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室井慎次 敗れざる者 @新宿バルト 9

『踊る大捜査線』シリーズの最新作を観てきました。

室井慎次 敗れざる者

室井慎次 敗れざる者

2012 年の『THE FINAL』で完結したはずじゃなかったの?とは思いましたが、テレビシリーズからずっとリアルタイムで観てきた身としてはこれは観ずにはいられません。また主人公がいつもの青島俊作(織田裕二)ではなく警察を退職した室井慎次(柳葉敏郎)というのも興味を引かれた点。

青島との約束だった警察改革のため出世をし、時間がかかりながらも少しずつ組織を変えていっていた室井も警察内での権力闘争に敗れ、志半ばにして退職。引退後は故郷の秋田に戻り、犯罪の被害者・加害者の子息の里親として半ば自給自足の生活を始めていた。ある日、室井の住む古民家の近くで死体が発見される。それはかつて室井や青島が逮捕した事件の犯人だったことが判明し、捜査本部が設置されて所轄だけでなく警視庁からも室井のかつての同僚や部下を含むメンバーが集まってくる。そんな折、室井の家に一人の少女が転がり込んでくる。実は彼女もまた室井がかつて担当した事件で逮捕した猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)が獄中で産んだ娘だった――。

ということで、またしても日向真奈美絡みの事件。彼女の初登場は最初の劇場版(THE MOVIE)で、その後 THE MOVIE 3 でも黒幕として再登場。本作では直接は登場しないとはいえ(後編では出てくるのかも)、いくらなんでも日向真奈美を擦りすぎでは。確かにテレビドラマを含むシリーズ中で最もインパクトある犯人だったのは事実だし、日向真奈美ならば獄中出産くらいしそうだけど。まあ、物語としては警察を辞めた室井が全く新規の事件に関与するよりも過去の因縁が追いかけてくる展開の方が説得力はありますかね。

私はあまり事前情報を仕入れずにプレーンな状態で観に行ったのですが、今回の二つの映画がそれぞれ『敗れざる者』『生き続ける者』と異なるタイトルになっていたから流れとしては二作で大きな物語を描きつつも各作品で一つずつの事件を扱うのだろう、と想像していました。そしたら今回の二時間で全然事件が解決しないどころか事態が進展したところで「後編に続く」!それなら最初から前編・後編で良かったのでは。前編にあたる本作はこれまでの振り返りをしつつ事件の背景紹介と人間関係にほぼ尺を使い切っていて、刑事ものとして単体で評価できる作品ではありません。強いて挙げるならば室井の養子・貴仁(タカ)の芝居がすごく心を打った点かな。殺人事件の被害者の息子で、犯人やその弁護士と直接対峙する難しい役どころながら見事な演技でした。

今作のテーマはおそらく「犯罪者の素質は遺伝するのか」「社会は犯罪の加害者・被害者の子どもをどう扱うべきか」といったところでしょうか。室井が犯罪の加害者・被害者両方の子ども(それぞれ別の事件ではある)の里親になったことと、そこに湾岸署史上最悪の犯罪者の娘が転がり込んでくるわけですから。日向真奈美の娘・杏(福本莉子)がまさに真奈美を彷彿とさせる怪演で、後編で何か大きな事件を起こしそうな気配を醸し出しています。でも私は前編での杏の演出手法は単なるミスリードで、後編の後半では彼女の潔白が描かれるんじゃないかと予想しています。

一方で少し気になったのはシリアスとコミカルのバランス。室井が主人公なだけあって『踊る』本編よりも静かでシリアスな作風なのですが、青島や湾岸署の面々がほぼ出てこない代わりに所轄の若手警官が室井にウザ絡みをしてきます。制作サイド的には息抜きのコメディシーンという位置づけなんだろうけど観ててただダルいだけだったなあ。これが真下(ユースケ・サンタマリア)のようにシリーズ内で確立されたキャラであれば良い息抜きのシーンになったのでしょうが。

本作は基本的にこれまでの『踊る大捜査線』シリーズを観たことがある前提で作られているから今回が初めてという人には向いていません。でも過去作をある程度観たことがあれば、これまでの主要な事件や登場人物に関しては言及されるたびに回想シーンがカットインされる親切設計だから旧作を見返さなくても映画館に行っちゃって大丈夫です(笑)。個人的には、和久さん(故・いかりや長介)の回想シーンが出てくるたびに泣く。
後編では旧作のキャラクターがどれくらい出てきてくれるでしょうね。キャスト同士の不仲説がある青島は難しいだろうけど、せめて恩田すみれ(深津絵里)は出てくれないかなあ。あと爆発物処理班の眉田(松重豊)。

最後まで観ないと面白かったかどうか判断できないので、来月の後編も見に行く予定。

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