2006 年以来の開催となるイモラサーキットでの F1 グランプリ。以前は「サンマリノ GP」と呼称されていましたが、今回はサンマリノ共和国ではなく本来のサーキットが所属する州の名前が冠されています。個人的には…というか、多くの古参 F1 ファンがそうであるように、イモラといえば 26 年半前のアイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーの悲しい事故を今でも真っ先に思い出します。
予選はボッタス-ハミルトン-フェルスタッペンという今季何度となく見てきた順位。いつもと違うのはガスリーが個人最高位タイの 4 番グリッドを獲得したのをはじめ、ホンダ勢が 4 台揃って予選トップ 10 に入ったことではないでしょうか。こうなると必然的に決勝も期待するところです。
決勝はあまりスタートの良くなかったハミルトンがポジションを下げ、ボッタス-フェルスタッペン-ハミルトンの順で 1 周目を終了。その後もトップ 3 はほぼ等間隔でレースを続け、タイヤとの相性やピット戦略次第でフェルスタッペンに逆転の目はあるのでは、と思わせます。例によって 4 位以下は誰もこの三人についていくことができません。
狭いサーキットのせいもあってかフェルスタッペンはボッタスを攻めあぐね、逆転するにはボッタスとピットストップのタイミングをずらして戦略で抜くしかなさそう。タイヤマネジメントの巧くないボッタス相手ならばピットインを遅らせてオーバーカットか…と思っていた矢先、18 周目にフェルスタッペンがトップ 3 の口火を切る形でピットに入ります。タイヤ的にはまだ余裕があったはずなので、対ボッタスよりもハミルトンからアンダーカットを受けることを想定した動きだったのかもしれません。
ボッタスはそれに呼応するように翌周にタイヤ交換。しかしハミルトンはそこから 10 周もの間ステイアウトし、タイヤ交換した二人を上回るペースで周回を重ねます。果たしてどちらの戦略が正解か(既にこの時点でハミルトン優勢に傾いてはいたけど)という折、ルノーのオコンがトラブルでコース脇にクルマを停め、バーチャルセーフティカーが導入。ここでハミルトンが悠々ピットインし、完全にハミルトン有利な状況が完成します。こういう運まで味方につけてしまうのが今のハミルトンの強さなんだよなあ…。
結局いつもどおりのハミルトン-ボッタス-フェルスタッペンというオーダーになったものの、ボッタスはどこかのタイミングで路上のデブリを拾ったようでマシンバランスが狂い、ペースが上がっていきません。フェルスタッペンはしばらくこのボッタスに付き合わされながらも、42 周目にボッタスのミスに乗じてオーバーテイクを成功させ 2 番手に。しかしその数周後、突如としてフェルスタッペンの左リヤタイヤがバーストし、走行不能に。もしかすると長い間ボッタスの直後で乱流を受けながら走っていたせいでタイヤへのダメージが蓄積していたのかもしれないし、どこかでデブリを踏んだのかもしれません。今回はタイヤ戦略次第では勝てた可能性があるだけに非常に悔しいですが、これもまたレース。
ハミルトンは難なく 93 勝目をマークし、これによってメルセデスは PU レギュレーション施行以来 7 年連続となるコンストラクターズチャンピオンを確定させました。
一方 4 番手スタートから序盤は 5 位を快走していたガスリーは 8 周目に急遽ピットインし、そのままリタイヤ。ラジエーター故障が原因とのことですが、ペースは良かっただけにそのまま走り続けられていればフェルスタッペンに代わって表彰台もあり得たはずで、非常に悔しい。その穴を見事に埋めたのは僚友クビアト。全周回にわたって好ペースをキープし、フェルスタッペンのリタイヤに伴う SC 導入時にソフトタイヤに履き替えると、リスタート後にペレス・アルボン・ルクレールを相次いでオーバーテイク。さすがにリカルドを落とすところまではいかず表彰台には惜しくも手が届きませんでしたが、印象に残る走りでした。ガスリーがリタイヤしたとはいえアルファタウリの二人が揃って良い走りをしたということは、AT01 の熟成が進みまた高速サーキットとの相性も良いということなんでしょうね。
クビアト以外がノーポイントに終わったホンダ勢の中で最も厳しかったのがアルボン。レース中ずっとクビアトに攻め立てられるような状況だったかと思えば、最後の SC 明けのリスタート時に単独スピンしてそのまま最下位に転落しノーポイント。不安定な RB16 でさらに SC によってタイヤが冷えていたというのはあるにせよ、前戦ポルトガルから今回のイモラがチーム残留の最終選別という状況で連続ノーポイントはもう擁護のしようがありません。DAZN の F1 ZONE(レース映像に加えてオンボードカメラやタイミングモニターが見れるチャンネル)でフィニッシュ後のアルボンのオンボードがずっと流れていたのですが、しばらくクルマから降りることもできずに茫然としていた様子を見るに、もしかすると来季のシート喪失だけでなく本レース限りでの交代が宣告されていた可能性すらあります。まあレッドブル的には今季の両タイトルがほぼ確定してしまった以上、来シーズンに向けて何ができるかを考えるべきだし、個人的には残りのレースでガスリーやクビアトが RB16 に乗っても驚かないし、ヒュルケンベルグあたりと交代することもあり得ると思っています。二週間後のトルコ GP までに何が起きるか見てみようじゃないですか。
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