「俺は飯を食う時くらい、誰にも邪魔されず自由でいたい。独りで静かで豊かで…」
ドラマ『孤独のグルメ』配信オリジナル版の聖地巡礼、今回の目的地は第 4 話「食の流儀編」の舞台となった代々木上原です。
この回は『孤独のグルメ』にしては珍しく井之頭五郎が(単なる相席ではなく)人と食事をともにするシーンが登場します。独りで静かで豊かでを愛するゴローが家族でも友人でもない誰かと一緒に食べるのを喜ぶはずもないのですが、それが仕事相手とのランチミーティングとなれば尚更でしょう。仕事で昼食抜きになったりランチミーティングで味も良くわからないまま胃に入れるだけ、みたいな状況に陥ると覿面に機嫌が悪くなる私としては、この回のゴローの気持ちはめちゃくちゃ解る。いくら忙しくたって、ごはんの時間だけはゆっくり味わって食べたい。仕事熱心なのはいいが、飯を食いながらの打ち合わせは苦手だ。
さておき、お店は代々木上原駅を降りて「井ノ頭」通りを西に五分ほど歩いたところにありました。
外見からだとここに飲食店があるとはちょっと思えないところにひっそりと営業しているのがこの「社食堂」。
どうやらここ、建築デザイン会社の社食を一般客にも開放しているという営業形態のようです。だから「社食」+「食堂」で「社食堂」。
日替わり定食を中心に、「おかん料理」を公称するホッとできる食事を提供するコンセプトの模様。
へええ、いいじゃないか。時間もあるし、入れてくか。
入口から階段を降りた半地下が店舗。半分地下なわりに陽の光がたっぷりと入る明るく広々とした店内。
隅々まで手を抜かずお洒落にデザインされた店舗だけど、心なしかお客さんまでみんなオシャレに見える。
ちなみにお店の奥がそのままシームレスに事務所になっていて、ここの会社の人が普通に働いています。機密とか大丈夫なんだろうか。
「お好きな席にどうぞ」とのことだったので、迷うことなくゴロー席を選択。
カウンターに囲まれた厨房の中の様子がよく分かる。
お昼時ということもあって、見ているとオフィス側のテーブルにランチがせっせと運ばれていく様子が面白い。
そして社員さんが三々五々このテーブルに着席して順次ランチ。こんな社食見たことがない。
お茶が注がれたグラス、いかにも食堂という何の変哲もないコップなのにちゃんとお店のロゴが印刷されていてこだわりを感じます。
このお店全体として、素朴さとこだわりのバランスが絶妙。
そんなわけで、注文したのは日替わり肉定食。五郎が食べていたのは鶏チャーシューでしたが、この日の日替わりはポークソテー大根おろしソース。
お店の Facebook でも日替わりメニューの内容は予告されておらず、五郎と同一の料理を食べるのはちょっと至難の業です。
さてさて。
大根おろしソースのポークソテーということで見た目はずいぶんあっさりして見えるけど…おお、口に入れるとバターの香りが立ち上がってきてこれはうまい!大根おろしとの組み合わせも抜群だ。
やっぱり、見た目は素朴なようでいて、こだわって丁寧に作られていることが伝わってくる。なかなか満足感の高いポークソテーだ。
副菜三品がすごく頼もしい。
ブロッコリーのおひたし、コールスロー、里芋の煮物。
ゴローはナムル等の副菜を鶏チャーシューとともに白飯に載っけて即席ビビンパ丼を作成していたけど、この副菜とポークソテーはそれぞれ方向性が違うから混ぜるわけにはちょっといかないか。
でもそれぞれちゃんとうまい、ちゃんと機能している。家庭料理のようでいてちゃんと外食っぽさを兼ね備えているランチだ。
そしてサポーズカレー(山椒キーマカレー)。ゴローが追加注文して仕事相手に驚かれていたメニュー(笑。
劇中では実食するシーンはなかったけど、カレー好きとしてはどんな味がするのか絶対食べてみたかった一品。
もう、見た目からしてオシャレカフェみある。
山椒っていうから身構えていたけどそれほど痺れる感覚はなく、あくまで香り付け程度。
ちゃんとコクとスパイス感のあるキーマカレーで、私が好きな味。これ、おいしいです。
添えてあるのが福神漬けじゃなくてキュウリの漬物ってのも面白いし、ライム添えってのも良い。
上に乗ってる半熟ゆで玉子の見た目も含めて、全部が幸せな一皿。
食後のデザートは、これまたゴローが頼んでいた和風アフォガートに、セットドリンクでアイスコーヒーをつけてみました。
アフォガートってバニラアイスに飲み物(多くはエスプレッソコーヒー)をかけたイタリアンデザートだけど、どのへんが和風なのかと思ったらあんこと白玉が入ってる!
どんな味になるのかちょっと分からないけど、もう見るからに楽しみだ。
なるほど…こういう感じか。エスプレッソの苦味にあんこと白玉の甘みの組み合わせ、悪くない。悪くないどころかすごくイイ。
一口ごとに、気分は日本とイタリアを行ったり来たり。一品で二度おいしい。
いやー、おいしかった。最近の社員食堂、恐るべしだな。っていうか、今まで自分の勤務先にあった社員食堂とは全然違う。
毎日食べても飽きない優しく素朴な味なのに、ひとつひとつの仕事が丁寧なのが伝わってくる。こういう食堂で毎日食べたいし、こういう会社でちょっと働いてみたくなりました。
どんなに忙しくても、食う時はちゃんと美味しく食べるべし。
この定食がそう言ってる。
ごちそうさまでした。
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