上司の薦めで読んでみました。
三枝 匡 / V 字回復の経営 ――2 年で会社を変えられますか
「赤字事業を短期間でいかに建て直すか」にフォーカスした経営術の本。組織改革のメソドロジーをモデルケースで描いた書物で、ある企業の経営改革をサクセスストーリー的読み物としてまとめつつ、合間に要点を差し込む形で編集されているので、とても読みやすいです。
経営の本というと、ちょっと身構えなくては読めない小難しさを感じてしまいますが、この本が示す道は非常にシンプル。いかに社員の共感を得て、モチベーションを高めて改革を成功させるかに至るリーダー論と、そのためにはシンプルで明快なプロセスが示される必要があることを繰り返し述べています。
同じようなことでも、ロジックが通っていないと単なる浪花節になったり、体育会的な精神論だけに終始して実効は何もない・・・みたいなことは、ちょっと周りを見渡してみただけでも溢れかえっていますが、そういうケースは得てして「誰にでも納得できて実行可能な改革プランの提示」がないものです。
実話をもとにしたというモデルケースはちょっとあまりにもフィクション的展開すぎて、「できすぎ」と突っ込みたくなる部分も多少ありますが、大事なのはこの例で示されている考え方。この考え方をいかに自分の中で消化して、自分の会社に適用できるかという目線で読むと、たくさんのヒントが隠されています。あと、自分がいる組織の現状のダメさ加減も(汗。また、同時にそれを他人事ととらえるのではなくて、翻って自分自身に落ち度はなかったのか、を省みることができなければ、何も変えられないのも事実。
私は転職するときに、外部からの改革者のつもりで今の職場に飛び込んだつもりでしたが、いつの間にか単なる「状況の一部」となっていないか?正しいと信じていたことが、本当は全く間違っていたのではないか?
経済環境的には、ここ数年の不況なんて戯れ言に過ぎなかったくらい「未曾有の危機」が訪れている状況だから、もっと、あらゆることを根本から疑ってかかるくらいの気持ちで、根本的な改革を考える必要があるのだと思います。
いろんな企業で「お客様目線」が叫ばれる近年ですが、たぶんそれだけでは足りなくて、いち社員に至るまで、経営者視点と顧客視点の両方をもってひとつひとつの状況に対処する必要があるのだと思います。でも、口先だけでなく意識の根底にその考えを徹底させるには、多少のショック療法は免れないだろうなあ・・・。
この本に書かれていることは「至極まっとうなこと」ばかりですが、シンプルにわかりやすくまとまっているというだけで、ここまで多くの気づきを与えてくれる、という点では、ビジネスの世界に身を置く人間であれば一読して損はないと思います。
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