先週末、お台場の日本科学未来館で開催中の「深宇宙展」を見に行ってきました。
特別展「深宇宙展〜人類はどこへ向かうのか」To the Moon And Beyond
科学未来館と NHK などが主催する展示会。JAXA や東大、理研なども協力しているようでガチの展示が期待できます。宇宙や宇宙開発に関する展示会は時折開催されているけど「深宇宙」と題されるとさらにワクワクするじゃないですか。
音声ガイド(別料金)のナビゲーターは声優の小西克幸氏。最近の当たり役というと必然的に『鬼滅の刃』の宇随天元になるのでしょうが、深宇宙展というテーマに対しては個人的には『マクロス F』のオズマ・リーのイメージが先に立ちます。まあ、ナレーションはそのどちらとも違うご本人の地声(イケボ)でしたが。
なお音声ガイドは現地貸出のレシーバーとスマホアプリの両方に対応。ガイドつきだと展示内容の理解が深まるだけでなく宇宙探索のロマンまでも感じられたので、課金必須だと思います。
国産ロケットの現行機「H3」の 1/20 スケールモデル。2 月に四度目の打ち上げを成功したのも記憶に新しいところです。
普段あまり日本の宇宙開発を追っかけていないと、ロケット開発の話題といっても時折ロケット打ち上げのニュースを見かける程度です。が、これで打ち上げられた人工衛星「みちびき」(この模型も別途展示されていました)によってカーナビだけでなくスマホの地図アプリの GPS 精度が従来より大幅に向上するなど我々の生活に直結しているわけだから、ありがたみを実感します。
その H3 ロケットのメインエンジンのスケールモデル。模型クラスタ的にはこれのもっと小さくて簡易なやつをガンプラで散々作っているからすごく親近感あります(笑
でも宇宙モノの SF 作品では多くの場合こういった実際の宇宙開発技術をモチーフにメカ設定等が起こされているわけだから、そういう意味でもそれぞれのパイプや配線がどういう意味を持っているのかなど興味津々。
ちなみに科学未来館の常設展示(5F)には↑のとおり H-IIA ロケットのメインエンジン(実物)が展示されています。
打ち上げではなく最初の燃焼試験に使用されたものとのことですが、本物のロケットのエンジンが目の前で見られるのは胸熱。宇宙に漠然とした憧れを抱いていた少年期のことを思い出します。
話はまた深宇宙展に戻って、こちら↑は実際に打ち上げられた H-IIA ロケットのフェアリング実物。打ち上げ後、海上に落下したのを回収したものです。
金属板が裂け、塗装は剥げ、無数のキズを纏う状態になってまでも人工衛星を宇宙に届けたこと、そしてその過程で関わった方々の苦労がこの姿から忍ばれて目頭が熱くなります。
場内にはまた実際のロケットの部材が触れる状態で展示されてもいます。ロケットの外装に関わる部材は多くがアルミ合金やカーボン強化樹脂で作られていて、とにかく丈夫で軽い。ロケットに使うものだからとにかく軽さと丈夫さが必要なことは頭では解っていても、実際に体感できると改めて驚きます。またアルミやカーボンって近年ではモバイルガジェットでも多く使われていて身近に感じられるだけに、それと宇宙開発に繋がりが感じられるのも良い。
国産だけでなくアメリカや旧ソ連を中心とした各国のロケットの模型も展示されています。1950~70 年代の宇宙開発最盛期には日本よりもむしろこちらの方が主役でした。
私はスペースシャトルど真ん中世代だからこういう模型が展示されるとワクワクしますね。一昨年ニューヨークに行った際にわざわざ INTREPID MUSEUM にディスカバリー号の実機を見に行ったくらい、スペースシャトルは今でも大好きです。
こちらは国際宇宙ステーション(ISS)の模型。とにかくいろんなものの模型があって見ていて飽きません。
こうやって見ると人間の居住スペースはごく小さくて、全体サイズの大部分をエネルギー調達のための太陽光パネルが占めていることがよく解ります。
これ↑はまたしても常設展側にあったものですが、ISS の居住空間のレプリカ。実際の宇宙飛行士が ISS でどれくらいのスペースに居住し、個室やトイレ、食事などがどんな様子で行われているかを等身大に感じることができます。
常設展で宇宙に関する内容はあまり多くありませんが、せっかく深宇宙展を見に行ったならばついでに 5F は必ず見ておくべきですね。
そしてこの展示会最大の目玉がこれ。ロシアの宇宙船「ソユーズ」の地球帰還ユニットの実物です。2021 年に前澤友作氏が日本の民間人として初めて ISS に滞在し、地球に帰還した際に搭乗したもの。大気圏突入時に黒焦げになった外装が生々しい。その天井には着陸に使われた巨大なパラシュートの実物も展示されていました。
円窓から帰艦ユニットの内部を窺うことができます。さまざまな計器類でゴチャゴチャしていますが、サイズ感や形状も相まって第一印象は「サイヤ人の宇宙船ポッドみたい」。そう考えると余計に楽しくなります。
ちなみにこの展示会の当初の予定ではこの帰艦ユニットの中に実際に入ってみることができるはずでしたが、安全面を考慮して中止されたとのこと。まあ頭や身体をぶつけずに出入りするのも大変な大きさだし、相当な待ち行列が発生することを想定してもやむを得ない判断でしょう。むしろこの実物を間近で見られるだけでも感激というものです。
さらに前澤氏が実際に着用した宇宙服も展示。バイザーに蛍光灯が映り込んでいる感じが『2001 年宇宙の旅』を彷彿とさせますね!
個人的には前澤氏の普段の言動には賛同しかねる部分も多いのですが、個人による宇宙旅行の実現という夢を見させてくれたという一点においては素晴らしいと思っています。
こちらはトヨタと JAXA が共同開発したという月面探索用の有人与圧ローバーの実寸大模型。でかい!
映画『オデッセイ(MARTIAN)』でマット・デイモンが乗っていたローバーもこんな感じだったよね…とか、入場してからとにかく自分が今までに触れてきた SF テーマの映画・漫画・アニメのコンテクストが総動員されています。それくらい今まで宇宙モノの SF 作品に触れてきた人生だった。
それにしてもトヨタが自動車メーカーとしてすごいのはこういう分野の研究開発にもしっかり投資してることなんだよなあ。
そしてこれがそのローバーに採用されているタイヤ&ホイール(ブリヂストン製)。空気圧に頼ることができない月面で、しかも悪路にも対応できるようゴムと空気の代わりに金属の弾性を利用したタイヤになっています。確かにこれならゴム製のタイヤよりもトラブルも少なそうだし、面白いなー。
ここからは一度地球圏を離れ、より深宇宙に向かっていきます。
これ↑は火星の地表を再現した NHK 制作の映像によるデモ。CG による映像と実際の火星探査機が撮影した写真を組み合わせ、正面だけでなく足元にも広がる巨大ディスプレイによってまるで自分が本当の火星にいるかのような体験ができます。さすがは NHK というクオリティー。そういえば子どもの頃は NHK スペシャルの宇宙関連回が大好きだったなあ。
小惑星「イトカワ」と小惑星探査機「はやぶさ」の模型。昨今「深宇宙」といって連想されるのはこれではないでしょうか。
写真では「はやぶさ」はほぼ見えませんが、イトカワの中央やや右寄りに貼り付いている米粒状のものがそれ。
はやぶさがイトカワでサンプルを採取した後、地球帰還の直前で最後に撮影した地球の写真は今見てもそれまでの旅の苦難を想像して泣けてきます。
さらにはイトカワで採取されたサンプルの実物を顕微鏡で見ることができます!
これめちゃくちゃ貴重な体験ですよ。さっきのソユーズの帰艦ユニットの実物と同じくらい貴重。いやー興奮するわ。
はやぶさに採用されたイオンエンジン(耐久試験モデル)。
ロケットエンジンと比べ出力は小さいものの効率が良く必要な燃料も少なく済み、また耐久性も高いと言われています。出力は小さくとも重力も空気抵抗もない宇宙空間で加速を続ければ最終的には十分な航行速度が得られるということですね。用途が違うとはいえ先ほどの H-IIA ロケットのサイズ感と比べると凄さが解ります。
そして後継の「はやぶさ 2」が到達した小惑星「リュウグウ」。黒いこともあってガノタ的にはソロモンやアクシズにしか見えない(笑。
こちらも採取してきたサンプルを顕微鏡で見ることができたのですが、これに生命の基であるアミノ酸が含まれているというのはロマンがあるなあ。我々人類もこうやって宇宙のどこかから運ばれてきたアミノ酸の末裔だったりするのかもしれない。
こちらは地球上から深宇宙の天体を観測するための望遠鏡。望遠鏡といっても普段我々が目にするものではなく、むしろパラボラアンテナに近い。可視光ではなく赤外線や電波、宇宙線といった電磁波の類を計測して映像化するためのものですね。国内だと長野の野辺山にある国立天文台が有名です。
これは X 線分光撮像衛星(XRISM)。X 線で宇宙を観測することで星や銀河の成り立ちを解明するための衛星とのことですが、ここまで来るとさすがに何をやっているのかよく分からない(笑
でも可視光の領域ではないところを観測することで銀河やブラックホールといった天体が解析できるというのもスゴイ話です。最初に誰がどういう経緯でそれを発見したんだろうか。
先ほどの天体望遠鏡群で撮影された銀河の写真たち。幼い頃、図鑑でさまざまな惑星や銀河の写真を見てはドキドキしていたことを思い出します。
「間違いない、あれは…キラキラだ!」
思わず GQuuuuuuX のセリフをつぶやいてしまう一枚。あの作品は宇宙やスペースコロニーに関する設定考証をかなりしっかりやった上で作られた作品だから、ゼクノヴァのイメージもこういうところから引用したものだったりして…という気がします。
いやー、素晴らしい展示会でした。
普通に回っても二時間前後、じっくり見ていけばそれ以上はかかる物量だと思います。でもそれだけの見応えがあった。
休日のお台場においては比較的空いていてゆったりできるのと、とにかく空調が効いていて過ごしやすかったのも良かったです。あまりに暑すぎて屋外でのレジャーが厳しいこの夏の楽しみ方としてもオススメです。



























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