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風立ちぬ [Blu-ray]

風立ちぬ [Blu-ray]

Blu-ray が届きました。

この映画に関する考察や評論はもう出尽くしたと言って良いほどに出ていますし、私の感想は劇場での鑑賞時と変わらないのですが、改めて、この映画はこれまでのどんな宮崎映画とも違う手触りの作品だな、と感じます。初期の、とにかく子どもたちに夢を与える作風とも、世界的に名が知られ始めてからのお説教くさい作風とも違う、これが宮崎駿という人物の芯なんだろう、という部分が凝縮されたような作品。

個人的には、この物語における堀越二郎には共感するところとそうでないところの両面があって、自分の夢を実現するチャンスがあればそれが大きな代償(この場合は、戦争への加担)を伴うものであっても手にしたい、という気持ちは理解できる部分があるけれど、それでも愛する人を事実上見殺しにするほどのめり込めるものか?というと、二郎の生き方は認めたくない。ただ、自分が家族を持っていない二十代の頃だったらどうかと考えると、同様に薄情な行動を取っていたかもしれないな…とは思います。が、それと同時に、二郎が本当に愛したのは菜穂子ではなく、飛行機作りの夢だけだったのだろうな、とも思うわけです。


まあ、この作品自体、史実に基づいてはいるものの堀越二郎と堀辰雄、および堀辰雄の著作をミックスして作られたフィクションなので、この作中の堀越二郎像を語ることにあまり意味はありません。むしろ、この創作から「『美しい飛行機を作りたかった堀越二郎』を美しい映像で表現したかった宮崎駿」が見えてくるわけで。作中の二郎はかつての宮崎駿自身の投影なんだろうし、かつての自分の投影として庵野秀明に声を当てさせた、ということなんでしょう。この美しい映像は、そういう様々な思いの上澄みなんだと思います。
その意味では、自分の美しい部分だけを二郎に見せて死んでいった菜穂子の存在も、宮崎駿の願望そのものなのでしょう。

美しくない自分を閉じ込めて、美しい部分だけをできる限り美しく見せる。子どものための創作でなく、警鐘を鳴らすための汚れの表現でもなく、自分が信じる美しさを表現する。それをやり抜くには、汚れた物事を自分の内側に呑み込む覚悟が要る、と思います。それを貫いてこの作品に凝集させた宮崎監督はやはり突出したクリエイターなのでしょうが、それと同時に、それを実現しようと思ったらここまで上り詰めなくてはならないのか…と思うと、それはそれで複雑な気分でもあります。

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