ここ数年レッドブルが得意としてきたメキシコ GP。フリー走行からレッドブル優勢でこのまま押し切るか?と思ったら予選では形勢が逆転しメルセデスがフロントロウ独占、読めなかった決勝は結果的にホンダ PU 勢が 1-3-4 フィニッシュ、という第四期ホンダ F1 史上最高のグランプリになりました。奇しくも 1964 年に第一期ホンダ F1 が初優勝を遂げたメキシコで第四期最終年に優勝。しかもフェルスタッペンが年間 9 勝を達成し、ホンダドライバーとして 1988 年のアイルトン・セナ(16 戦中 8 勝)を上回る最多勝記録というおまけつき。レース数の多い現代は三十年前とは直接比較できないとはいえ、ここまで 18 戦中 9 勝の 50% という勝率を考えても「セナに並んだ」というのは決して大げさではない話。チャンピオンシップの行方は最終戦まで分からないとはいえ、ホンダ山本 MD の「1988 年のように記憶に残るシーズンにしたい」という言葉は現実のものとなっています。一方で、一年の半分のレースで優勝してもまだチャンピオン確定できないという状況も、今シーズンの競争の厳しさを物語っています。
■マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
決勝スタート直後のターン 1 でメルセデスの 2 台をごぼう抜き、その後は後続との差を一気に広げ最後までハミルトンに影を踏ませませんでした。僚友ペレスのアシストも素晴らしかったですが、今シーズンの最速は紛れもなくフェルスタッペンであることを印象づける走り。フェルスタッペンのシーズン 9 勝に対してハミルトンは 5 勝なので、これでマックスがチャンピオンを取れなかったら何かの間違いという気さえします。
残り 4 レースでハミルトンとの 19pt という差はまだ安心できるものではありませんが、いよいよチャンピオンが見えてきた感があります。次のブラジルで勝てれば(次はスプリントレースもあるのでそれ次第ですが)25pt 以上の差、つまり一度リタイヤしても逆転されない状況になるわけで、できるだけ差を広げて最後の中東三連戦になだれ込みたいところ。
■セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)
グランプリウィナーかつトップチームのドライバーとなって母国に凱旋したペレスは間違いなくこのグランプリの中心人物でした。レースでもスタートからずっとハミルトンの後ろにつけ、ピット戦略が分かれた中盤以降はハミルトンよりもフレッシュなハードタイヤで素晴らしい追い上げ。残り数周でハミルトンに再度追いついてオーバーテイクを仕掛けようとしたものの、そこで時間切れ。残念ながらレッドブル・ホンダとして初めての 1-2 フィニッシュこそなりませんでしたが、内容・結果ともに素晴らしいレースだったと思います。ペレスはこの 3 レース全てで 3 位表彰台を獲得しており、シーズン終盤に来てほぼ完璧に RB16B をモノにできたと言えます。
一時はメルセデスに 30pt 以上の差をつけられていたコンストラクターズチャンピオンシップも今回の 1-3 フィニッシュでついに 1pt に縮まり、ここに来て振り出しに戻りました。コンストラクターズの行方は両チームのセカンドドライバーが握っていると言って良い状況ですが、ここ最近のペレスの安定感をみると十分に可能性があるように感じます。
■ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
今シーズンのガスリーは内容もリザルトも安定しすぎていて特に新しく書くことがないのですが(笑)、フェラーリとマクラーレンが速さを増してきている状況下で彼らを抑え、二強の次となる 4 位入賞というのは本当に素晴らしい。しかも 5 位のフェラーリを大きく引き離した結果ですからね。まあ今回ガスリーが獲得した 10pt のうち 3pt 分くらいは予選で牽引役としてトウ(スリップストリーム)を使わせた角田がもたらしたものと言えそうですが、マシンセットアップとレース戦略、チームプレイまでを全て成功させたアルファタウリ全体でつかみ取った結果だと思います。
■角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
今シーズンの成長がついに形になり始めている角田。今回もフリー走行から好調で、一時はガスリーを凌ぐタイムを記録します。とはいえ PU 交換によるグリッドペナルティが最初から決まっており、予選は「グリッド降格組の中では上位のポジションを狙いつつ、ガスリーの予選アタックをできる限り助ける」がミッションでした。そして見事にその仕事をやり遂げ、ガスリーを 5 番グリッドに送り込んで自身は 17 番手からスタートします。決勝はスタート直後の混乱の中、オコン/シューマッハーとスリーワイドになる形で逃げ場を失い、クラッシュしてそのままリタイヤ。不本意な結果にはなりましたが、フリー走行~予選と自分の仕事をきっちり果たし、ガスリーの 4 位フィニッシュに貢献したことは事実。内容としては悪くないものだったと思います。
アルファタウリはこれでコンストラクターズポイントでついにアルピーヌと同点に並びました。優勝回数の差でアルピーヌが上位ではありますが、後半戦のアルピーヌはアロンソが孤軍奮闘な状況で、角田がこのまま入賞圏の常連になれば逆転は十分に可能。シーズン終盤に失速するのがトロロッソ/アルファタウリの通例でしたが、今シーズンはこのまま最後まで勢いを失わずにいけそうです。
次のレースはすぐ今週末のブラジル。日本からの観戦は相変わらず辛い時間帯(決勝は日本時間の日曜 26:00~)ですが、頑張って応援しようと思います。
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