「へええ、横浜から二駅で、こんな感じなんだ。中心部からちょっと離れただけで、全然違う。横浜には、いろんな顔がある」
ドラマ『孤独のグルメ Season3』の第 2 話に登場し、「チートとパタン」という聞き慣れない料理を我々に知らしめてくれた、横浜市日ノ出町の第一亭。放送直後は営業形態を変えざるを得ないほどの盛況で、連日行列ができていましたが、さすがに放送 2 ヶ月も経てば熱も一段落したのか、お店の前を通りかかってみたら特に行列もなく、それなりに落ち着いて営業しているように見えました。
今回は、前回訪れたときに品切れで食べ損ねた豚舌と、微妙に麺が違っていたパタンのリベンジに来た…わけではなく。目指すははここから歩いて数分、井之頭五郎も歩いたこの道。
え~っ、何、ここ。
商店街?というより、飲み屋街だろう。飲んべえたちの巣窟。…ふっ、もっとも、彼らには桃源郷だろうが。
「濃いエリア」として知られる野毛界隈でも、ここは特に異色ではないでしょうか。通り沿いにある、二階建ての商業施設にみっちりと詰め込まれた、飲み屋街。まるで昭和を凝縮して、そのまま現代に遺しているかのようなこの空気感。
目指すはここ、「スナックはる美」。スナックなんて、昔一度父親に連れられて入ったことがあるかどうか、っていうくらいに縁のないお店。そこに自らの意志で足を踏み入れることになるとは。
っていうか、この店、どこから入るんだ…?
中央の階段から 2 階に上がり、建物の裏側にあたる通路を通ると、入口がありました。商業施設というより、なんだか古アパートの一室を訪れたような感覚。でも、周り中がこういう雰囲気の飲み屋、というのが却って新しい。
ここに来たのは、べつにスナックで飲みたかったから、ではなく、かつて新橋に存在した「天草大王と十割そばの店 秀」のマスターが、春からこの店舗を毎週日・月曜日だけ借りて、ジントニック専門のバーをやっているから。五反田の菜五味時代からかれこれ 4 年半追っかけているので、この店にも来る機会を見計らっていました。
スナックのような、バーのような、絶妙なカオス感あふれる店内。席はカウンターが 7 席しかなく、隣のお客さんとは肩も触れ合わんばかりの狭さ。必然的に他のお客さんの会話が耳に入ってくる…というより、ほとんど客全員+マスターで会話しているような状況になります(笑。見ず知らずのお客さんと言葉を交わしたり、席を譲り合ったり。こういう体験、最近なかったなあ。
席についてまず頼んだのは「梨のジントニック」。そう、ここはオリジナルのジントニックが売りなんです。ジンもトニックウォーターも個性の強い味で、ジントニックに加えて成立する味って何かあるのか?と最初はちょっと懐疑的でしたが、この梨のジントニックはアリだ。オオアリクイだ(←。ジントニックの爽やかな刺激に、ほんのり甘い梨の香りが新鮮で、この季節らしい。私のジントニック観は見事に打ち砕かれました。
続いては「梅と黒糖のジントニック」。既成概念が覆された今、どんなジントニックでもどんと来い(笑。例えば梅酒と黒糖とソーダだと微妙な感じになりそうなところ、ジンの苦味とトニックの爽やかさが梅干しと黒糖をうまく橋渡ししてくれる印象で、これも面白い。
ちなみにお通しは「今日いい感じのナッツを買ったのに、お店に来てみたら自宅に置き忘れてきたことに気づいた」とのことで(笑、サッポロポテトをつまみつつ、変わり種ジントニックを呷ります。そういう緩さ、そういう昭和感。飲みに来たというより、小学校の頃に友だちの家に遊びに来てつい遅くまでいてしまった、そんな感覚です。
料金はチャージ 500 円と、飲み物は基本的にどれを頼んでも 500 円。「スナック」は、行き慣れない私のような世代からすると料金体系がどうなっているか分かりにくい、というのも心理的障壁のひとつだと思いますが、これなら安心です。
三杯目は、このお店の定番「昆布ジントニック」をいただいてみました。もはや昆布が入っていようと驚きやしません(笑。味も、昆布茶のようなダシの効いたジントニックで、というとなんだかおいしくなさそうですが、これもこれでアリ。
ちなみに、マドラー代わりに入っているのは谷中生姜(笑。「今日のおすすめとして谷中生姜のジントニックを作ってみたけど、作ってみたらあんまりおすすめじゃなかった」とのことで(ぉ、昆布ジントニックに入ってきました。
この店、日・月以外はどんな姿で営業してるんでしょうね。内装は変わらないはずなんですが、これがまた「昭和×創作ジントニック」の雰囲気とマッチしすぎていて、スナックとして営業している状況が想像できません(笑。
〆は「梨のマティーニ」で。やっぱり、梨とジン、なかなか合うわ。私はマティーニとかジンライムとか、ジンベースのシンプルなカクテルが好きなので、これは気に入りました。カクテルグラスじゃなくてショットグラスで、というのも、渋くていい。
なんだか、都会の世の中とは時間の流れが違う空間でお酒を飲んで、日々の雑事がちょっとだけどうでもよくなったような気分になりました。こういう時間、大事ね。
日・月の夜ってなかなか飲みに出るのが難しいんですが、時間を見つけてまた来たい。
コメント
いいなあ、マスターとは一度お会いしたいと思ってるんですよ~。