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SHOGUN 将軍 [Disney+]

年明け早々にゴールデン・グローブ賞のテレビドラマ部門を総ナメにした『SHOGUN 将軍』を視聴しました。

SHOGUN 将軍

SHOGUN

そろそろスター・ウォーズの新作ドラマ(スケルトン・クルー)の最終話が配信されるしまた Disney+ を一ヶ月だけ契約して一気見しよう、ついでに気になっていた SHOGUN も観てみようとしていたところに受賞のニュースが飛び込んできて、スケルトン・クルーよりも先にこっちを観るべきだと順番を入れ替えました(笑。

作品の舞台は安土桃山時代末期。太閤秀吉の死後、秀吉の家臣だった徳川家康と石田三成が覇権を争い、天下分け目の関ヶ原の戦い前夜までを描いています。ただし劇中での役名は徳川家康が「吉井虎永」、石田三成が「石堂和成」など架空の名前に置き換えられています。いちいち脳内で変換しながら観るのも面倒だし、なんでこんな改変を…と思ったのですが、シナリオも史実にそれなりにアレンジを加えてドラマチックに仕立ててあるから「フィクションであること」を明確にする意味では正しいやり方だということに途中から気がつきました。

タイトルからすると将軍=吉井虎永(家康)が主人公に見え、ゴールデン・グローブ賞でも虎永を演じた真田広之が主演賞を受賞していますが、実態は群像劇。カギを握る登場人物は虎永のほかに石堂(光成)、樫木藪重(本多正信)、落葉の方(淀君)、そして戸田鞠子(細川ガラシャ)、日本に漂着したイギリス人航海士ジョン・ブラックソーン/和名:按針(ウィリアム・アダムス/三浦按針)など多岐にわたります。むしろ物語はほぼ按針と鞠子を中心に展開されていると言え、Netflix 製作だけあって本作は「外国人の視点から見た戦国末期」という体裁になっています。日本人目線で見ると違和感があるかと思ったら、キリスト教布教初期におけるカトリックとプロテスタントの対立やイギリス/オランダとポルトガル/スペインの関係など今までの歴史観ではあまり取り沙汰されなかった切り口が見えて大変興味深い。毎日一話ずつゆっくり観るつもりでいたのが引き込まれ、三日で一気見してしまいました。

映像面でもアメリカのプロダクションが制作したとは思えないほど時代劇として違和感なし。聞くところによると主演の真田広之がプロデューサーを兼ね、さらにベルギー出身の日本史研究家フレデリック・クレインス博士と共に美術面や演出の監修を行ったとのこと。映像面だけでなく茶の湯や連歌といった当時の文化面も丁寧に描写されていたし、震災のシーンまであったことには驚きました。それらのものをふまえ、定期的に災害に見舞われる土地で生きる日本人の価値観、死生観、そこから生まれた武士道、といったものを印象的に表現した手法には感銘を受けましたね。これを作った人たち、もしかすると日本人以上に日本人のことを理解しているんじゃないかと思ったほど。ゴールデン・グローブ賞やエミー賞を受賞したのは映像や演技といった表面的なことではなくその精神性が評価された結果ではないでしょうか。

打ち首や切腹が当たり前だった侍の時代の中で、物語の当初は人の命が軽く見えるのに後半に行くに従って「人の死によって状況が動く、あるいは状況を動かすために命を『使う』」ことが見えてきます。それを自分の企図のため計算づくで利用しているのが虎永=家康という人物である、という構造になっていて、その巧妙さは個人的には『ハリー・ポッター』シリーズにおけるダンブルドアと重なって見えました。その底知れなさが「SHOGUN」というタイトルになっている所以なんだろうなあ。全て悟った上で自分の命を「使った」戸田広松=細川藤孝(西岡徳馬)の芝居には泣いた。

本作は反響のあまり既にシーズン 2・3 の製作が決定しているとのこと。藪重や鞠子といった主要人物がいない状態からのスタートにはやや不安もありますが、関ヶ原の合戦本編がいよいよ描かれるのであればさらにスケールの大きなシリーズになりそうで、今から楽しみです。

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