「砂と空のほかは、何も見えなくなる」
ドラマ『孤独のグルメ Season10』の放送開始までいよいよあと一週間と迫りましたが、私はというとレギュラーシーズン中で唯一未巡礼だった Season8 第 8 話の巡礼のため鳥取県に来ています。やはり記念すべきドラマ化十周年シーズンが始まる前に過去の聖地はコンプリートしておかなくては。
鳥取といえばコミック『孤独のグルメ 2』の聖地巡礼で七年前に一度来ているのでした。
今回で二度目だけど、鳥取来訪の目的がいずれもこどグル聖地巡礼というのは我ながらどうなのよ(笑
Season8 第 8 話はドラマとしては異例で、回想シーンとしてではなく原作コミックの内容をほぼそのままドラマ化(+新たなお店探訪)した回でした。漫画の劇中そのままの流れで鳥取市役所のスラーメンを食べ、夜の懇親会で慣れないワインを飲まされた後ホテルで砂丘の不思議な夢を見る…という話。その市役所のスラーメンは七年前に一度巡礼済みですが、現在の鳥取市役所はというと
既に取り壊されています。実は Season8 第 8 話の撮影後ほどなくして鳥取市役所は新庁舎に移転し、それをもって食堂の営業も終了していたのでした(つまり、放送された時点で既に閉店していた)。
新庁舎は鳥取駅近く、イオン鳥取店の隣に建てられています。
いかにも市役所然としていた旧庁舎とは対照的にモダンでオシャレな建築。ちょっと官庁には見えないですよね。
この新庁舎には食堂はないのですが、代わりに庁舎内であの「すなば珈琲」が食堂代わりに営業しています。
県知事の「鳥取にはスタバはないけど砂場はある」という言葉をきっかけに誕生したローカルの喫茶店。余談ですが、現在はこの鳥取市役所新庁舎の向かいでスターバックスコーヒーが営業しているので、もう知事のダジャレも通用しなくなってしまいましたね。
メニュー。すなば珈琲らしいメニューもあるけど「日替り定食」「トンカツ定食」「きつねうどん」とか、いかにもお役所の食堂的メニューが混ざっているのが面白い。そして旧食堂のスラーメンはここでは少々アレンジされて「香素(かす)ラーメン」として提供されています。
店内はかなりあっさりしています。テーブルも椅子も質素なものですなば珈琲のあの落ち着ける雰囲気はあまりなく、サッと食べてすぐに出るという感じ。やはりあくまで市役所の食堂として運営されているということですね。
あくまで食堂だから入口の券売機で食券を買ったら厨房にオーダーが入り、出来上がったら番号が呼ばれるから自分で受け取りに行くスタイル。
提供口には当然のように天かすがボウルに入って置かれていて、香素ラーメンを頼んだ人はここから自由にぶっかけていってくださいということでしょう。
というわけで、香素ラーメンと水出しアイスコーヒーを注文しました。
雰囲気は違うけどせっかくすなば珈琲に来たんだからコーヒーは飲んでいきたい。巨大なグラスに飲みきれないくらいのアイスコーヒーが入ってくることで、やっぱりここはすなば珈琲だったんだと再認識します。
これが香素ラーメン。見た目の再現度は確かにけっこう高い。
澄んだスープにネギ、もやし、なると。海苔が一枚載ってくるのが旧市役所の素ラーメンとは違うところか。
では、いただきます。
スープは旧食堂のスラーメン同様にうどんだしベースのあっさり味。でもなんか香りとかコク成分を感じるような…と思ったら、どうやら香素ラーメン独自のアレンジとして牛骨スープをブレンドしているそうですね。鳥取のご当地ラーメンである牛骨ラーメンの要素を入れてみたということでしょう。確かに、動物性のダシがほぼないスラーメンに追加する要素としては正しい方向性だと思えます。
麺は中太ストレート。旧食堂のはもうちょい縮れていたような。
でもこれは別業者が運営しているにしては、旧食堂のスラーメンへのリスペクトが感じられるし、精神性も含めて正しく継承されている感。ラーメンのようでラーメンでない、おやつメン感が楽しい。
…しかし、今回の巡礼はこれだけでは終わりません。
旧市役所食堂のスラーメンが別の場所で復活提供されているということで、そちらにも足を運んできました。
山陰本線 湖山駅の近くにある自動車学校内の食堂でスラーメンが食べられるとのこと。
こちらはもともと旧市役所食堂を運営していた業者が入っているようで、正統なるスラーメンです。
建物の正面入口入ってすぐ右手にその食堂「コメドール」は営業しています。
自動車学校内の食堂という位置づけではあるものの、職員や教習生でなくても普通に利用できるようです。
スラーメン、看板メニュー扱い(笑)これはさすがに予想外。
市役所時代よりも少し値上がりしたとはいえ 350 円は安い。学生さんの味方ですね。
店内はいかにも食堂然としています。これに比べれば新市役所のすなば珈琲は多少は垢抜けてたな(笑
でも、旧市役所食堂のスラーメンを食べるなら、この雰囲気こそ正しい。
おいおい、めちゃくちゃ孤独のグルメ推しじゃないですか。
確かに鳥取は谷口ジロー先生の故郷でもあるし、それくらい大切にされているということでしょう。なんなら「鳥取砂丘コナン空港」から「鳥取砂丘ゴロー空港」に改名しても良いんですよ?(←
券売機、メニューは少なめでやっぱりスラーメンが主力扱い。
おにぎり二個付で ¥500 というセットもいいけど、唐揚げセットというのはスラーメンの動物性ダシ不足を補う意味でちょうど良いかも。あと季節限定の冷やしラーメンもちょっと気になる。
まあついさっき市役所で香素ラーメンを食べたところだし、この鳥取遠征はこれだけで終わりではないし、シンプルにスラーメン単品でいきます。
この調味料とかレンゲとか天かすが無造作に並べられたカウンター、これですよ。
そういえば、天かすたっぷり、コショウはドバドバかけるのがポイントっていってたよなぁ。
というわけで、正真正銘本物のスラーメン。
香素ラーメンもいい線いってたけど、こっちは丼まで旧市役所食堂そのまんま。聖地巡礼的にはこちらが真の「ご神体」と言えます。
では、改めましていただきます。
うん?ラーメンだ。
あっ、いや?うどんと言われればうどんにも転ぶような。
ラーメンであってラーメンでない、不思議な感覚。
香素ラーメンよりもあっさりしている分、うどんとの境界線が曖昧になって味覚が混乱する。
そして天かすの油で俺は煙に巻かれている。
中太の縮れ麺、やっぱりこうでなくちゃ。
地味だけど、これ好きだ。
食べているうちに天かすがふやけてどんどん麺に絡んで、ラーメンっぽさを醸し出そうとしてくる(笑
これ、本当に面白い食べ物だなあ…。
俺の脳、最後まで楽しくだまされてる。
一度は消滅したと思われていたスラーメンにこんなところで、こんな形で再会できるとは。
新旧のスラーメンを食べ比べられたのも楽しかった。鳥取人のスラーメン愛にリスペクト。
ごちそうさまでした。
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