ。

外からも透いてみえるのだろ。ほら。
僕の消化器のなかには
毛の禿びた歯刷子が一本、
それに黄ろい水が少量。


くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

心なんてきたらなしいものは
あるもんかい。いまごろまで。
はらわたもろとも
波がさらっていった。

くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

僕? 僕とはね、からっぽのことなのさ。
からっぽが波にゆられ、
また、波にゆりかえされ。

しおれたかとおもふと、
ふぢむらさきにひらき、
夜は、夜で
ランプをともし。

くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

いや、ゆられてゐるのは、ほんたうは
からだを失くしたこころだけなんだ。
こころをつつんでゐた
うすいオブラートなのだ。

くらげ

[ Canon EOS 7D / SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]

いやいや、こんなからっぽになるまで
ゆられ、ゆられ
もまれ、もまれた苦しさの
疲れの影にすぎないのだ!

金子 光晴 『くらげの唄』

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