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『海がきこえる』リバイバル上映 @アップリンク吉祥寺

期間限定でリバイバル上映中のスタジオジブリ『海がきこえる』を観に行ってきました。

【90年代名作アニメーション 初の全国上映!】 スタジオジブリ『海がきこえる』7月4日(金)より <3週間限定>で全国リバイバル上映決定! | FILMAGA(フィルマガ)

海がきこえる

私はこの作品の DVD も Blu-ray も持っているから自宅でいつでも観られるのですが、一度は映画館で観てみたかったのです。ちなみに本作は劇場用アニメーションではなくテレビアニメとして製作されたもので、当時まさに高校生だった私も録画して何度か視聴した記憶。

主人公・杜崎拓の通う高知の進学校に、高二の二学期という中途半端な時期に武藤里伽子という少女が東京から転入してくる。里伽子は容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能な才女だが学校に馴染めず徐々に孤立していく。杜崎の親友・松野は転入生ということで親切にしていた里伽子に惹かれていくが、杜崎はまるで親友を奪われたような気分で面白くない。ハワイへの修学旅行中、杜崎がアルバイトでお金を貯めているという話を松野から聞いた里伽子が彼に借金の相談を持ちかけてきて、そこから二人の関係は思わぬ方向に転がり始める…というストーリー。

序盤の杜崎は松野の恋愛の傍観者というポジションで、どちらかというと恋愛よりも男同士の友情に焦点が当たっています。その後も杜崎と里伽子の関係はずっと微妙で、それよりも里伽子の家庭の事情だったり里伽子と学校の女子たちのいざこざだったり杜崎と里伽子の間に衝突が起こったり、恋愛ものとしてドキドキする要素はほとんどありません。むしろ複雑な人間関係に胸が痛くなるような展開のほうが多い。でも観るのが辛くならないのは、つかみ所のない里伽子という少女の一挙一動から目が離せないのと、多くを語らなくても分かり合えている杜崎と松野の関係の心地よさがあるからでしょう。
そんな感じなのに、終盤の同窓会のシーンでの一言がきっかけでまるで点と点が全て繋がるかのように思い出がフラッシュバックし、杜崎が自分の本心を自覚する流れが実に尊い。そこまでのシーンで感じていた「引っかかり」が恋愛感情であったことが判明した瞬間のカタルシス。ラストシーンの杜崎のモノローグの、胸の奥から溢れ出るような語り口がそれを昇華させます。声を当てた飛田展男さん(言わずと知れたカミーユ・ビダンの声でもありますね)のセリフの中で私はこのモノローグが最高だと思っています。

ちなみに本作では新宿西口が劇中に登場するので最初は新宿の映画館で観ようかと思っていたのですが、もう一つの聖地である吉祥寺でも上映しているということで初めてアップリンク吉祥寺で鑑賞しました。なんとほぼ満席で、三十年以上前の作品だから観客も四十~五十代が中心かと思ったら、吉祥寺という土地柄か逆に大半が若い人だったのが意外でした。ただパルコ地下の映画館なのでスクリーンは小さいし画音質もイマイチだったし、そういう意味では自宅の環境で観た方が満足度は高かったかもしれません。でも今回は「吉祥寺で観る」ことが重要だったのです。

吉祥寺

作品を観終えたその足で、作品の冒頭とラストシーンに登場した吉祥寺の JR 線ホームから帰れる臨場感。三十年経っても風景は大きく変わっておらず、まるで向こう側のホームに里伽子が立っているような気さえしてきます。もちろん脳内ではサントラから『ファーストインプレッション』が流れているわけです。
本作はいつもの久石譲とは違うサントラ(永田茂)もいいんですよね。1990 年代前半の、バブル景気の雰囲気を少し引きずっているあの空気感が映像とともに記録されている感じがして胸がギュッとなります。

個人的には、ジブリアニメの中では宮崎作品で好きなのは『紅の豚』までで、それ以降は宮崎駿以外の監督作品の方が好きだったりします。その中でも『海がきこえる』は一番好きかな。甘酸っぱいラブストーリーというよりはむしろ「酸っぱい」時間の方が長いのですが、だからこそ心に引っかかり、繰り返し観たくなる味があります。

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