フェルスタッペン逃げ切りV。サインツJr.が古豪に4年ぶり表彰台……角田裕毅は昇格後最上位も”因縁”抜けず｜F1アゼルバイジャンGP決勝
世界遺産でもある旧市街の狭い道を駆けるF1マシン、超高速区間と曲がりくねったテクニカルセクションとの組み合わせ、クラッシュが多く荒れた展開になりがちな市街地コース…と見どころ満載のアゼルバイジャンGP。今回は今シーズン初めてマクラーレンの存在感の薄い、珍しいレース展開となりました。
■マクラーレン
フリー走行からいまいちパッとせず、予選ではQ3序盤にピアストリがクラッシュして脱落。ノリスもまさかのP7に沈む、など勢いがありませんでした。特に予選Q3は雨や突風の難しいコンディションだったとはいえピアストリがクラッシュするとはね。
ピアストリはさらに決勝でも良いところがなく、スタート時にフライングしかけたことでエンジンストールさせてしまい出遅れ、その後1周目にコーナーを曲がりきれずクラッシュしてリタイヤ。常に冷静沈着で感情を表に出すことが少ないピアストリにしては珍しいですが、さすがにそろそろチャンピオンシップのプレッシャーがかかり始めたということでしょうか。おそらくマクラーレンのクルマは上位を走っている間は滅法速いけど、中段でタービュランスまみれたり突風が発生するとダウンフォースが安定しない、という他チームと同じような問題を抱えているのだと推測します。ピアストリの二度のクラッシュもそこに起因しているのではないでしょうか。
ここでピアストリが優勝、悪くても表彰台に立てればチャンピオンシップ上の差を一気に詰められるチャンス…でしたがうまくいかず。コース上でオーバーテイクできるだけのスピードはなく、アンダーカットを狙ってもタイヤ交換に時間を要して失敗、という悪い方向に歯車が回る典型的なレースという印象でした。ノリス自身もスタートで出遅れたりしていたから一概にクルマやチームの責任ではないとはいえ、千載一遇のチャンスで噛み合わないのがノリスだなあと。気がつけばフェルスタッペンがジワジワとチャンピオンシップを詰めてきていて、マクラーレンはどこかでナンバーワンドライバーを決めざるを得ない状況に至るのではないかと思っています。
■レッドブル
マックス・フェルスタッペンがまさかの二戦連続ポールトゥウィン。今回はマクラーレンが後ろに沈んでいたおかげでモンツァ以上に楽勝に見えました。ここ数戦でクルマが改善してきたとはいえ、この絞り出し力はさすがチャンピオンとしか言いようがありません。ピアストリとはまだ69pt差あって自力での逆転が不可能な状況とはいえ、モメンタム的にはもはやマクラーレンよりもフェルスタッペンに分があるのではとさえ感じるレースでした。ピアストリには届かなかったとしてもノリスを逆転して選手権2位、は意外と射程圏に入っているのかもしれません。
角田はようやくマックス車との差分が縮まり、角田自身のマシン理解が進んだこともあってとてもまとまりの良い週末でした。特にトラブルにもアクシデントにも巻き込まれず、ピットインのたびにポジションを落とすような謎戦略もないクリーンな週末を過ごせたのはレッドブル昇格以来初めてではないでしょうか。
マクラーレンやフェラーリの低迷に救われたとはいえ予選P6。レースでは中盤以降はP3からポジションを落としてきたローソンとの争いで、終盤はずっとDRS圏内にいながらもオーバーテイクは叶わず。まあローソンとは過去に何度か接触しているからリスクは取れないだろうし、ストレートスピードではVCARBの方が上だからやむなしか。と思っていたら、角田自身がインタビューで「チャレンジすれば抜けた可能性はあるけどローソンと二台揃ってノリスに抜かれる可能性があったから無理しなかった」と発言しているようですね。確かに、チームとしてフェルスタッペンとローソン／ノリスとのポイント差を削ることを考えたらローソンの後ろで得られるDRSをノリスへのディフェンスに使った方が効果的。本人がその戦略に納得していて、かつこの週末全体に手応えを感じられているならばそれで十分です。
本当は、角田がRBRに昇格したら毎レースこれくらいのポジションを当たり前に走るようになって、時々表彰台を争うことができると期待していました。実際にはチームの方針やクルマの問題もあってそうはいかなかったわけですが、この週末の状況を見てようやく「レッドブルの角田」としてのスタートラインに立つことができたのではないでしょうか。角田が実力を示すことができるレースはもう残り少なくなってきましたが、次戦以降も少なくとも今回のようなレースを続けてより高いリザルトを目指してほしい。マクラーレンやフェラーリが復調してきたらそう簡単にはいかないでしょうが、とても希望がもてるグランプリだったことは確かだと思います。
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