多くのチームやドライバーのホームグランプリとなるイギリス GP。現チャンピオンのハミルトンはもちろんのこと、メルセデスもチームの本拠地はイギリス。その地元ファンの前で、ハミルトンが改めて強さを発揮したレースでした。
スタートで先行したのはウィリアムズ。マッサがメルセデスの 2 台を抑えて 1 コーナーに飛び込むと、ハミルトンと競い合いながらボッタスも続きます。シルバーストンの抜きにくいサーキット特性も相まって、序盤のレースはウィリアムズの 2 台が支配します。
ボッタスを抜きあぐねたハミルトンは、20 ラップ目にウィリアムズに先んじてピットインし、アンダーカットに成功。翌周にマッサがピットから復帰したときには、軽々とトップを奪い返していました。
次のターニングポイントは 44 周目。降雨もあってペースダウンし、ロズベルグが 2 秒後ろに迫ってきたところで、インターミディエイトタイヤにチェンジ。このタイヤ交換のタイミングが絶妙で、1 周後にタイヤ交換したロズベルグ、マッサ、ボッタスとの間に大きなギャップを築くことに成功します。
終わってみればポールトゥウィン。いつもと変わらない結果ではありますが、ハミルトンの判断とチームとの連携がガッチリ決まった、現役チャンピオンらしい勝ち方だったと言えます。特に降雨時のタイヤ交換のタイミングはピットよりもドライバー判断によるところが大きいので、あのタイミングでピットに飛び込んだハミルトンの判断勝ちでしょう。いっぽうでロズベルグは後手に回った感が強く、順手で攻めても簡単には勝てず、かといって裏をかこうとすると逆にハミルトンとのポイント差が広がるリスクのほうが高い…というジレンマに苦しんでいるように見えます。こういうレースでは、やはり地力の違いがリザルトとなって出てきますね。
地力の違い、といえば勝負弱さが露呈したのがウィリアムズ。ウェットレースになった終盤のペースはダウンフォースに勝るメルセデスが明らかに速かったので、どうやっても負けていた可能性はありますが、その前にハミルトンがアンダーカットを成功させた時点で勝負がついてしまったというのは、いくらなんでも無策すぎます。例えば序盤はマッサよりもボッタスのほうがマシンの動きが良かったので、ボッタスを先行させてマッサをブロック役にし、メルセデスとのギャップを広げることができれば、もう少し展開も違ったはず。こういう年に一度勝つチャンスがあるかないかというチームでは、チャンスは最大限に活かす、それが私の主義だのが鉄則。マシン性能的には去年よりもメルセデスとのギャップが大きそうなだけに、この保守的なレース戦術を変えない限り、今季も優勝は遠いんじゃないですかね。
マシン特性から考えると、次に勝てるチャンスがあるとすれば夏休み明けのスパかモンツァ。コンストラクターズランクは 3 位でもう安泰な状況だし、もう 2 位や 3 位を何回獲るよりも 1 度の優勝でしょう。ギャンブルに出てもいいんじゃないですかね。
マクラーレン・ホンダは…積極的にアップデートパーツを持ち込んでいるようですが、ここ数戦の高速サーキットではほとんど結果が出せず。このシルバーストンでも、予選結果はマノーの前(17・18 番手)という惨憺たる結果。個人的にはヨーロッパラウンドが佳境に入る頃にはコンスタントにポイント争いに絡み、鈴鹿では表彰台を狙える位置にいてほしい…というのが望みでしたが、まだまだ全然そんな状況ではなさそうです。
決勝ではスタート直後にロータスの同士討ちの煽りを喰らい、アロンソがスピンしてバトン車のサイドにヒット、バトンはそのままリタイアというひどい結果。マクラーレン的には完全にもらい事故ですが、こういうアクシデントも含めてトラブルが多すぎ、走行距離が稼げなくてさらに開発が遅れる悪循環…。完走 13 台の荒れたレースで最後まで走りきったアロンソが 10 位 1 ポイントを手にしましたが、これもマシン性能のおかげというよりアロンソの粘り強い走りの賜物。マシン性能まで含めた総合力で上位入賞を狙うには、まだまだ時間がかかると言わざるを得ません。
次戦はモナコに次ぐ低速サーキットのハンガリー。マシン性能の差が出にくいコースであるが故にマクラーレン・ホンダにもポイント獲得のチャンスはあると言えますが、それってマシン開発とはあまり関係がない、というのが辛いところです。でも、少しずつでもポイントを積み上げていくことが、チームにとってもモチベーションの向上に繋がるのも事実。夏休みに向けて、良い結果を持ち帰ってほしいところです。
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