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南雲暁彦写真展「Tokyo Moonscapes 東京恋図」

ライカギャラリー表参道にて開催されている、写真家・南雲暁彦さんの写真展「Tokyo Moonscapes 東京恋図」を見に行ってきました。

南雲暁彦写真展:Tokyo Moonscapes 東京恋図 – デジカメ Watch

Tokyo Moonscape

何度か書いている通り私は南雲さんの写真のファン。あまり写真展って得意じゃないんですが、南雲さんの写真はアプローチは叙事的ながらその奥に感情を感じさせるものがあるのが好きなポイント。私も常々そういう写真を撮りたいと思っています。

タイトルからいって今回の写真展は四年前に開催された「Lens of Tokyo -東京恋図-」の続編的な位置づけにあります。四年前の写真展が東京タワーとレインボーブリッジという「都心の西側」の夜景を主体としていたのに対して、今回はスカイツリーや東京ゲートブリッジなど「東側」の夜景に月を絡めた写真で占められています。

Lieca SL3-S

この写真展はつい先日発表されたばかりのライカ SL3-S(今日が発売日)に合わせて開催されたもので、全ての写真が SL3-S を使って撮影されています。SL3-S は先に発売された高画素機 SL3 の兄弟モデルで画素数を抑える代わりに高感度性能と動画性能を強化したモデル。α でいうところの α7R と α7S のような関係です。
イメージセンサーの画素数こそ先代 SL2-S と同じ 2,400 万ながら、像面位相差センサーの搭載やボディの小型化、チルト液晶搭載、ユーザビリティー強化などのブラッシュアップを施したモデル。他社ミラーレスユーザー視点だと「やっとそれ?」というスペックではありますが、今までチルト液晶すら頑として搭載してこなかったライカ SL としては大きな進化。

Tokyo Moonscape

会場のライカギャラリーは昨年 4 月にオープンしたライカ表参道店内に設けられたギャラリースペース。民家をリノベーションした建物ということで、スキップフロア構造の立体感・抜け感を活かした展示スペースでゆったりと写真を見て回れる施設になっています。

Tokyo Moonscape

四年前の銀座ライカストアでの展示は重厚感重視という感じでした。こちらのライカギャラリーは光がよく回る明るい空間で、そんな中で月夜の写真に見入るというのはちょっと新鮮な体験。

Tokyo Moonscape

圧巻だったのが写真展のキービジュアルにも使われているこの写真。大きさが伝わらないのが悔しいのですが、相当な大判プリントを階段の壁に貼り二階のフロアから階段越しに(3m くらい離れたところから)見ています。超大判プリントだけにゲートブリッジの圧倒的な存在感と、その向こうに望遠レンズで大きく捉えた半月。沈みかけだから大気の影響で夕陽のように真っ赤に色づいているのが印象的な一枚です。
月の強烈な赤さもさることながら、地球光による夜空のグラデーションやライトアップされたゲートブリッジの階調表現などライカらしい画作りが感じられます。南雲さんによると SL3-S の高感度性能を表現するために月と夜景というモチーフを採用したとのことですが、こういう陰影を見せられるとライカだなぁと思いますね。

Tokyo Moonscape

面白いと思ったのがキャプションに撮影設定だけでなく撮影日時まで記載されていること。
天体って地球の自公転の影響で毎日少しずつ軌道が変わるから、全く同じ構図の写真は一年に一度しか撮れません。さらに天候の影響も受けるから翌年も同じ写真が撮れるとは限らない。ここに展示されている写真には「この日この瞬間にこの場所でなければ撮れなかった一期一会」が記録されていて、仮に他の人が同じことをしようとしてもほぼ不可能。その唯一無二を証明するキャプションだと感じました。きっとこのあたりの感覚は書籍で手の内を全部明かしても自分と同じ領域には簡単にはたどり着けないから種明かしも惜しくないというのと同じなのだろうなあ。

Tokyo Moonscape

写真って「頭の中で『こういう写真を撮りたい』というコンテを描いて、それをアウトプットするために時間・場所・天候・光・構図・画角・カメラ設定(絞り/SS/露出/ノイズレベル)を揃えてしかるべき瞬間にシャッターを切る」という作り込みの表現物だと思っています。その究極はスタジオフォトでしょうが、風景撮影だって天候などの不確定要素はあるものの基本的には同じこと。スナップ写真やスポーツフォトは偶発的要素の割合が多いものの、それだって目の前で何かが起きたときに「瞬間的に脳内にコンテを描いてそこに合わせに行く」行為ではないでしょうか。日々刻々と位置や表情を変える天体を、自分の写真に理想的な状態で収める。南雲さんの写真の作り込みの極意を見た気がしました。

Tokyo Moonscape

スカイツリーとゲートブリッジを主役とした写真が並ぶ中で個人的に目を引かれたのがこの一枚。これ、東京タワーを下から見上げながら鉄骨の向こうに月を捉えた写真ですよね。鉄骨好きとしては暗闇に深紅に浮かび上がる鉄骨と、丸く純白な月との対比に鳥肌が立ちます。
前回もそうでしたが、南雲さんが撮る東京タワーの写真って絶対的にカッコイイんだよなあ。自分でもマネして撮ってみようと思うけど全然近づける気がしません。

Tokyo Moonscape

動画性能も高い SL3-S ということでギャラリー内では動画作品も展示されています。南雲さんによる動画作品と、SL3-S に対する南雲さんへのインタビュー動画が交互に再生。
動画作品の BGM は「AI に 300 曲くらい作曲させて、その中から絞り込んでブラッシュアップさせていった」というのも面白い。フォトグラファーの枠にとどまらず新しいことにいろいろとチャレンジしていく姿勢、見習いたいです。

Tokyo Moonscape

今回は南雲さんご本人に解説いただきながらじっくり写真を見る、という貴重な体験をさせていただきました。

南雲さんの写真は見ると自分でも写真を撮りたくなる、不思議な魅力があります。同じように撮れるようにはならないとしても、自分なりに少しでも近づけるよう頭を使ってみよう。

写真展は 4 月 20 日まで開催されているとのことで、それまでにこの近くに来る機会があれば(いや、なくても見に行く価値あると思います)是非どうぞ。

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