「誰も俺を止められない。猪突猛進食いだ」
年始以来回ってきた『孤独のグルメ 2021 大晦日スペシャル』の聖地巡礼もついにこれが最後。舞鶴港とれとれセンターから伊根舟屋群~天橋立というロケ地を経て、はるばる丹波篠山まで辿り着きました。そういえば、Season9 のパフェ回で「ハワイの友人と京都観光して、おまけに丹波篠山で栗拾い」という五郎の台詞があったけど、あれが大晦日スペシャルの伏線(京都から丹波篠山ロード)になっているとは放送当時は思ってもみなかったなあ。
それにしたって伊根からクルマで東京に向かうはずが、ナビも地図もなかったからといって兵庫に出るというのはいくらなんでも脚本の都合が過ぎるのでは(笑
なお、五郎は劇中ではミニクーパーに乗って各地を巡っていましたが、今回の私は関西在住の古くからの友人であるぐふとく!さんに京都舞鶴から丹波篠山までご同行いただきました。クルマまで出していただいてありがとうございました。ミニと違ってホンダ・フリードは快適だった(笑
ということで、こちらが今回の旅の最終目的地になります。
思いっきり山ん中。本当にこんなところに店があるの!?という、周囲には山と森と田んぼしかないようなロケーションで営業しているのがぼたん鍋専門の「奥栄」さん。
事前に電話予約したところ、夏は猪の旬じゃないからお客さんもほとんど来なくて開店休業状態だからとてもありがたい、と言っていただきました。確かに真夏に猪鍋ってイメージじゃないよなあ。
店内。
劇中では左奥のテーブルがゴロー席でしたが、ホールにはエアコンが設置されていないため夏場はここを使用しておらず、一日二組限定でエアコンが効く奥の座敷を使用しているとのこと。
ドラマには登場しなかった奥座敷に上がると、エアコンがバッチリ効いていてとても快適。長い道中を走ってきたから、冷えた部屋で座布団に腰を下ろすとたいそう落ち着きます。
七輪に炭。
山奥に佇む店で静かに七輪を囲む…なんかいいな。外ではミンミンゼミではなくヒグラシが鳴いているのも風情があっていい。都心の方だとミンミンゼミの喧しい声しか聞こえないからなあ。
このゆっくりした時間、大切にしたい。
我々をまず出迎えてくれたのは黒豆でした。丹波と言えば黒豆、黒豆と言えば丹波。
本場中の本場で食べる黒豆、ちょっと感動。でも黒豆の蜜煮なんて普段は正月くらいしか食べないから、お盆なのに強制的に正月気分を上書きされた。これが本当の「盆と正月が一緒に来た」というやつか。
まあ何はなくともビール。生ビールはないけど、こういう店なら瓶ビールこそ似合う。
天橋立から飲み物をガマンして来たからうまいのなんの。まさに乾いた五臓六腑にしみわたる。
お品書きは至ってシンプル。いのちゃんのすき焼き&しゃぶしゃぶもあるけど、でもここはぼたん鍋一択。
そういえば劇中で他のお客さんが頼んでた鹿のタタキをゴローが羨ましがるくだりがあったけど、そういうのはさすがに季節外れか。
注文を済ませるとさっそく土鍋が運ばれてきて、七輪にセットされます。
店員さんは劇中と同じように女将さんとお姉さんの二人。親子なんでしょうかね。
ちなみにお姉さんの方がタミヤのツインスター T シャツ着用だったのが最後まで気になってしょうがなかった(笑
こちらがぼたん鍋用の猪肉。盛り付けがちゃんと牡丹の花を象っているのが心憎い。
猪肉って食べたことがない…と思って振り返ってみたら、聖地巡礼で昔行った台湾の夜市でソーセージだけ食べたことがあったのでした。でもこういう形で肉らしい肉を食べるのは初めて。どんな味なんだろうか。
そして野菜盛り。二人前とは思えないボリューム。
しかも夏だから茄子が含まれているのが嬉しい。夏に鍋って食べることがないから、こういう形で茄子が入ってくるのも初めてのパターン。
ただ、鍋って煮えるまでに少し時間がかかるから、それまでの間に何かつまみたいと思ってこちらを追加注文してみました。
サイドメニューの猪焼肉!これが気になっていたのでした。
薄切りの猪肉は牛タンみたいにすぐ焼ける。
シンプルに塩胡椒を振っていただくと…うっほっほー、何コレ。臭くも固くもない。ただ、うまい。
猪といっても豚の親戚みたいなものだから、ちゃんと調理すれば似たような食感になるのか。
でも、これだけ脂身がついているのに舌の上でサッと融ける。豚肉より後味があっさりしていて、何枚でも食べられそうな気がしてくる。
これはやばい、うまい。
猪頭五郎、止まれない。
こんなにうまい猪焼肉を食べたら瓶ビールが足りないこと確定。
麦焼酎を追加して、あとは鍋と一緒にチビチビ飲ろうじゃないの。
猪焼肉を食べ終えたら再び鍋を火にかけて、ぼたん鍋の出来上がりを待とう。
追加の逸品・山の芋のとろろの準備にかかります。
この山芋、粘り気が超スゴイ。
とろろっていうよりもほぼ餅のような粘りと伸び。
これを適当な大きさに千切って、鍋に投入していきます。
とろろを切るときの感触で、昔実家で餅つきをしたときのことを唐突に思い出しました。妙な郷愁があるな、この鍋。
程良いところでぼたん鍋の完成。
お店の方曰く「猪肉は炊けば炊くほど柔らかくなる」とのことで、焦らずにじっくり煮込んでみました。
鍋から立ち上る湯気と鍋の匂い。はぁぁ…アツアツ、最高。
気がつけば、鼻息がイノシシ。
薬味はいろいろあるけど、この鍋に使うのは七味。
ちょい七味をかけるだけで味に広がりが出る。
ぅおお~っ!この鍋、たまらん。
猪肉、やっぱりイメージとは対照的にあっさりしている。自己主張よりも、汁の旨味を受け止めるような肉のありよう。
そしてこの汁、感動的。
味噌が濃厚なんだけど、同時にすごいスッキリしてる。
この味なら永遠に食べ続けていられそうな飽きの来なさ。すべてがちょうど良い。
山芋、どうだ?
やっぱりこの山芋、とろろよりも餅に近い食感。すいとんみたいだ。
猪肉と野菜の旨味に味噌味の汁を吸った山芋、無敵。
鍋を食べる手が、口が、止まらない。
食べるほどに、俺の中の野性が解き放たれていく。
鍋をだいたい食べ終えたところで、別料金の〆のごはん。
大きめの茶碗に盛られた白米、きゅうりの漬物に加えて実山椒というのがいい。
そして鍋の残り汁には生卵を落として半熟にしていきます。
へ~、雑炊じゃないんだ。
でも、この茶色と白のコントラストが改めて食欲をそそる。
汁が一通り煮立ったら完成、猪丼のつゆだく。
まさに鍋の旨味の集大成。おいしさの全部がここに詰まってる。実山椒の刺激もいいアクセントになっている。
おそるべし、イノシシ T・K・G。
あぁ…幸せすぎる。
ここまで来たなら、最後も丹波篠山っぽいもので終えたい。
ということでメニューから見出したのが、この黒豆アイス。
どんなのが出てくるかと思ったら既製品だったけど、これはこれでアリ。
本当に黒豆がそのまま入ってる。
味の方は、黒豆っていうよりラムレーズンアイスに近い。でも中に入ってる黒豆を食べてみると、確かに黒豆アイス。
これは面白い味、ちょっと気に入った。
ちなみに黒豆もなかアイスのほうはもなか自体に「もなか」と力強く書かれた、なかなか自己主張の強いデザート。
猪に黒豆、丹波の味をしかといただきました。
ホールの壁には埋め尽くさんばかりの勢いで数多くのサイン色紙が飾られていました。
その中にはもちろん松重さんと、女将役の梅沢昌代さんのサインも。
撮影は昨年 12/1 に行われたようですね。
ということは、12 月上旬に近畿地方の四軒(ここと舞鶴・松阪・伊勢)をまとめて撮影したということですか。これは相当ハードスケジュールだったに違いない…松重さん、スタッフの皆さんお疲れさまでした。
店を出る頃には夜もとっぷりと暮れ、あたりは真っ暗になっていました。
看板以外の街頭もほとんどなかったのには驚いた。
結局最後まで他のお客さんはおらず、本当に貸切状態。
女将さん、お姉さん、たった二人のために営業してくださってありがとうございました。
あ~、うまかった。
大満腹の大満足。
ごちそうさまでした。
■ドラマ『孤独のグルメ 2021 大晦日スペシャル』聖地巡礼エントリーまとめ
1. 京都府舞鶴市 舞鶴港の市場メシ
2. 兵庫県丹波篠山市のぼたん鍋
3. 三重県松阪市の鶏焼肉
4. 三重県伊勢市の伊勢うどん
5. 静岡県浜松市の二色まぶしと牡蠣カバ丼
6. 静岡県富士宮市朝霧高原の焼き芋
7. 東京都墨田区吾妻橋の焼き肉ラーメン
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