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東京モーターショーに行ってきました (2)

昨日に引き続き、東京モーターショーの話です。

今年のモーターショーは、業界では「東京 VR ショー」と言われているというくらいに VR での展示で溢れていました。あまりに多くて全部は見て回れないくらいだったのですが、代表的なところをかいつまんでご紹介します。

フォルクスワーゲンブースでは三種類の VR 展示を行っていました。私が体験したのは「I.D. CROZZ」というコンセプトカーの VR 展示。HMD(HTC Vive)をかぶると目の前に実寸大の I.D. CROZZ が表示され、周囲をぐるりと周りながら見たり、ドアの開閉を操作することができます。
その後、シートに座ると(立って見る用の Vive と座って見る用の Vive がある)今度は I.D. CROZZ の車内に移動。助手席に乗り込んできた女性(VR キャラクター)と一緒にドライブを楽しむわけですが、VR 空間内にあるボタンを押すとステアリングは自動で格納され、自動運転が始まります。車内の操作は全てタッチベース。

Vive にはモーションコントローラ「Leap Motion」が取り付けられていて、VR 空間内で自分の両手が認識され、タッチ操作が可能になる仕組み。確かにハンドコントローラを持って操作するよりは直感的ですが、Leap Motion ってまだまだ実験的なデバイスで、ベンチャー系の展示ならまだしもこういう(IT 系ではない)大企業の通常展示に使われるというのは他に見たことがなく、驚きました。

日立オートモティブシステムズ。8 人掛けのモーションシートと Gear VR を使って自動運転のイメージデモが見られました。自動運転車が渋滞情報を検知し、迂回ルートを自動設定した上で他車や障害物をうまく避けながら自宅までオート走行し、ガレージにも自動で入れておいてくれるまでをドライバー視点(自分では運転しなくなっても「ドライバー」と言うんだろうか)で体験することができます。少なくとも五年後十年後の世界という感じではありますが、こういう未来を制御部品や電装部品で支える会社であることのアピールのようです。

日立オートモティブはスーパーフォーミュラの公式スポンサーであり、鈴鹿サーキットにおいてはシケイン(1989 年の F1 でセナとプロストが接触事件を起こしたあのシケイン)に「日立オートモティブシステムズシケイン」という命名権も保有しているとのことで、モータースポーツに縁の深い企業。コーポレートカラーに塗ったスーパーフォーミュラのショーカーも展示されていました。


その隣では、実際のスーパーフォーミュラのモノコックに収まって鈴鹿サーキットの一周を VR 体験できるコーナーも。フォーミュラカーのコクピットには初めて座りましたが、座っているというよりもほとんど「寝転がった状態で頭だけ起こしてステアリングを握っている状態」なんですね。これで二時間近いレースを走り続けるというのはかなり厳しい(;´Д`)ヾ。

VR 映像は CG ベースではなく一世代前の Gear VR を使った 180° 動画(後ろ半分はブラックアウトしている)にすぎないんですが、自分自身でもゲーム内で走り慣れている鈴鹿をスーパーフォーミュラのシートに収まった状態でドライブできる(まあ、映像に合わせてステアリングを切り、ペダル(実際にはない)を踏んでいるだけですが)というのは燃えるものですね。

そういえば日立はインディカーにおけるチーム・ペンスキーとエリオ・カストロネベスのスポンサーでしたね。以前のインディジャパンの際にもマシンに大きく HITACHI のロゴが掲げられていました。エリオ・カストロネベスと言えばこれまでにインディ 500 を三度制覇し、今年もファイナルラップまで佐藤琢磨と激しい優勝争いを繰り広げた偉大なドライバー。来季は活動の場を IMSA(スポーツカーレース)に移すとのことですが、日立のパーソナルスポンサーは継続するのでしょうか。

日立の隣、デンソーブースでも VR。こちらはフリーローム(動き回れる)型の VR を使って、自動運転のためのセンサ技術や制御技術の訴求を行っていました。訴求内容自体は日立オートモーティブとよく似ていて VR を使っている点でも共通だけど、こちらはゲーム風の演出で全くイメージが違う。こちらも少し先の未来の技術の話ではありますが、同じような題材でも対照的な展示をしているのが興味深い。

こちらは東京モーターショー公式がやっている VR アトラクション「THE MAZE」。30 台の PSVR をネットワーク接続し、自動運転を使ってゴールまでの到達を競うゲームです。TMS の公式アプリで予約する必要があったんですが、二時間先までの枠が常に満席。私もちょっと待って枠が解放された瞬間に確保しました。
しかし PSVR をかぶった人が 30 人並んで座っている光景というのもなかなかすごいものがありますね…。

遊び方はこんな感じ。進行方向を視線(頭の向き)で入力して選ぶだけ、あとは自動運転が全てやってくれます。道中、他車や路上の様々なステーションと通信することで交通情報を入手したり、電力をチャージしたりしながらゴールを目指します。ゲームという体裁を取った自動運転・AI・EV・コネクテッドカーの啓発コンテンツになっています。

THE MAZE で使われている PSVR は新型(CUH-ZVR2)でした。まあ自宅にある初代とはケーブルとヘッドホン端子の位置くらいしか違わないし、特にスタッフの方に手伝ってもらわなくても楽勝で装着できる…と思ったら、ディスプレイの位置調整ボタンが見当たらない!よく見たら新型ではボタンがディスプレイの下部ではなく上部についているんですね(;´Д`)。新型の実機には初めて触ったので、意外にも戸惑ってしまいました。

また PSVR にはサードパーティ製の専用ヘッドホンである「MANTIS」が装着されていました。これちょっと気になっていたんですよね。Oculus Rift についているヘッドホンのように装着や位置決めがしやすいヘッドホンですが、密閉性はないし 1 万円するヘッドホンの音質とは言えないし、ちょっと微妙。使いやすさという利点はあるんですが、価格がなあ…3,000 円くらいだったら買っていたと思いますが。

あとこちらは VR ではありませんが、これまた TMS 公式の展示「THE FUTURE」。ドーム型スクリーンを使った近未来のクルマ社会を感じさせてくれる映像展示でした。事前にスマホアプリを使って参加者が「自分のクルマとの付き合い方」のアンケートに答えることで、TMS の来場者がこれからのクルマ社会に対してどういう傾向の考え方をもっているかと合わせて提示してくれます。

テーマは自動運転、コネクテッドカー、カーシェアリングといった自動車業界のキーワードについて、それぞれ起こりえる未来像が描かれています。技術的にどう実現するかではなく「こういう未来がきっと来ますよ」という話。各メーカーのブースも自動運転関連はこういう内容のものが多く、自動車業界が今後数年をかけて世の中に導入していく新たな仕組みに関して、業界を挙げて社会的コンセンサスを取っていきたい、今回の TMS はその始まりなのだ、という強い意志が感じられました。

モーターショーには『グランツーリスモ SPORT』も出展していました。今回のモーターショーに合わせて発表されたコンセプトカー「イソリヴォルタ ザガート ビジョン グランツーリスモ」のモックアップが展示。今後ゲーム内にも追加コンテンツとして登場するとのことですが、フェラーリやランボルギーニとはまた違ったダイナミックなデザインがカッコイイ。ゲーム内で走らせてみたいですね。

ブース内には GT SPORT の試遊台もあり。ステアリングコントローラとバケットシートを使った試遊台の他に、VR モードの試遊台もありました。が、VR の試遊台だけパイプ椅子というね…いかに GT SPORT 内での VR の扱いがオマケにすぎないかを改めて実感しました(;´Д`)ヾ。

以上、東京モーターショーのレポートでした。見に行ったのは実に十年ぶりでしたが、以前に比べるとコンセプト寄りの展示が大幅に増え、本当にクルマを取り巻く業界構造や社会構造が変わろうとしているんだなあ、ということを強く感じました。また「まだ実現していないけどこれから向かう未来」の提示に VR はやはり適していることもよく分かりました。数年後に振り返ったときに、2017 年のモーターショーが一つの転機だったと思うようになるのかもしれません。

コメント

  1. sakusan より:

    僕も家族でモーターショー行きました。
    (しかも日帰り・・・。)
    VR アトラクション「THE MAZE」はちょっと不気味でしたね。
    でもVR買っちゃおうかな・・・。

    なんか、これからの車はEV化で行くんでしょうか?
    あの、エンジン音「ブロロ〜」って感じがやはりクルマって思うんですけど。

  2. B より:

    おお、いらしてたんですね。しかも日帰り(;´Д`)ヾ。
    EV はまだまだ課題も多いですが、日産リーフを見てるともう不可逆な未来が近づいてきてるんだろうなあ、と思います。私もあのエンジン音がないと…とは思いますが、それもかつてのカメラのフィルム巻き上げ動作みたいな存在になっていってしまうんでしょうね。

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