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『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』完結

4 月から、いや昨年 12 月の情報公開からずっと追いかけてきていた『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』が昨夜の放送をもってついに完結しました。

機動戦士 Gundam GQuuuuuuX

機動戦士 Gundam GQuuuuuuX

あれだけ広げた風呂敷をちゃんと畳めるのか?仮に畳めたとして納得感あるものになるのか?続きは劇場で、という流れもあり得るのでは?など期待と不安が入り混じった最終回でしたが、(いろいろと放置された部分はあるとはいえ)話の大筋としては大団円でキレイな幕引き。GQuuuuuuX としてのニュータイプ論に一応の結論を見せつつ、ジオン側関係者にそれぞれのエンディングを与えつつ、主人公チームにもハッピーエンドがもたらされた良い結末でした。
とりあえず 12 話を見終えた現時点での感想を記しておきます。

■ストーリー展開

とにかく情報量が多くてスピードの速いシナリオでした。毎週 30 分どころではない視聴感で、まるで濃縮果汁を薄めずに瓶のまま口に突っ込まれているような感覚。そんな超展開でも旧作(ファーストのみならず逆シャアくらいまで)を履修していれば「よくわかんないけど、なんかわかった」と感覚的には理解できるものの、ちゃんと消化しようと思ったら三回くらい観た上でいろんな人の考察を読んだ時点でようやく噛み砕ける感じ。
ストーリー展開の先の読めなさも半端なかった。なまじ旧作の知識があると「カラーが作るガンダムならこの後はこうなるだろう」と予想しても放送では必ずそれを超えてくる。ぶっ飛んだ展開に見えても「旧作のあの設定をふまえればそうなるよな」という妙な納得感がある、という絶妙なバランス感覚でした。最後の RX-78-2 が巨大化するところだけはさすがにぶっ飛びすぎだとは思いましたが。

ちなみに本作はメインキャラが女性二人でガンダムに乗るのも女性、モビルスーツ戦は戦争ではなく模擬戦(クランバトルは実際には死のリスクがあったわけですけど)、という点では『水星の魔女』と似たようなところから始まっています。でも『水星』は大きな物語を畳まずにメインキャラの関係性にフォーカスして完結したのに対し、GQuuuuuuX は大きなテーマとメインキャラの関係性をしっかり締めて終劇したという点で対照的でした。賛否両論あった水星の終わり方は私はあれはあれで良かったと思うけど、最後にパズルのピースが綺麗にはまっていくような GQuuuuuuX のラストも素晴らしかった。

■圧縮過多な構成

ただ、それとは裏腹に圧縮されすぎでもうちょっと丁寧に描いてくれても良いのでは?と感じた部分も多々ありました。内容的には本来ならば 2 クール(24 話)、場合によってはもっと取ってもいいくらいの要素を 1 クール 12 話に詰め込んだことによる説明不足は気になりました。
一年戦争でジオンが勝利した世界線で、その後のジオンと宇宙/地球がどうなるか…を描くだけでも 1 クールでは足りないくらい。そこに GQuuuuuuX のオリジナルキャラを入れて彼らの物語も展開させたため、オリキャラ側(アマテたちに限らずカネバンやソドンクルーも含め)がキャラクターとしての心情ではなく脚本の都合で動かされているように見えていました。一応、画面上に出ている情報を丁寧に読み解けば少なくとも時間の経過(例えばマチュが二カ月も塾に行っていなくて、その間はクラバやシュウジのアジトに入り浸っていたと推測できる)から心情や関係性の変化は想像できるように作られていたとはいえ、それはちょっと考察班(視聴者)に仕事を投げすぎでは。
私はマチュたちと同世代の子を持つ親なのでどうしてもマチュよりもタマキ(アマテ母)の視点で物語を見てしまい、マチュには今一つ感情移入しきれないままだったのですが、現代の若い子であればあの描写でマチュたちに共感できるものなんですかね?

他方、古参ファンにとっては既存キャラはバックグラウンドを知っているぶん登場時間が短くても濃厚に味わうことができました。正史とは歴史が変わった世界線で、どういう経緯を辿ってここにいるかの考察の余地があるのがめちゃくちゃ楽しい。ただ正史キャラの多くがつまみ食いされただけで退場したように見えたのがあまりにも惜しい。三連星もバスクやゲーツもギレンでさえも、もっと掘り下げようがあったよね?という。2 クールあればもう少し見たいものがじっくり見れたはず。

ただ、2~3 クール構成になっていたらこの三カ月間の濃厚な感覚はなかったはずなので、このスピード感で駆け抜けたことの良さもまたあると思うのです。

■モビルスーツとメカニック

主役機ジークアクス以外は基本的に一年戦争時のメカをリファインしたものでした。RX-78-02 ガンダムが主役機としてのカッコ良さよりも異物感や恐ろしさを前面に出したデザインだったのはおそらく演出上の意図もあってのことだと思います。またそれ以外の MS もあえて違和感のあるデザインになっていたのは当初は「カラーのガンダムらしさ」としてのオリジナリティーを狙ったものだと思っていました。が、終盤にシャロンの薔薇(=エルメス)や別宇宙の RX-78-2 が登場することを見越して対比になるようにデザインされていたことに気づいたときには「うまいなあ…」と唸ってしまいました。

個人的な好みでいうと当初は GQ ザクのデザインアレンジが秀逸だと思っていたのですが、終盤に登場した GQ ギャンのカッコ良さに完全にもっていかれました。これはガンプラで欲しい。
あとはせっかく大胆なデザインリファインを施した GQ ハンブラビがさしたる見せ場もないまま退場したのはあまりに残念すぎます。別フィルムでも良いからカッコ良く活躍するシーンが見たい。

■ファンダム

本作は作品そのものも面白かったのですが、その楽しさを増幅していたのは間違いなくファンダム(ファンによる積極的なクチコミやアクティビティー)でした。放送直後から次の放送までの間に SNS や blog で展開される多くの人の考察を見るのは楽しかったし、喫茶店や飲食店で誰かが話しているのを耳にしたのも一度や二度じゃないし、自分も誰かと語りたくて飲みに行ったりもしました。作品の視聴と同じくらい、誰かとガンダムの話をするのが楽しかった。

近年では原作なしのオリジナルアニメーションで SNS が盛り上がることも珍しくありませんが、少なくとも自分の観測範囲でここまで盛り上がっていた例は近年他にありません。直近だと新劇エヴァくらいではないでしょうか。熱量という点では、ネット黎明期にあちこちの掲示板がエヴァ(最初のテレビシリーズ)の考察で溢れていたあの空気感を思い出します。鶴巻監督は「エゴサして元気をもらっている」という旨の発言をしていたし、ガンダムシリーズとしては前作『水星の魔女』でもネットミーム化を狙って台詞やカットを作り込んでいたような節があるし、本作はそれらの経験からファンダムがあることを計算づくでシリーズ構成や予告編でのヒキなどを作り込んでいるように感じました。

■だから僕は…

最終話のサブタイトルの元ネタになった富野監督の自伝『だから僕は…』を、最終話の放送前に読んでいました。

だから僕は…

既に絶版されている書籍ですが、国会図書館に収蔵されていて誰でも(利用登録さえすれば)スキャンされた電子データをスマホや PC で閲覧可能です。私はこのためだけに国会図書館に行って利用登録してきました(笑。
内容的には富野監督の学生時代から『機動戦士ガンダム』までに至る人生を綴った自伝です。人間関係や仕事のことについて赤裸々に語られていて、特に最初に所属した虫プロダクションの状況や結婚前に付き合っていた女性に関するくだりがかなり生々しい。私は『ガンダム』関連の話はあちこちで読んだり聞いたりして知っていましたが、その前の話はほとんど知らなかったから純粋に面白かったです。文章は読みづらかったけど(笑

最終話のサブタイがこの書籍から引用されたのはガイナックスの伝統芸(最終話のサブタイはきまって SF の古典から引用。今回は SF じゃないけど)というのに加えて、制作陣の富野監督に対するリスペクト、またはラブレターみたいなものでそれ自体にあまり意味はないのでしょうね。あえて意味を見出すとすれば、「閉塞感のある故郷を飛び出して、異性や仕事に振り回されながらがむしゃらに生きた結果として自分の居場所を見つける」という富野監督の生き方がマチュの生き方に重なっている、と言えるのかもしれません。

ともかく、ひたすらに楽しい半年間でした。これを見せてくれた鶴巻監督はじめスタッフの皆さんには感謝の念に堪えません。少なくともあと 2~3 周はリピートして楽しめる自信があるし、カラー作品の例に漏れず Blu-ray では大幅に加筆修正があるのだろうし(食い足りなかった部分を補完してくれたらなお嬉しい)、それも今から楽しみにしています。

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