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世界で勝てるデジタル家電

西田 宗千佳 / メイドインジャパンと iPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電

記憶に新しいところではこの春に『iPad VS. キンドル』を出版したジャーナリスト・西田宗千佳氏の最新の著作が発売されたので、読んでみました。

本著もキャッチーなタイトルではありますが、多面的でフラットな業界分析はさすがの一言。同じく最近出版された、本田雅一氏の『3D 世界規格を作れ!』とは扱っているテーマこそ違え、どこかのメーカーだけに肩入れすることなく(肩入れしているとしたら日本の電機メーカー全てに)、世界における日本の電機産業の現状を的確に分析した上で応援している、という点で非常に似ていると感じました。

内容的にはタイトルどおり「iPad/iPhone は何がすごいのか」をビジネス/設計/プラットフォーム/開発思想それぞれの面から分析し、Apple が仕掛ける製造業の王道「少品種超大量生産」と日本企業の「高付加価値」の対比、今後の家電産業の鍵を握るプラットフォーム戦略の重要性、日本企業の「品質」の考え方と消費者の多くが考えるプライオリティ、そしてゲームの「ルールを変える」ということ。よくもまあ、これだけ多岐にわたる事柄を整理して一冊の本にまとめた、というくらいにまとまっている本です。私も、この本に書かれていることのほとんどは知っていましたが(特によく知っていることも多く書かれていましたが)、こうやって全方位的に整理してドン!と突きつけられると、何か見えてくるものがあるような気がします。
少なくとも、ここ数年の日本メーカーが取り組んできた「多品種少量生産」による多様なニーズへの対応は、一部の市場では成功しているけれども、それだけで全ての市場をカバーできるわけではない。むしろ圧倒的マスに向けたプロダクトで量産性(裏を返せばコスト)と品質を両立することができなければ縮小均衡しか残っていない、というのは、認めざるを得ない事実だと思います。

また、最終章に書かれていた「ルールを変える」という話は、私の中でずっとモヤモヤとしていて『なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』という書物にその答えを求めてみたけど全然書かれていなかったことがここに書かれており、胸の中が晴れ渡るような快感を覚えました(だからといって、それを実践するのは並大抵のことではないけども)。


最近は Apple の一人勝ちのような状況が(一部市場では)起きていて、大手経済紙/誌でも「強い Apple とイノベーションを起こせない日本企業」のような対比で語られることも少なくありません。ある意味、いろんな状況が重なって日本の電機産業が自信を失っているのが現在だと思いますが、これだけ客観的かつ多面的に取材を行っている西田氏に、こう断言されていることが、微かな自信に繋がるような気がします。

日本の競争力が失われた、と多くの人が言う。
しかしそれは、日本の技術力が失われたからではない。(中略)日本にはまだまだ技術力があるのだ。だが、それを日本国内で消費されるデッドエンドで浪費したことが間違いだった。

そして、こういうエールを送ってくれている下りで、私は本当に涙が出てきました・・・。

今後、家電製品や IT 機器の多くが iPhone や iPad のようなルールで作られ、販売されていくのだとすれば、勝つためには量が必要だ。その上で品質の追求をせねばならない。
日本も、高度成長期には「外」で戦ってきた。今も、ゲーム機や 3D で勝負をかける人びとは、明確に世界を視野に戦っている。
われわれに必要とされているのは、そういったジャンルをもっといくつも見つけること、そして、戦おうとする人びとの足を、無関心やつまらない利権でひっぱらないことだ。(中略)日本の技術は、僕たちが思っているほど弱くなんかない。お願いだから、彼らを全力で戦わせてあげてはくれないだろうか。

日本の製造業が再び世界で強い競争力を得るには、越えるべきハードルがいくつも存在します。また、自分たちの努力だけではなく、政府が「未来のこの国のカタチをどうしたいか」にも大きな影響を受けることも事実です。ただ、少なくとも現状に嘆き、諦めていては始まらない。再び自信を得て、(Apple や Google の真似ではない)世界で戦う戦略を編み出すことによってのみ活路が見いだせることを肝に銘じ、明日からまた歩んでいかなくてはなりません。

最後に、この一枚を貼っておきたいと思います。著者の西田氏ではなく、先日行われた本田さんの『3D 世界規格を作れ!』の発刊記念セミナー(Ustream で録画を試聴できます)において、本田さんが「伝えたかったこと」。きっと西田さんも同じ気持ちであり、日本のメーカー関係者であれば、誰もが元気になれる言葉。

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