「三段重ね。こっちのそばはこうなんだな」
ドラマ『それぞれの孤独のグルメ』聖地巡礼のため島根県出雲市に遠征してきました。関東近郊ならまだしも遠方への聖地巡礼は気合いも準備も必要なのですが、以前そう言っている間に COVID-19 が来て四国や鳥取への巡礼に数年待つことになったから今回は勢い任せで旅程を組んでみました。
私にとってはこれが初島根。人生において訪れることがあるかどうか分からない県の一つというイメージを持っていた場所に、こういう形で来ることになろうとは。
さて、今回の旅の主目的は餃子を食べることですが、その前に五郎が訪れていたこちらのお店に立ち寄りました。
出雲大社の近く(正面入口から徒歩十分ほど)にある蕎麦店です。「出雲そば」ってこの地方の名物らしいのですが、私は今回初めて知りました。蕎麦って東日本の文化だと思ってた…。聞くところによると信州の戸隠そば、岩手のわんこそばに並ぶ日本三大そばの一つらしいですね。
この「荒木屋」は江戸時代から 220 年続く、この周辺では一番の老舗とのこと。店先には入店待ち用の長椅子が並べられており、日によっては大行列ができることを示唆しています。
入口付近には順番待ち用の記名帳が置かれていて、11:00 開店のところ私は平日 9:30 に来たら一番乗りでした。そして 10:45 頃に戻ってきて店前で待つか…と思っていたら店員さんに「中でお待ちください」と声をかけていただきました。なんと中待合まであるとは。
待合室には大量の有名人のサインが飾られていました(↑の写真はごく一部)。『孤独のグルメ』に限らずこれまでに多数のテレビや媒体に取り上げられ、多くの芸能人が訪れたということです。さすが老舗中の老舗だけのことはある。
店内。お客さんはまずテーブル席から順に案内されるようで、先頭の私は一番手前側のテーブルに通されました。
五郎が座っていたのは小上がりの奥、階段状の箪笥があるあたりでしたよね。
メニュー。冷たいそばは基本的に「割子(丸い漆器)を何段重ねて、具材をどうするか」がポイントのようです。
ゴローが食べていたのは割子三代そばでしたね。通常の割子そばと段数は同じだけど具材が変わるっぽい。「何段」でも「何台」でもなく「何代」と数えるのは、出雲大社の御利益である縁結びの結果、子孫が何代続くかに引っ掛けているということですかね。
注文を済ませるとまずそばつゆと薬味が運ばれてきました。
つゆ差しの蓋が和紙、というのがなんだか面白い。
そばが出てくるまでの間に何かつつきたいと思ってのやきかまぼこを注文してみました。メニューには六切れ ¥720 と書かれていましたが一切れ単位で注文できます。
あご(飛び魚)で作られた味濃いめのかまぼこ。っていうか見た目といい味といい、極太のちくわと言った方が実態に近い。
パリッとした表面の香ばしさもまた良し。これはなんか日本酒が欲しくなる…けど飲んだら歯止めが利かなくなりそうで、後のことも考えてここはグッと堪える。
ここで割子三代そばがきましたよ。
ほー、こういう形で出てくるのか。今までに食べたことがないスタイルの蕎麦。割子が重なってる感じがどことなくだるま落としを彷彿とさせる。
そして小さな茶碗に注がれていたのはお茶ではなくそば湯。普通はつけ汁として使うそばつゆの器にそば湯を注いで飲むところ、割子そばは蕎麦の器につゆを直接かけるから、最後にそのつゆを逆にそば湯に注いで飲む、ということらしい。
割子三代そば、一段目は生卵と白胡麻。
朱い器の中央に卵黄が鎮座する蕎麦、見るからにうまそうだ。
いただきます。
蕎麦の上に薬味を散らしたら、その上からつゆをののじを書くように…いつもとは違う蕎麦の食べ方、面白い。
そして、濃厚な卵と一緒にいただく出雲そば、うまい。
一段目は一瞬にしてなくなってしまった。
そしたら割子をパカッと持ち上げて、二段目はとろろか。
こうするんだよな。一段目に残ってたつゆを二段目にかけて、さらに追いつゆをかける。
軽く泡立つほどよく練られたとろろとさっきの卵が混じり合って、一段目よりももっとおいしくなった。
蕎麦がとろろに包まれるようにツルツルと入っていくのどごしが心地良い。
三段目はプレーンな蕎麦。
これまで育ててきたそばつゆをこの三段目に注いで、みたび追いつゆをかけていただきます。
最後が一番うまい。
これまでの積み重ねで、うまさ三段増し。
ラストは育てに育てたつゆをそば湯に注いで大団円。
いやー、伝統の出雲そば、おいしかった。
店内をちょっと探してみたけど松重さんのサインは見当たりませんでした。
それ以上に国民的大スターのサインが多数掲示されていて、これらを差し置いてまでは飾られないかー(笑
さておき、関東で食べるのとは全然違う蕎麦体験、なかなか楽しい。こんな蕎麦があるとは知らなかったなー。
なんだかこの調子で戸隠と岩手にも蕎麦を食べに行きたくなってきたかも。
ごちそうさまでした。
さてと…。
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