「焼肉無軌道男、円山公園に現る」
『孤独のグルメ 2022 大晦日スペシャル』の聖地巡礼は千歳から札幌へと辿り着きました。札幌はおいしい店がたくさんあるし、ゴローも大通公園かすすきの周辺で何か食べるに違いない、と思っていたらまさかの円山公園。劇中では大通公園と円山公園を間違えて彷徨い歩いてきてしまった…というくだりがありましたが、そこは間違うところじゃないでしょ!(笑
…というツッコミをしながら地下鉄で円山公園まで出て、そこから徒歩で十分ほどの住宅街の中に目的地を発見。っていうか、街灯もないような路地に入り込んだところに超見つけにくい感じで店舗がありました。これは知ってても見つけにくいし、間違っても初見で飛び込むような店ではない(汗
入口のドアを開けたらいきなり急階段がお出迎え。ここでブーツを脱いで階段の上にある下足箱まで持って行きます。
一見客を試すかのような入りにくさ、それでこそ孤独のグルメ。
あらかじめ予約しておいたので難なく着席できました。
宅麻伸が演じていたマスターのご本人はとても気さくな方で冗談交じりにいろいろ話してくださいました。でもひっきりなしに電話がかかってきていて大変そう。状況によっては電話に出られないことも少なくないようでした。マスター曰く「肉切ってたら取れませんからね!」とのこと。席数も限られているし電話が多いこと以外はテレビ放送前とそんなに変わりません、と笑っていらっしゃいました。
いい具合に煙と油が染みこみまくった壁メニュー。
「店主の気まぐれ水道水(時価)」がとても気になる。アルコールより高価かったりするんだろうか。
七輪に網の炭火焼き。使い込まれた感じがまた良い味を出している。
焼肉って、炭火でじっくり焼くのが一番うまいんだよなあ。
そこにすかさず運ばれてくるお通し。このどでかい海老と椎茸がお通しとは!
それにしても、完全に肉の頭になってるところに海老と椎茸とは面白い。
とりあえず生ビールから。北海道に来たらやっぱりサッポロビールでしょう!
苫小牧から札幌までの旅路の疲れが溶けていくのを感じる。
つまみ代わりの自家製浅漬け。
まるまる一本出てきたのには驚いたけど、奇をてらわない手作り感にホッとする味。
そうこうするうちに海老と椎茸が焼けてきました。
海老、殻ごと食べられるということで背中から思い切ってガブリ!
おお…うまいぞこれ。殻パリパリ、身はホックホク。これぞ海老の醍醐味。
椎茸は…個人的には唯一の苦手と言っていい食材だけど、これは肉厚で味も濃く、食べ応えがある。丸のままの椎茸を初めて「おいしい」と感じたかも。
やっと身体が温まってきた。さあ食うぞ…!
肉はまず塩ジンギスカンから。札幌で食べるべきは当然ジンギスカン、ですよね。
でも他の店で食べたことがあるジンギスカンとは見た目からしてちょっと違う感じ。たっぷりの塩ネギがついてくるのも良い。
くぁー、むちゃくちゃうまい。牛や豚とは別物の味、香り、歯ごたえ。塩ネギもいいアシストをしてくれる。
炭火でじっくり焼くのが羊肉のうまさをさらに引き立てている気がする。
塩ジンギスカン、いいぞ。舌が、胃袋が打ち震えている。
上タン塩。そのへんの焼肉屋のタン塩より明らかに大きくて分厚くておいしいんだけど、他のメニューのインパクトの陰に埋もれがち。それくらい、ここの肉には全体的にパンチがあった。
山わさび冷奴。
まるまる一丁の豆腐にたっぷりの山わさびとネギ。ピリリと来る刺激と豆腐の冷たさが味覚をリセットして、また新たな心持ちで焼肉と対峙させてくれる。
トロモン。なんかポケモンにでも出てきそうな名前だけど、ホルモンのトロということらしい。
普通のホルモンって皮のコリコリ感ととろける脂の対比を楽しむのに対して、トロモンは皮の部分も含め全体的に柔らかく、トロットロ。こんな感覚のホルモン、初めて。ちょっと気に入っちゃったなあ。
肉の脂分が炭に落ちると七輪が炎上してしまいます。
そうなるとすかさず角氷が提供されて、これで消火。
そういえば他のお客さんが炭の追加を頼んでいたときに、マスターが「遠赤外線でじーっくり焼くのが一番うまいし、肉の脂が落ちて火力も上がるからそのままで十分」と諭されていました。確かに炎上するくらい脂が出るから、炭はちょっと少なく感じるくらいでちょうど良いんだな。
このうまい肉の前に、こっちの「燃料」が尽きてしまった。
ここはハイボールを追加して自分の魂を燃やしていくしかない。
続いて和牛サガリ。これはドラマで見たときから絶対食べたいと思っていたやつ。
実物は見るからに濃い。焼く前から優勝することが確信できる。
お~、この音色。いい脂だけが奏でる音だ。
ただでさえうまそうだった和牛サガリが、火を通すことでうまみが凝縮されてさらに濃い。野太い。
それを卵黄に浸けて食べると、もはや言葉が出なくなってしまうほどにうまい。
生卵と肉といえばすき焼きが絶対王者だったが、すごいやつが出てきた。
さらにはこれも絶対食べようと思っていた「スーパーロース」。
網の対角線上に置いてギリギリというくらいの大型ロース、すごい迫力。
そのぶん炭に落ちる脂の量も半端なくて、七輪の炎上不可避。
おおお…この肉もすごい破壊力。インパクトだけならこの日食べた中で最強。
でも赤身と脂のバランスがいいのか、それとも炭火のおかげで脂が程良く落ちたのかは分からないけど、もたれるほど重たいわけでもなく。ちょうど良い、まさにうまいロース。
うおォン!俺はまるで、雪の原野をゆく蒸気機関車に石炭を投げ込む機関士だ。
燃えよ、走れ、煙を吐いて。
ここらでレモンサワーを飲んで口の中をスッキリさせよう。
すり切り一杯、という感じで出てくるサービス精神に乾杯。
で、ここで…牛トロ。
アツアツご飯に半分凍った牛挽肉。それに卵黄。これでうまくないわけがない。
これを箸でよーーーくかき混ぜたら、いただきます。
はいおいしいー!
白飯の熱で半解凍されたつぶつぶ牛。タレと卵黄が混ざり合った濃厚なうまみ。
見た目はジャンクだけど中毒性あるうまさ。これは自宅でもやってみたい。
〆は B(ビーフ)シチュー。そういう略し方をされたら頼まざるを得ません。
焼肉を準備する過程で出たであろう牛肉の様々な部位をじっくり煮込んだであろう贅沢なビーフシチュー。そりゃうまいに決まってる。しかし、具がないのに確かに肉がいる不思議。
なんかもうこのシチュー単品でも勝負できそうな完成度の高さがありながらも、今日のうまかったいろんな肉の味を復習するような、実に良いビーフシチュー。
食べ終わる頃には店内はもう煙モクモク。
換気用に窓を開けてあるから吹き込んできた粉雪と、七輪から舞った灰が漂う不思議な空間が出来上がってしまった。
完全アウェーの店で出会った、塩ジンギスカン。
俺はその名を、永遠に忘れない。
ごちそうさまでした、札幌焼肉ナイト、最高でした。
ゆっくり寝て、明日は小樽だ。
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