公開直後はタイミングが合わず観に行けなかったユーフォ最終楽章前編を観てきました。
二年前にテレビシリーズとして放送されたアニメーションの総集編的な劇場版です。総集編といってもシナリオの繋ぎに不自然な点はなく、吹奏楽部部長・黄前久美子の葛藤と成長を軸としたストーリーが流れるよううまく再構成されています。新規カットも多数あったようですが、シーン自体が追加された部分や大幅増量された演奏シーンを除けばテレビシリーズの補完やシーン同士の繋がりのために描き起こされたカットが主なようで、私が気づけた新規カットは多くはありませんでした。それくらい新規カットも馴染んで自然に繋がっていた印象。
京アニらしい美麗な映像については今さら言及するまでもありませんが(強いて言うならばその映像を大きなスクリーンで観られること自体が喜ばしいと思う)、本作を映画館で観る醍醐味はやはり音響。テレビ放送時は2chステレオだった音響が7.1chサラウンドになることで演奏シーンでは各楽器の配置が手に取るように分かり、特に最後の関西大会の演奏シーンは実際のホールで演奏を聴いているかのような感覚がありました。川崎チネチッタのLIVE ZOUNDはアンコン編の上映時よりも音質調整がうまくできているようで、変にライブ過ぎたりサブウーファーが鳴りすぎたりしない吹奏楽らしい音響がとても好印象。
ただ本作の上映について残念なのは、テレビで一度放送された作品の総集編だから動員が見込めないのか、ほとんどの映画館で100席に満たない小さなスクリーンでしか流されていないことですね。本作は音響の良い大きなハコで聴いてこそ活きると思うので、私はあえてチネチッタのLIVE ZOUND(500席超ある)を選びました。
演奏シーンは冒頭の新歓活動における星野源『恋』、サンフェスでの『大江戸捜査網のテーマ』、そして関西大会の『一年の詩 ~吹奏楽のための』が長い尺を取って描かれました。テレビシリーズではここまで時間を取らなかったので、ほぼ楽曲の全編にわたって聴けたのが素晴らしかった。
ただサンフェスって開催時期5月設定でしたよね。そこに『大江戸捜査網のテーマ』という変拍子盛り盛りの曲(4/4、6/8、3/4、5/4拍子が入り乱れる)をマーチング形式で新入生も一緒に練習してたと考えるとスパルタ過ぎる(笑)。ちなみに私はこの楽曲の元ネタである時代劇『大江戸捜査網』の再放送を幼少期によく観ていたので、この曲を聴くと脳内で「死して屍、拾う者なし」というナレーションが被ってきます(笑
主人公・黄前久美子は一・二年生編までは狂言回し的な役割が主で、本人が問題の当事者ではないことが多かったと思います。それがアンコン編で部長に就任してからは部内で発生する様々な問題の中心にいることになります。さらに三年生になってからは部長としての悩みに加えて一人の演奏者としての悩みまで襲いかかってくる。久美子視点で見ていた私としては三年生編は観ていて辛いことの方が多かった。もちろん演奏シーンや苦悩の果てにもたらされるカタルシスは素晴らしいものがありましたが、何度も繰り返し観るのは辛いな…というのがテレビシリーズの三年生編でした。
でもテレビシリーズ放送から二年が経ち、その間に我が家では次女が吹奏楽を始めたことで私も本作の見方が変わったことに映画館で気がつきました。
吹奏楽部ってどうしても女子比率が高くなる部活だから人間関係のあれこれが起きやすい。部活中心になりがちな学校生活、吹奏楽初心者や途中加入の部員の疎外感、「実力主義」だ「努力を認める」だと言ってみてもなんだかんだで組織の「和」や「空気」が優先される感覚、そして上級生が優しくしてくれていた時代から学年が上がるごとに厳しさに直面していく感じとか、子どもの目を通してではあるけどそういうものを実感した今では、作品が以前とはずいぶん違ったものに見える。テレビシリーズ当時は久美子視点で見て辛かったものが、今は群像劇として、その集団のありようを辛く感じる部分があります。映画のシナリオ的には久美子視点での辛さにフォーカスして描かれている(逆に黒江真由のキャラなんてテレビシリーズ以上に表面的にしか描いていない)のに、私はその周囲にあるものを感じてしまった。久美子にフォーカスしてはいても構造はやっぱり青春群像劇なんですよね。全員が目の前の目標に対して真剣だけど、各個人の信念や優先順位が少しずつ違うから起こる衝突。まあ、問題をややこしくしているのは肝心なことは何も説明しない滝先生と、その先生の方針に疑念を抱くことすら禁じている麗奈だと思うけど(笑
映画はテレビシリーズ全13話のうち10話相当の部分までをカバーしています。前編でここまで網羅すると思っていなかったから中身が濃い!逆に日常的なホッとするシーンが少なくて約2時間ずっと緊張感が張り詰めています。だからこそ要所要所に挟み込まれる演奏シーンが生きる。中でも関西大会での久美子の演説と、それに続く『一年の詩』の演奏シーンはテレビシリーズで一度観ていたとしても泣いちゃう。
9月に公開される後編は残り3話分を2時間の映画にするということだから大幅なシーン追加が予想されます。前編終盤の演出からすると、やはり全国大会でのソリスト選考の流れはテレビシリーズとは違ったものになってもおかしくはない。でもそうすると久美子自身が北宇治での三年間で得たもの自体が変わってしまいそうで、それはそれでどうなんだ?という気もします。どうなるにせよ、やっぱり最終楽章の本命は後編なんだよなあ。4ヶ月後の公開を今から楽しみにしています。
最後に、黄前久美子役の黒沢ともよさん、ご出産おめでとうございます。


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