東野圭吾原作の「ガリレオ」シリーズの映画化最新作を観てきました。
まさか今になって続編が映画化されるとは思っていませんでした。前作『真夏の方程式』から実に九年ぶりですからね。
主人公の湯川学を演じるのは引き続き福山雅治、前作からそれほど歳を取ったようには見えないのが恐ろしい。そして湯川の相棒は内海薫(柴咲コウ)。前作の岸谷美砂(吉高由里子)から戻された格好ですが、やっぱりこの作品にはキャラクター・配役ともにこっちのほうがやっぱりしっくりきますね。そして今回の真の主役と言えるのは湯川の旧友であり刑事の草薙(北村一輝)ではないでしょうか。従来のシリーズでは内海・岸谷の先輩としてサブキャラ的な扱いでしたが、原作小説では草薙が湯川の相棒を務めていました。本作ではその草薙が過去の自分が解決しきれなかった事件によって起きた新たな事件に苦悩することになります。始終飄々としたキャラクターである湯川と違って感情の波がある分、今回は草薙の視点で物語を見てしまいました。
東京のとある街(菊野市;架空の市)で行方不明となった少女が三年後に静岡の火災現場で死体となって発見された。その現場は容疑者とみられる男・蓮沼の実家であり、蓮沼はいったんは逮捕されるも黙秘を繰り返し、証拠不十分で釈放。少女の死で悲しみに暮れていた遺族と街の住民たちは、そのことを知って強く憤る。そして街の年に一度のお祭りである仮装パレードの日に、容疑者が菊野市内の潜伏先で遺体となって発見された――。
登場人物の多さ(とキャストの豪華さ)、彼らと湯川の関係性、遺族やその関係者への同情的な描き方から考えて、きっと本作は『オリエント急行殺人事件』のようなオチなのだろうと序盤に予想しました。そして実際にそうだったのですが、展開が早くて前半一時間くらいでその全容が見えてきてしまい、なんかおかしいぞ?と思っていたらそこから二回くらいどんでん返しのある意外な展開。まあ今さらオリエント急行の単純な二番煎じをやるわけもないからひねりは入れてくると思っていたけど、想像以上に状況がひっくり返っていくのには驚かされました。こういう二重、三重構造の事件を描かせると東野圭吾はうまいですね。映画としても伏線があからさますぎず、かといってスルーできないほどには引っかかりのある表現になっていたのがうまいと思いました。
ただ、ひっくり返すのはいいけど事件の真相にあたる部分が取って付けたようで唐突感があったのと、物理学者である湯川が事件に関わる理由がごく序盤に登場する蓮沼の殺害トリックの科学的解明にすぎないにも関わらず、結局最後まで事件に関与し続けること。前作『真夏の方程式』もそうでしたが、このシリーズは次第に物理や科学によるトリックに頼れなくなって人間ドラマに主軸を置くようになってきました。個人的には、そういうのを描くなら加賀恭一郎シリーズのほうが良いんじゃないかと思います。
とはいえ北村一輝を筆頭に、名優陣の芝居が見られただけでも観に行った甲斐はありました。まあ映像のスケールが大きい作品ではないので、配信されるのを待ってからでも良かったかなという気もしなくはないですが。
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