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小説 孤独のグルメ 望郷編 [Kindle]

あの『孤独のグルメ』の小説版が 10 月に発売されていたので、Kindle で読んでみました。

壹岐真也 / 小説 孤独のグルメ 望郷編 [Kindle]

小説 孤独のグルメ 望郷編 (SPA!BOOKS)

原作コミックのほうは作画担当の谷口ジロー先生が亡くなってもう続編が出てくることもなくなってしっまいましたが、ドラマ以外にもこういう形で新しい作品が発表されるとは。ちなみに著者は 25 年前に編集者として『孤独のグルメ』の企画を立ち上げた壹岐真也氏。久住先生・谷口先生に加えもう一人の生みの親と言える存在です。

舞台は現代、井之頭五郎がさまざまなものを食べながら自分の過去を振り返る…というスタイルで描かれています。原作やドラマにも何度か登場した過去の恋人・小雪や仕事仲間の滝山もたびたび回想の中に出てきます。が、滝山は病気で入院中だったり(彼もカレイの煮付けなどの病院食をうまいと言うあたりが孤独のグルメらしい)、他にも登場人物の病気や死などにまつわるエピソードが多いのが、漫画版の連載開始から 25 年が経って五郎だけでなく原作者も年齢を重ねたことの重みとして感じられます。
また本作の「井之頭五郎」はコミック 1 巻におけるハードボイルドでやや扱いづらい(笑)キャラクターを引き継いでおり、ドラマ版の松重ゴローやその影響を受けたコミック 2 巻のゴローとは随分印象が違う。まあドラマ版も Season1 初期はコミック版を意識していたのが次第にコミカルなキャラに変わっていきましたが、この小説版の五郎はどこかの時点でコミック 2 巻やドラマ版のゴローとは違う時間軸を進んだパラレルワールド的な位置づけと理解するのが良いのでしょう。「オカアサン」や「オバアチャン」をカタカナで表記したり、回想シーンが割と寂しげだったりするのがコミック 1 巻のゴローっぽい割に、「腹が、減った!」の後は異常な行動力を発揮するくだりだけはドラマ版ゴローが憑依して見えるのがまた面白い。

本作でゴローが食べる料理は立ち食いのカレーだったり町中華のケチャップ焼肉だったり、極め付けはコンビニの見切り品 88 円のハンバーガーだったり、ドラマ版とはまるで似ても似つかないラインアップ。漫画版でももうちょっとマシなもの食べていたような…という感じですが、そこは谷口ジロー先生の超絶画力で実物以上にうまそうに見えていた効果もあるのでしょう。それが完全に活字だけになってしまうと、さすがに聖地巡礼する気にはなれません(笑。
ただ本作はゴローが食べておいしいかどうかではなく、その食事そのものや前後の行動を通じて過去を振り返るくだりに重点が置かれているのだと思います。そういう点では、注文のチョイスや食べる段取りにこだわる漫画版やドラマ版的な面白さとはちょっと方向性が違う。あくまで井之頭五郎という人物の過去を通じて彼の人間性を掘り下げる外伝あるいは公式二次創作、という感覚で読むのが良さそうです。

ドラマ Season8 のほうは今夜の放送が第 8 話、鳥取出張編。コミック 2 巻の再現シーンとして市役所のスラーメン回の実写化映像も挟み込まれる模様。鳥取編は漫画版の中でも特に回顧的なエピソードだったので、どのように映像化されるのか楽しみです。

コメント

  1. […] Bさんの感想も併せてどうぞ… […]

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