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ウォール街 [DVD]

ウォール街 [DVD]

昨年末に『ウォール・ストリート』を観たら、オリジナル版のほうも観たくなったので、DVD で視聴。

若手証券マンが「カリスマ投資家」ゴードン・ゲッコーに弟子入りして成功し、でも最後にゲッコーに裏切られて全てを失い、そこに残ったものは・・・というのは両作品に共通するストーリーですが、時代背景が違うのでメッセージ性が微妙に違いますね。『ウォール街』は株式投資を軸に価値や経済の捉え方、そして生き方を鋭く描いた作品でしたが、続編の『ウォール・ストリート』のほうは、投資や企業経営の話よりも親子や恋人といった人間関係のほうに少しフォーカスが移っていて、本筋の部分が表面的になってしまった印象。
というか、本作のほうはゲッコーが使ってる携帯電話が巨大すぎて懐かしい(笑)さすが 25 年前の作品・・・。

この映画は完全にマイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーの存在感が圧倒的で、当時ゲッコーに憧れて証券マンを目指したり、クレリックシャツ+サスペンダースタイルに身を包む若者が増えたというのも理解ができる気がします。
また、主演のチャーリー・シーンがやや向こう見ずで虚栄心が強い、この時代の典型的なアメリカの若者を演じているのが見事にハマッていますが、それに比べて続編のほうではシャイア・ラブーフの存在感が薄っぺらなのも、いい対比かと(笑。


『ウォール街』といえば、いまだに語り草になっている、あまりにも有名なこの台詞。

言葉は悪いかもしれませんが、”欲” は善です。
“欲” は正しい。
“欲” は導く。
“欲” は物事を明確にし、道を開き、
発展の精神を磨き上げます。
“欲” には、いろいろあります。
生命欲、金銭欲、愛欲、知識欲。
人類進歩の推進力です。
“欲” こそ・・・見ててください、
テルダー製紙だけでなく、
“株式会社 USA” を立て直す力です。

もしかすると、原語の “Greed is good.” というフレーズの方が有名かもしれないくらいです。実際の映像を見たのは初めてでしたが、確かに心に響きますね・・・。

「必要は発明の母」という言葉もありますが、現状に満足せず、発展し続けることに対する渇望こそが人間の成長の源泉だと思います。世界の共産主義国家崩壊の例を見るまでもなく、もっと言えば近年の日本国内を見渡すだけでも分かることですが、成長に対する正当なインセンティブが与えられない環境は、人間のモチベーションを萎縮させ、社会が衰退していくのみ。じゃあ未来永劫無限の成長を前提とできるのか?といえばそれは別の話だと思いますが、少なくとも「今日の努力により、明日報われる可能性」を私は肯定したい。そう思っているので、ゲッコーのこの言葉は私を勇気づけてくれます。
だってこの台詞の「株式会社 USA」を「株式会社ニッポン」に置き換えたら、まさに今の日本のことを言っているわけじゃないですか。30 年前の米国と日本の関係は、現在の日本と中韓の関係に重なるわけで。

このあたりは、最近私がよく考えている「未来のこの国のカタチをどうしたいか」という話と根っこが同じなので、もし心が折れそうになったときには、この言葉がよりどころになってくれそうな気がします。

ともあれ、この台詞自体は真理だと思うのですが、それでもゲッコーにとっては株主に対する欺瞞にすぎないんですよね。”欲” そのものには実は善悪はなくて、それを何に転化するかで善にも悪にもなるというのが本質だと思います。資本主義を自分の利益を最大化するためのマネーゲームと捉えるか、その裏に個々の経済活動、人生を見るか。
もし、”欲” という単語のもつ負のイメージが強すぎるのであれば、かつてホンダが掲げた企業メッセージ「夢こそが、私たちのエンジンだ。」に置き換えても良いかもしれません。

ゴードン・ゲッコーの存在感ばかりが印象に残ったこの映画ですが、劇中で、ゲッコーとは正反対の人物として描かれている主人公の父、カール・フォックスの台詞もまた心に残ります。

安易な金より身のある人生だ。
他人の売り買いではなく、自分で創れ。

人間の、無限の “欲” を肯定して、それを成長の源泉とすること。でも、形のない「虚」を商売にするのではなく、自分で価値を創造すること。それは別に「額に汗して」とか「ものづくり」とかそういった表面的な意味ではなくて、自分の “欲” を正しく認識した上で、いかに価値のある仕事をして、自分と他人に有形無形の価値を分配していくか。今の時代は、ゴードン・ゲッコーだけでも、カール・フォックスだけでもなく、この二面性を併せ持った価値観で生きていかなくてはならないのではないか、と思います。

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