私は気になった映画はすぐに映画館で観ちゃう方なので飛行機に乗っても機内エンタテインメントであえて観たい映画も特にないことが多いのですが、今回はちょっと気になるけどネット配信が始まってからでいいか…と思っていた映画が JAL 国際線にラインアップされていたので、珍しく機上で鑑賞しました。
本屋大賞にノミネートされた小説の映画化らしいですね。私はどちらかというと松重豊が出てるというので気になったクチです(ぉ。映画としては気になってはいたんだけど、「泣ける映画」という触れ込みで売り出される邦画があまり好きではなくて、なのに「4 回泣けます」とか宣伝されると逆に萎えるじゃないですか。確かに映画って日常とは違った感動を味わいたくて観るものだと思うけど、みんなそんなに泣きたいのか…。
さておき、この映画。ある喫茶店の特定の席に座ってコーヒーを飲むと、そのコーヒーが冷めきるまでの間だけ自分の行きたい時間(必ずしも過去とは限らない)に行ける、ただしコーヒーが冷める前に飲み干さなければ二度と現在には戻ってこれなくなる…というファンタジー設定の中で、登場人物がどの時間に行って誰に会い、何をするのか?を描いた作品です。二時間ものの映画だけど実際には四つのショートストーリーを組み合わせたオムニバスドラマ的な形式を取っていて、以下のエピソードが描かれます。
- 幼なじみの男性と喧嘩別れした女性(波瑠)が喧嘩する直前に戻る話
- 認知症で記憶を失い夫の顔さえも忘れてしまった妻(薬師丸ひろ子)の過去に会いに行く夫(松重豊)の話
- 妹に実家の旅館を押し付けて気ままに生きる姉(吉田羊)が、急逝したその妹に再会しにいく話
- 過去に囚われて現代に帰ってこれなくなった母(石田ゆり子)にもう一度会いに行きたい娘(有村架純)の話
「泣ける」を標榜する日本映画では往々にして主要キャラの誰かが難病にかかって死んでしまうことが多いですが、この映画はあまりそういう感じではなく(人が死ぬ話は出てくるけど)人間の望みや後悔について丁寧に描いた作風なのがなかなか良かったです。最後のエピソードは、人を過去に送ることはできても自分が過去に行くことはできない数ちゃん(有村架純)がどうやって過去に行くのか…というトリックが SF(サイエンスファンタジー)的で面白かった。
で、実際泣けたか?というと個人的にはそこまでなく感じではなく、むしろじんわり感動する系の作風だと思ったのですが、二番目の認知症の初老夫婦の話は思わずグッと来るものがありました。
だって松重さんのこの顔ですよ。嬉しさと悲しさ、それに深い愛情がないまぜになったこの複雑な表情。それを受ける薬師丸ひろ子の表情もいい。人の死をもって泣かせる話じゃなく、片方が病気になったときに夫婦としてどう生きていくか…を描いた話だからこそ他のエピソードよりもリアリティがあって、仮に自分もあと二十〜三十年後に同じような状況に陥ったらどうするだろうか…と考えてしまいました。
そこまで期待したわけでもなかった割にはいい映画だったかな。映像のスケールが大きいわけではないので映画館ではなく配信でも十分楽しめます。
それにしてもこういう喫茶店を題材にした映画を見ると喫茶店に行きたくなりますね。こないだ松重さん繋がりでヴィヴモン・ディモンシュに行って個店系の喫茶店の良さを実感しただけに、なおのことそう思います。特に戻りたい過去があるわけではありませんが(笑)、こういう過去に戻れそうな喫茶店を探してみようかな。
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