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レッドブル・エアレース 室屋義秀が年間チャンピオン獲得!

室屋義秀

INDIANA POLIS RACE REPORT:新王者が魅せた、不屈の精神力 | Red Bull Air Race

今シーズンこれまでに千葉大会を含む三勝を挙げ、年間チャンピオンを賭けて挑んだ最終戦インディアナポリスにて、マルティン・ソンカとの激しい戦いを制した我らが室屋義秀が優勝、念願の年間チャンピオンを獲得しました。おめでとう室屋選手!!

思い返せば第二戦サンディエゴでは往年のポール・ボノムを思わせる強さで完全勝利。次の千葉ではペナルティもあって薄氷の勝利ではあったものの、今季の室屋には運が味方している感がありました。しかしその後はブダペストでの 3 位以降伸び悩み、チャンピオンシップはマルティン・ソンカ、ピート・マクロード、カービー・チャンブリス、室屋の四つ巴の様相を呈します。そして全戦ドイツ/ラウジッツでは「ラウンドオブ 8 までに上位三人の誰かを直接対決で下し、ポイント差をできるだけ多く詰める」というアグレッシブな作戦が見事に功を奏し三勝目。首位ソンカと 4 ポイント差で最終戦を迎えていました。

しかし、そのインディアナポリスの予選では室屋のマシンにまさかのエンジントラブルが発生し、11 番手タイムに留まります。それだけならまだしも、ラウンドオブ 14 ではいきなりマルティン・ソンカと直接対決するという展開に。ここでソンカに勝てば逆転チャンピオンの可能性が高まりますが、決勝当日までに修復できなければ危ないのでは…とも思っていました。


室屋義秀

そしてラウンドオブ 14。室屋のマシンは無事修理できたものの、コースはパイロンが傾くほどの強風が吹いており、難しいコンディション。先攻の室屋はフライトでインコレクトレベルの 2 秒ペナルティを受けてしまい、のっけから厳しい状況。それでもペナルティ込みで 1 分 06 秒台というタイムは悪くなく、負けてもファステストルーザーとして残れる可能性がありました。
続くソンカのフライト。室屋のペナルティを見ながらも手を抜かず勝てるタイムを狙っているように見えましたが、終盤にまさかのパイロンヒット!3 秒のペナルティが加算されてしまい、結果として室屋に軍配が上がります。

これで室屋のチャンピオン獲得が濃厚になった…と思ったら、ペナルティ込みでもソンカが敗者の中で最速タイムを記録しており、ファステストルーザーとしてラウンドオブ 8 に生き残ります。

ラウンドオブ 8、室屋の対戦相手は今季マスタークラスに昇格したばかりのミカエル・ブラジョー。ここは難なく勝利し、ファイナル 4 へ。
いっぽうソンカの対戦相手はマット・ホール。今季こそあまり振るわないものの過去二年選手権 2 位を獲得している実力者であり、番狂わせも十分考えられるカード。しかしマット・ホールはインコレクトレベル+パイロンヒットで 5 秒のペナルティをもらい、ソンカが順当に勝ち上がりました。

ファイナル 4 は室屋、ソンカ、昨年の覇者ドルダラー、ベラルデの四人。室屋としてはここはもう勝つしかなく、それでもソンカが 2 位に入れば逆転チャンピオンは成りません。その間にドルダラーが割り込んでくれることを期待するしかない状況。最後の直接対決でチャンピオンが決まるというドラマチックな展開になりました。

室屋は一番手でのフライト。これまでのキャリアでの四勝は全て一番手もしくは二番手のフライトの結果であり、先に飛んで後のパイロットにプレッシャーを与えるのは得意としているところです。そしてこのフライトがペナルティギリギリの「攻めた」アタック。もう少し風があったらパイロンヒットしていたに違いないほどのスレスレで、通常ならエンジン出力が落ちてくるファイナル 4 でまさかの 1 分 03 秒台、マット・ホールの予選トップタイムよりも 1 秒以上速いトラックレコードを記録してしまいました。これにはさすがに鳥肌が立ちましたね…。
他の三人はここでこれを上回るタイムを刻むことはほぼ不可能。ペナルティなしでいかに一つでも上の順位を得るか、というレースになります。続くドルダラーもベラルデも 1 分 05 秒台のノーペナルティ、通常であればこれがトップタイムであってもおかしくない速さではありました。そして最終フライトのマルティン・ソンカは、一見ノーミスの美しいフライトであったにも関わらず終盤に伸び悩み、1 分 07 秒台で 4 位。この瞬間に室屋の今季四勝目と年間チャンピオン獲得が確定しました。

室屋義秀

どうやらソンカのほうもマシンに不調を抱えていたとのことで、終盤の失速はそれによるものかもしれませんが、これもまたレース。年間四勝、最終戦の最終フライトでトラックレコードという室屋の強さはチャンピオンに相応しいものだったと言えます。特にサンディエゴとインディアナポリスでの勝ち方は常勝ポール・ボノムに重なるものがあり、一昨年から室屋本人が口にしていた「勝つためのレースの組み立て方」をちゃんと実践してきた結果であることを改めて感じます。

それにしてもポール・ボノム引退後のエアレースは本当に実力伯仲していて、室屋以外にもドルダラー、ソンカ、マクロード、チャンブリス、ホールという強者揃い。マスタークラス二年目のコプシュタインも着実に力をつけてきていて、来季もさらなる激戦が予想されます。
そしてエアレースはパイロットがみんな魅力的なんですよね。他のレースと違って一人ひとりのフライトをじっくり観戦できたり、フライト前にインタビュー映像を挟む中継の構成の良さもあってパイロットの個性を把握しやすい。しかもマスタークラスでたった 14 人という人数の少なさもあってパイロット全員に経緯と仲間意識があり、他のカテゴリのようなドロドロした人間関係が(少なくとも表面上は)感じられないのもまた良い。全てのパイロットを満遍なく応援したくなる構造が、レッドブル・エアレースの熱量の高さを形作っているのだと思います。

今年のインディアナポリスはすごいですね。先日の佐藤琢磨のインディ 500 制覇に続いて、室屋のエアレースチャンピオンもここインディアナポリスで決定とは。北米のモータースポーツの聖地に立て続けに日本人選手の名が刻まれることは誇らしくもあります。そして室屋の応援に来ていた佐藤琢磨が頻繁に中継に写っていたことが、いかにインディ 500 ウィナーが米国でリスペクトされる存在なのか、というのを改めて知らしめてくれました。

ともかく、室屋選手本当におめでとう。来年はチャンピオンとしての凱旋レース、千葉に必ずまた行こうと思います。

※本エントリーに掲載した写真は全て千葉戦の際に撮影したものです。

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