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ノイズ @TOHO シネマズ渋谷

こちらの邦画を観に行ってきました。

ノイズ

マンガ原作のサスペンス映画。私は原作のことは知らず、それよりも藤原竜也・松山ケンイチ・神木隆之介主演ということで主に演技方面に期待して劇場に足を運びました。藤原竜也と松山ケンイチの共演は『デスノート』の実写映画化以来 15 年ぶりということが話題になっているようですが、それぞれいい役者ですよね。藤原竜也は最近ではオーバーアクションでサイコパスを演じることが多いのが気になっていましたが、本作ではそういう役どころじゃなさそうなのもポイントでした。

過疎にあえぐ離島・猪狩島。そこで農業を営む泉圭太(藤原竜也)のイチジクが名産品となり、島は少しずつ活気を取り戻していく。そんな島にある日現れた元受刑者・小御坂の奇行から家族を守ろうとした泉は誤って小御坂を死なせてしまう。このままでは島の復興が暗礁に乗り上げてしまうと考えた泉は、幼馴染みの田辺純(松山ケンイチ)と新任の駐在警察官・守屋真一郎(神木隆之介)と共謀して事件の隠蔽を図るが、そこに県警が捜査に乗り出してきて…というストーリー。

最初に正当防衛を主張していればここまで大事にはならなかったはずなのに、嘘をついてしまったがために嘘で嘘を塗り固める形になってしまい、どんどん泥沼にはまっていきます。そしてまた新たな犠牲者が…事態は想像の範疇を超えて推移していき、ハラハラさせるストーリー。被害者や県警よりも泉や守屋に肩入れする作りになっているのと、映像的にも不安を煽るような構図や間の取り方になっているため、終始緊迫感が伴います。そこに主演の三人と脇を固める名バイプレイヤー陣が重厚感ある演技で見せてくれます。何より藤原竜也が普通の人目線で抑え気味の演技をしているのが良い。こういう藤原竜也を長らく見たかったんですよ。
個人的には、中盤の町長(余貴美子)と老人(柄本明)とのもみ合いのシーンは作中でも最も衝撃的なシーンの一つのはずなのに、何故かコミカルに見えて笑ってしまいました。大御所の演技力が変な方向に発揮されてしまったのか?なんだったんだあれは(褒めてます

本作のテーマは隠蔽事件そのものよりも「ムラ社会」のありようそのものではないでしょうか。ムラ社会に蔓延る無言の圧力。
地方の古い村落ではムラ自体が単体の社会として成り立っていて、そこに住む人々はある意味互いに依存し合いながら生きている。農村や漁村に代表されるようにそのムラの産業ごと浮くも沈むも一蓮托生、まさに運命共同体と言えます。表面的には団結力があるように見えても、一方でムラの内部では個人間の利害、見栄、体面といったものにより互いに牽制し合っている側面もあるし、誰かの言葉がまるで呪いのように他者の思考や行動を縛ることだってある。人の噂はあっという間にムラの中に広まるし、例えば田植えの季節になれば「隣は明日田植えするらしい、だからウチもやらないと」という競争意識なのかメンツ(他所がやっているのに自分とこがやっていないのは恥)なのか分からないような行動原理に基づいて生きていたりします。
そういうのが嫌で田舎を出てきた身としては、この映画には観ていてこちらの精神がすり減るようなリアリティを感じました…。最終的には島民全員が事実上の共犯者だった、という構造も含め。

『ノイズ』というタイトルもなかなか秀逸。当初は平和な島に入り込んだ危険因子という「ノイズ」を直接的に表現していたのが、話が進んでいくに従ってそれぞれの登場人物の思惑が見えてくると誰が誰にとっての「ノイズ」なのか…という視点が見えてくる。利害が一致した同志に見えていた関係も片側から見れば相手が「ノイズ」だったり。そういうのも含めてムラ社会的。

ただ最後のオチはちょっと唐突で、後から振り返れば伏線はちゃんとあったとはいえ蛇足だったのでは…という印象が否めません。アレがあることで作品のテーマが急に陳腐なものになってしまったような。
でも後で調べてみたところ、映画化にあたって原作コミックからは一部の設定や人物像、ストーリー展開などが大胆に改変されているようですね。それでなんだか取って付けたような感じだったのか…。

少し残念なところはありましたが、全体を通してはストーリーの軸は通っているし緊迫感ある演出も良いし、何より芝居が良い。私はけっこう面白かったです。原作のほうも読んでみたくなりました。

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