松屋銀座にて開催中の「メダリスト展」を見てきました。
フィギュアスケートを題材とした漫画/アニメ『メダリスト』。私はアニメから入りました。話題になっているからちょっと観てみるかと思って Netflix で観始めたら完全に引き込まれてしまい、途中から放送に追いついてリアタイしてました。原作コミックはアニメでカバーした範囲までは読みました。
ちなみに私はフィギュアスケートは浅田真央選手の現役時代にはオリンピックやグランプリシリーズを含めかなりテレビ観戦していました。最近は以前ほどではありませんが、タイミングが合えば観る程度にはフィギュア好きなので競技の基本は知っているつもりです。
漫画原作のアニメって原作の内容を程良く映像化した作品も数多くありますが、「原作の良さをアニメが引き出せていない作品」と「アニメ化したことによって化けた作品」という極端な例もよく見かけます。そんな中で『メダリスト』は、原作の方が絵力の強さを感じる一方でアニメもフィギュアスケートの動きをアニメーションで見せてくれることの良さと声や音がつくことによる良さがあって、原作もアニメもそれぞれの表現手法として成立している作品だと感じています。本展示会はその両方を等身大に感じさせてくれそうなイベントということで期待していました。
『メダリスト』単行本の表紙と雑誌掲載時のカバーアート(たぶん複製原画)。いきなりこの展示から絵力の強さが伝わってきます。それぞれの絵単体で強いけど、並べて見ると連載を続けるに従ってさらに画力が上がっていることが分かります。というかこれが商業デビュー作(事前の読み切り掲載も無し)というから驚きます。
一枚一枚に見入ってしまうわけです。腕や脚の形、指先から髪の流れに至るまで一切の隙がない。優れたフィギュアスケーターは指先の一本一本にまで神経が行き届いているように見えるものですが、この作品は漫画でそれをやっている、と感じます。
メインキャラクターの実寸大パネル。司先生との対比ではなく自分との対比で見ると各キャラクターが小さい!そりゃあ小学生だからこれくらいなのは当然だけど、劇中だと演技のスケール感もあってもっと大きく感じていました。
本作はフィギュアスケートの解説漫画的な側面もあるので、展示会でもこうやって基礎知識を整理してくれています。私はジャンプやスピン、採点などの基本は分かっているつもりでもステップの種類とかはよく分かっていなかったので勉強になりました。ちなみに撮影 NG でしたがアニメ映像を使った解説もあり、漫画のコマからの引用よりもさらに理解しやすく作られています。
司先生を支援する加護家の一人娘・加護羊。作中ではそれほど大きく扱われているわけではありませんが、初期ネームでは主人公・結束いのりを直接応援するメインヒロイン的扱いとして設定されていたとか。確かにデザインといいキャラの立ち方といい脇役のそれじゃないと思っていたのですが、そういうことでしたか。
物語序盤の試練となる「バッジテスト」。その合格バッジや全日本ノービスのメダルも展示されていました。これこの展示会用に作られたものじゃなくてちゃんとしたスケート連盟の実物ですよね。つまり連盟公認のイベントとして開催されているというのもすごい。
いのりが跳んだダブルアクセルの実寸大連続写真(アニメ版)。作中では選手によって「縦に跳ぶジャンプ」と「横に跳ぶジャンプ」があることが言及されていて、いのりのダブルアクセルは「横に跳ぶジャンプ」。実際のフィギュアスケートでもテレビで見るだけでは(カメラがアップで追随するから)ジャンプの幅や高さがどの程度なのか分かりにくいのですが、それが実寸大で目の前で見られると理解が深まります。
ちなみにアニメの演技シーンは実際のフィギュアスケート選手(元オリンピアンの鈴木明子選手)が振付やモーションアクターを担当していて、そのモーションキャプチャーから CG アニメーションをレンダリングして撮影されるまでの過程が見られたのがとても興味深かったです。
中盤は漫画のストーリーに沿った複製原画が多数展示されていました。
コミックよりも遙かに大判で掲示されることで筆致の細かさや勢いが伝わってくる。とにかく熱量の高い絵でこちらの感情が揺さぶられます。
見開きで表現されたジャンプシーン。
一コマ目のスピード感の表現もすごいけど、一コマ目の動と二コマ目の静の落差にも引き込まれます。アニメのスケーティングのシーンも素晴らしいけど、漫画は漫画としての表現を突き詰めていてこちらも素晴らしい。
ネットミーム化した「見なよ…オレの司を…」。このコマは絶対ピックアップされてるだろうと思ってました(笑。
いのりの目標である狼嵜光。ずっと熱量の高い本作の中でもこの子が出てくるコマはさらに絵力が上がる印象があります。目力と髪が特徴的なキャラクターですが、全体としてそれ以上に底知れぬ何かが絵に宿っていると感じます。見ていると背筋がゾワゾワッとするものがある。
光以外にいのりのライバルとして登場するキャラクターたちもそれぞれキャラが立っていて魅力的なわけです。単に主人公のライバルとして設定されているわけではなく、それぞれに人生を感じることができるほどに各キャラクターに深みがある。フィギュアスケートへの向き合い方や大人との接し方、本番に向かうときの精神状態…子どもを育てたことがあれば、フィギュアスケートやスポーツに限らず勉強や習い事などを通じて自分の子がこのキャラクターに似ている、と感じる人物がいるのではないでしょうか。そういう点で、私は本作はいのりよりも司先生の方に感情移入しながら見ている部分があります。
ジャンプの跳び方ひとつ取ってもこうやって性格の違いを表現できる画力。すごいを通り越してちょっと恐ろしいモノがあります。
後半の撮影不可エリアにつるまいかだ先生のスケッチブックの一部が展示されているのですが、膨大な量のメモ/スケッチ/設定その他があり、それに裏打ちされたものの上澄みが作品として表現されているのだ…と思うとこの表現力と熱量には納得するしかありません。
そしてここからは 2026 年 1 月のアニメ二期で描かれる予定の部分。ネタバレになりすぎない程度にティザー的な展示がされていました。
二期ではいよいよ全日本ノービス編が描かれます。アニメ一期でもフィギュアスケートシーンの映像がすごかったのに、技術的にさらに高い演技が見られるとあれば期待せざるを得ません。
これまでに登場したライバルたちにも負けずに個性的な新キャラクターが多数登場しそうで楽しみ。
私は本作に関してはアニメを見てから原作を追いかける派なので、アニメの後に原作を読めることも楽しみにしています。
展示後半で特に人だかりができていたのがこの衣装展示。いのり・ひかる・司先生の劇中衣装が展示されていました。
フィギュアスケートの衣装って実物を見る機会がないから貴重。そして、生身を想定した衣装を見ると先ほどのキャラクターパネル以上にいのりや光の身体の小ささを実感します。
これらの衣装は実際にフィギュアスケートの衣装を請け負う製作会社が作っており、その手順についても解説されています。
ラインストーン 1,500 個使用というのがまたスゴイ。作中ではいのりの母が手作りしたことになっていましたよね…。
最後の撮影不可エリアでは大量のスケッチに加えて初期ネーム、立体作品、ライブドローイングで描かれた木炭画などが展示されています。ここがつるまいかだ先生の凄味を最も生々しく感じられるエリアじゃないですかね。むしろこのエリアを見るために入場料払う価値ある、まであります。
とにかく終始熱量に当てられっぱなしのイベントでした。近年見た漫画・アニメ系の展示会の中でも特に良かったんじゃないですかね。
年明けのアニメ二期も楽しみにしています。





















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