先日シーズン 3 の配信が始まった Netflix『隣の国のグルメイト』を引き続き視聴しています。
この番組で紹介されているのは遠方のお店が多く(博多の吉塚うなぎ屋も紹介されていた)私は基本的に巡礼はしないつもりなのですが、どうしても行ってみたかった一店で先日食べてきました。
二子玉川の高島屋裏手にある焼鳥店です。高島屋の裏手とはいってもバス通りに面しているのは勝手口で、店舗入口は一本裏の遊歩道的な通り沿いなのでご注意を(Google マップだと裏口に案内される)。
ここ、どうやらあの矢澤ミート系列らしいですね。牛豚がメインだと思っていたら焼鳥業態もやっていたとは。でも、矢澤ミート系ならばもうおいしいことは確定したと思っていい。店構えもいい感じだし、さらに期待が高まります。
店内はカウンターのみでこの日は全席が予約で埋まっていました。二子玉という立地ゆえかお客さんは皆落ち着いていて、しっとりとした雰囲気の中で焼鳥が味わえます。
松重さんはお酒をやめる前にはよく奥様を連れてこの店に来ていたそうですね。番組内では「ビールをまず飲んだらあとは日本酒を三、四杯」という感じで飲んでいたと仰っていました。
このお店での他の見方は原則としてコース。7 種・10 種のコースと逸品料理までセットになった「完全おまかせコース」が用意されています。今回は、どうせ焼鳥以外にもおつまみも頼みたいし、ということで最初から完全おまかせで行ってみることにします。
そんなわけで、まずはもちろん生ビールから。
グラスが薄張りなのが嬉しい。ジョッキでガッと飲むのも好きだけど、飲み口が薄い繊細なグラスで飲むとビール自体の味がよりおいしく感じられる。
この日のお通しは、そうめんかぼちゃ(金糸瓜)、枝豆豆腐、鶏もつ山椒煮の三品。上品な味つけながらそれぞれに個性ある風味が特徴的で、ビールのお供にちょうど良い。
焼鳥はまず「おび」から。もも肉の中でも希少部位とのこと。
肉そのものがうまいのに、さらに焼き加減とタレの味も絶妙。これは幸せになる味ですわ。
はー、一本目からこれですか。うまいうまい。
ビールの次の飲み物はソン・シギョン氏に倣って白ワイン(ソーヴィニヨンブラン)にしてみました。
ここの焼鳥、タレでも味付けが濃すぎず鶏本来の旨味を活かす系だから白ワインがよく合うんだなあ。
続いてみさき(親鶏のテール)。若鶏なら「ぼんじり」と呼ばれる部位が、親鶏になると脂身が減って旨味と噛み応えが増す。
しかも味付けはガーリックバター!そんな焼鳥、今まで食べたことない。
食欲を誘うガーリックバターの香りに、肉の食べ応えが負けてない。噛めば噛むほど味がする焼鳥。
これはすごい。ミッチョッタ、ミッチョッタ(やばいやばい)。
鶏の燻製ポテトサラダ。
ほー、ポテサラで、燻製。確かに香り高くて、これは酒のつまみになる。
そこに口直しの大根おろし。
本来の主役であるはずの大根おろしの上に、卵黄が鎮座。口直しっていうかこれ自体が酒のつまみみたいなものじゃないですか。
次の焼鳥は「そろばん」。首周りの肉、いわゆる「せせり」と同義ですね。
これもまた肉の味が活きてる。鶏肉って、部位によってここまで味が違うんだ…というのを実感させてくれる味付けと焼き加減。
しかもちゃんと食べるペースと焼き時間を見計らって、一本食べ終わった後に次のが出てくる心配りがニクい。どの串も一番おいしい状態で食べられるってことじゃないですか。
隣のお客さんが頼んでいた山椒サワーが気になって私も頼んでみました。
確かに山椒の香り!でも痺れというよりは爽やかさが優位なさっぱり系で、口の中の焼鳥の脂を落とすのにちょうど良い。
箸休めは長芋のわさび漬け。これもまたさっぱり系でいい口直しになる上に、焼鳥やポテサラの後にこのシャクシャクした歯ごたえが来ることで目が覚める感覚がある。
厚揚げ。削り節たっぷりで香りと旨味がいい。
サイドメニュー的な酒菜がどれもちょっとずつで、お腹いっぱいになりすぎないで様々な味を体験できるのがすごく楽しい。
大人も子どもも大好き、つくね。
つくねってどこで食べてもハズレがないものだと思うけど、ここのは群を抜いておいしい。中に少し軟骨が混ぜてあることで食感に変化も生まれるし、何より肉がうまい。
さらにおつまみは鶏白レバーのパテ。
ここでパテとは。レバーパテ大好物だからめちゃくちゃ嬉しい。しかも期待通り、いや期待以上においしい。
これは山椒サワーから白ワインに戻りたくなってきちゃったぞ。
でも、ここはあえて日本酒へと進軍するわけです。
本当は松重さんが好きだという黒龍が欲しかったけどこの日のメニューになかったので(飲んだことはある)、代わりに佐渡の地酒である雅楽代(うたしろ)を。
日本酒とは思えないフルーティーな香り!飲み口も爽やか、軽やか。涼しさが感じられて夏に最適。
何よりちょっとワイン寄りなテイストで、レバーパテとの相性が最高でした。我ながら素晴らしい選択をした。
そしてハツ。言わずと知れた心臓です。
インパクトの強い見た目からしてミッチョッタだけど、弾力にあふれた肉を噛むと中から肉汁がブワッッッと出てくる。
今まで、ハツって主にコリコリの食感を楽しむためにあると思っていたら、本当はこんなに旨味が溢れているものだったとは。
そこへ届けられる旬の焼野菜三種。
ハツの肉汁にまみれた口が、この焼野菜によって瞬時にリセットされる。焼くことによってそれぞれの野菜の香りが立つのもいいんだなあ。
そろそろクライマックス、ここで登場するのが「ちょうちん」。卵管と未成熟卵(卵黄)を使った珍味系。
これが番組で見たときにめちゃくちゃおいしそうで食べたかったやつ!念願が叶いました。
濃厚な卵黄にタレが絡むことでさらに濃くなる。その味を追いかけるように肉の弾力を味わう。さらに酒で追いかける。
いい日だ。いい人生だ。そう言いたくなる幸せな味。
雅楽代が空いたところでマスターがとっておきを出してくれました。
矢澤ミートが山形の蔵元に別注をかけているという大吟醸「惣喜」。
ちなみに元々はお店とお客さんがどちらも喜べるようにとの願いを込めて「双喜」という銘柄だったのが、今年からこのベースになった銘柄「惣邑(そうむら)」から一文字もらう形で「惣喜」に改名したとのこと。
単体で飲んでもふくよかでおいしい味だけど、それよりも焼鳥と一緒に飲むのがうまい。肉料理を引き立てる米みたいな酒。これはいくらでも飲めてしまう。
焼鳥の最後は「ふりそで」。肩の希少部位ですね。
脂乗りが良くうまみの強い肉を大根おろしと一緒にいただく。皮がちょっとパリッと焼けてるのがいいじゃないですか。
そして〆。親子丼と鶏スープです。
親子丼は、ここまでの焼鳥を総括するようにうまい鶏肉をふんだんに使った丼。しかも卵と出汁もうまい。
でも親子丼と同じくらい驚いたのがスープ。鶏のうまみを濃縮したかのようなギュッとうまいスープ、これ毎日でも飲みたい。
ちなみに〆の丼は親子丼の他にそぼろ丼も選択可能です。
鶏肉を知り尽くした店が作る親子丼にそぼろ丼、さらに鶏スープ。豪勢な焼鳥の旅路の最後にこんな御馳走が待っていようとは。
デザートは完熟バナナのジェラートでした。
バナナの濃厚さはありつつも、最後にさっぱりさせてくれる絶妙なスッキリ感。
いやー、どれもこれもおいしかった。さすがは松重さん行きつけの店だけはありますね。
コースにお酒を数杯つけるとけっこういい値段にいっちゃうから、食の価値観が合う人に限られるけどここはぜひ他の人も誘って来てみたい。二人か、多くても三人がちょうど良い人数でしょうね。
きっとまた食べに来ます。
ごちそうさまでした。



























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