本日公開のSF大作映画を観てきました。
「ネタバレを踏む前に読んだ方が良い」とまで言われたSFベストセラー小説の映画化。著者のアンディ・ウィアーは『THE MARTIAN(オデッセイ)』の作者でもあります。私は小説を読むにしても映画を観てからにしようと思ってガマンしていたら、他作品を観に行った映画館で予告編を見てしまいました。まあ予告のネタバレは最低限ではあったけどできればそれも避けたかった。
というわけで、原作未読でこれから映画館に行こうという方はここから先は読まずにまず観て来てください。
<ここからネタバレあり>
主人公は昏睡状態から目覚めた記憶喪失の男。少しずつ取り戻した記憶により、そこが宇宙船の中であること、同乗するクルーは全員死亡していること、自分がグレースという名の科学者であること、そして地球の危機を救うための宇宙探索の旅に出ていることを思い出す。恒星のエネルギーを吸収して赤外線を放出する単細胞生物「アストロファージ」によって太陽が死に、その影響で地球が寒冷化して生物が生存できなくなる未来を防ぐため、グレースはアストロファージの影響を受けていない恒星「タウ・セチ」の調査に向かったのだった。目的地の近くで遭遇した謎の宇宙船には異星人が乗っており、彼もグレース同様に仲間を喪って独りで宇宙を彷徨っていた。グレースはその異星人に「ロッキー」と名付け、何とかしてコミュニケーションを図りながらお互いの母星を守るための共同ミッションを開始する…という話。
結論から言うとめちゃくちゃ面白かったです。
「地球の危機を救うハリウッド超大作SF映画」というと、主人公が次々に襲い来る困難に立ち向かいながら目的地に到達し、最後は主要キャラ誰かの自己犠牲によって地球は救われた…という話がド定番で、本作もそういうオチなんじゃないかと思っていました。が、実際にはむしろ自己犠牲へのアンチテーゼ全開だったのが意外だったし、だからこそ良かった。それに様々な困難に見舞われはするけどハラハラはありながらも描き方がコミカルで、緊迫する場面なのに思わず吹き出してしまうような展開が多くて終始リラックスして鑑賞できました。苦境にある中でもポジティブさを感じていられるこの手触り、確かに『THE MARTIAN』の作者っぽい。
本作は基本的にグレースとロッキーによるバディものとして描かれています。物語開始時点で宇宙船にいるグレースの仲間は全員死んでいるわけで他の地球人は登場せず、ほぼグレースとロッキーとのやりとりと物語の経緯を後追いで説明する回想シーン(それがめちゃくちゃ重要なわけですが)という構成になっています。姿形も意思疎通の手段もまるで違う二人がコミュニケーションを確立し、信頼関係を築いていく経緯が実に面白い。宇宙での異星体との遭遇が戦闘に発展しなかったのは、お互いが科学者とエンジニアという探求者であり、宇宙空間でずっと孤独を抱えていたから、なのでしょう。二人の別れのシーンには思わず涙が出ました。あんな岩の塊みたいな異星人から感情を感じて涙させられるとは。
最後は二人が無事にミッションを完遂して大団円…と思ったらそこからのどんでん返し。あまりに予想しなかった展開だったけどそれも含めて良かったです。全体のための自己犠牲へのアンチテーゼと特定の誰かへの献身がこういう形で同居する話だったとは。
また映像や演出面では『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』『インターステラー』などSF界の名作が積み上げてきたものの上に見事に立った作風で素晴らしかったです。こういう地球上では見ることができない光景を観るためにSF映画を観ているとさえ言える。
逆に物足りなかった点でいえばSF的な掘り下げが少なかったことでしょうか。このままだと地球に生物が棲めなくなってしまう危機感がイマイチ伝わってこなかったことと(その点では『インターステラー』の導入は巧かったと思う)、宇宙でのグレースの困難や発見はもっと深掘りしてほしかった。その分の尺をグレースとロッキーの関係性に割いていた印象です。ただその危機感の薄さはそのままグレースが抱いていた使命に対する疑念に繋がるし、マジメにSFを全部やったら3時間あっても終わらなかったはずだから、映画としてはバディものにまとめたのは良いバランスだったとも思います。近年、作品世界の重大な問題は横に置いといてメインキャラの関係性を軸にした話は日本のアニメ作品ではよく見かけるけど、ハリウッドのSFでこういうテイストの映画が作られるとは良い意味で意外でした。
映画は映画でものすごく良かったので、掘り下げたい部分は小説で補完すべしということですかね。原作読んでみるかー。


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