コザに行った際、こちらのお店でおでんをいただいてきました。
コザ地区にある唯一のおでん屋とのことです。かなりの老舗らしく、「おばあ」と呼びたくなるおかみさんが二人で営業している模様。
ライヴハウスだったりアメリカンなダイナーだったり昭和な居酒屋だったりが混在するコザにあって、ひときわ渋さを醸し出している店舗です。
では、いってみましょう。
それほど広いわけではない店内はカウンター中心で、その背後に十人くらい座れそうな小上がりもあります。いかにも昔からの馴染み客がカウンターでゆったり飲んでいそうな店で、あまり一見さんが入るようなところではないのかも。でもおかみさんからは誰でも温かく迎え入れてくれる包容力を感じます。
このおでん鍋。具材が沈んでいてよく見えないけれど、このよく煮詰まった出汁の茶色を見るだけでおいしいことが分かる。
メニュー。一品料理とか小鉢とかいったものは一切なく、とにかくおでんと飲み物だけ。そのストイックさが逆にいい。
とうふ、大根、こんにゃく…というおでんの定番タネの前にまず「てびち」が書かれているのがいかにも沖縄らしい。
そして末尾の「おでんそば」ってどんなものなのか猛烈に気になる。何も注文しないうちから〆はこれにすることに決定。
まあとりあえず駆けつけ一本、オリオンの瓶ビールでしょ。
蒸し暑い外を歩いてきたところだから、この軽い南国ビールがスーッと胃袋に吸い込まれていく。
おでん、まず第一弾。
手前からこんにゃく、玉子、大根、昆布、てびち。富山人的にはおでんのタネの選択肢に昆布が含まれてると嬉しくなっちゃいます。
出汁の色がかなり濃いから八丁味噌おでんっぽい強めの味を想像していたら、意外にも味付けはあっさり。塩味よりもコク主体でしみじみする味。これが沖縄のおばあが作るおでんか。
てびち(豚足)のおでんなんて初めて。
骨張った豚足の隙間のコラーゲン質に出汁がしみっしみに染みて超うまい。ああ、てびちの脂分があるから出汁自体はあっさりめなのか。これを食べてようやく理解した。
うわあ…この大根たち、実にいい色と照りをしてる。
今食べたところだけど、こんなの見せられたらおかわりしたくなってきちゃうじゃないの。
ここは少し気持ちを落ち着けるべく、残波(泡盛)のさんぴん茶割り。
さんぴん茶の香りが泡盛にかき消されないように、あらかじめ泡盛を軽く水割りにした上でさんぴん茶を注いでくれるこだわりが嬉しい。
というわけで追加のタネ。じゃがいもととうふにしてみました。とうふ、って木綿豆腐かと思ったら厚揚げのことだったんですね。
じゃがいもはホックホクなところに出汁がよく染みて。厚揚げはもう期待通りな具合に出汁がよく染みて、どっちも大満足のおいしさ。
さらにウインナーも。こういうおでんに入ってるウインナー、実はけっこう好き。
他のタネ用の和からしとは別に、ウインナー用にマスタードをちゃあんと出してくれるのがありがたい。ウインナーと和からしだとちょっと違うんだよなあ。
こちらは小上がりのテーブル席に運ばれていった大皿。みんなで食べやすいようにそれぞれのタネに包丁を入れておいてくれるおかみさんの心配りよ。
ちなみにこの野菜が妙においしそうだったから目を奪われていたら、こちらにもサービスで少しいただいてしまいました。この小松菜とキャベツ、鍋でずっと煮込まれているんじゃなくて出す直前にサッと出汁に通す程度だから程良くシャキシャキでおいしい。
そろそろ〆の「おでんそば」いっときますか。
注文するとおもむろに麺がおでん鍋の中で煮られ始めます。おお、そういうやつでしたか。それも麺は沖縄そば。ここは沖縄なんだからそりゃそうか。
二人前はありそうなたっぷりのおでんそば。具材は先ほどの小松菜。
見た目よりあっさり味、うまみ強めのおでん出汁をよく吸った沖縄そば、めちゃくちゃうまいじゃないですか。でもこれだけだと単調になりそうなところにシャキシャキの小松菜がバイプレーヤーとしていい働きをしている。
〆の沖縄おでんそば、これはいいものを知った。
ちなみにこの店のおでんはテイクアウトにも対応しているようで、↑は他のお客さんがお土産に頼んでいたものです。
いやあ、人情味あふれるいい店だった。おでんの味にもその人情が染みこんでいるかのようだ。
実は先日の沖縄旅の初日夜がこの店でした。初めての沖縄で、最初の食事がソーキそばでもゴーヤーチャンプルでもなくコザのおでんというのは、我ながらいくらなんでもマニアックだったのではと思わなくもない(笑。でもこんなディープな沖縄の洗礼を浴びられたなら、これはこれで悪くない。
沖縄に来たらまた立ち寄りたいお店になりました。
ごちそうさまでした。
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