キヤノン、新AF機構でライブビューAFが高速化した「EOS 70D」
何かと話題の EOS 70D ですが、さっそくキヤノン S タワーで実機に触ってきました。8 月下旬発売なのにもうワーキングサンプルが触れる、というのはけっこう珍しいのではないでしょうか?もちろん、発売までにファームウェアが更新されて、AF 周りの挙動なんかはさらに改善される可能性がありますが。
とはいえ、70D は 60D の進化形なので、外見からはあまり大きく進歩した印象は受けません。あくまで 60D のマイナーチェンジ版、に見えますが、中身はけっこうアグレッシブに進化しています。
シャッターボタンの脇に小さなボタンがひとつ増設されています。7D や 5D3 では M-Fn(マニュアルファンクション)ボタンで、私は水準器表示に割り当てていますが、70D では「測距エリア選択モード切り換えボタン」となっています。1 点 AF/ゾーン AF/19 点自動選択 AF の切り替えと AF フレームの選択を操作するためのボタンです。中級機以上では AF フレームの選択のしやすさが、特に動体撮影では重要になってくるので、これはなかなか使いやすそう。その代わりマルチコントローラがない、というのは、マルチコントローラのデフォルト動作 AF フレーム選択に割り当てている私からすると、良し悪しでもありますが…。
ちなみに、なにげにこの機種から 2 桁シリーズにも透過型液晶採用のインテリジェントビューファインダ搭載になっているんですね。7D で完全に慣れているので 60D と比べてみるまで気がつきませんでしたが(笑)。グリッド表示やゾーン AF フレーム、水準器などが OVF で表示できる、というのは慣れるととても使いやすいものです。ただ、水準器は左右方向の傾きしか検出してくれないようなのは、上位機種に対するコストダウンが見られる部分でしょうか。まあ、左右の傾きが把握できれば十分、ということが多いので、あまり困らないでしょうが。
この機種で最も気になるのはライブビューじゃないでしょうか。「デュアルピクセル CMOS AF」が 60D に対する最大の進化点と言って良いと思います。
実際にライブビューで AF を使ってみたところ、今までの EOS のライブビューは何だったんだ、というくらいに速い。被写体によっては動き出しの瞬間に一瞬考え込むような動きをする場合もありますが、今までのコントラスト AF や EOS M のハイブリッド CMOS AF のような「合焦の最後で迷うような挙動」がなく、スッと合わせに行ってくれるのが気持ちいい。OVF の位相差 AF にはまだ追いつききれていないとは感じるものの、コントラスト AF とは違って非 STM レンズでもフォーカシングが速く、これなら実用的と言えるのではないでしょうか。
ただ制限もあって、ライブビュー時に使えるフォーカスモードはワンショット AF のみ。デュアルピクセル CMOS AF の演算負荷が高いのか、AI サーボ AF が使えないので、ライブビューで動きものを撮るのには向いていません。APS-C の中級機というと、スポーツや野鳥撮影に使われることも多いわけで、それに対応できないというのはちょっともったいない。まあ、風景などの静物撮りには十分なスピードの AF ですし、動きものを撮るならライブビューではなく、ファインダを覗いて安定したフレーミングを行うことが重要なので、それをふまえても仕様かもしれませんが。この制限も DIGIC の高性能化に伴って解消されていくものと思われますが、現時点での性能でも、むしろ Kiss や EOS M に入ってきたら、一眼カメラでのライブビュー撮影が今まで以上に当たり前になりそうだな、と感じます。
さらには Wi-Fi も入っているし、イメージャの画素数はアップしながら高感度性能も 60D より向上。しかもタッチパネルにも対応。個人的には、EOS 7D を買って以来、2 桁シリーズにはほとんど興味がなくなっていましたが、70D はけっこうすごい。私の 7D は最近望遠での野鳥・レースカー撮影に特化しているので、仮に 7D Mark II が出ても 7D を使い続けようと思っているくらいには満足していたのですが、この 70D の進化が 7D Mark II に入ってきたら、ちょっとグラッと来てしまいかねません。これはまずいものを見ちゃったなあ。
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