昨秋から刊行されていた「谷口ジローコレクション」の第二期として『孤独のグルメ』が収録された巻が発売されたので、すかさず購入しました。
故・谷口ジロー先生の代表作を愛蔵版として再発する「谷口ジローコレクション」。出版社の垣根を越えた取り組みとして第一期が小学館と双葉社から発売されていましたが、第二期は集英社と扶桑社から出版されるようですね(『孤独のグルメ』は扶桑社刊)。
私は昨年「描くひと 谷口ジロー展」で久しぶりに谷口ジロー先生の原画を見て改めて感動し、このコレクションも揃えたくなったけどさすがに第一期 10 巻ですら自宅に置く余裕はありませんでした。もし『孤独のグルメ』だけでも発売されたら買おう、と思っていたのでした。
谷口ジローコレクションは B5 判のハードカバーで仕様が統一されています。『孤独のグルメ』の単行本(小説版ではないほう)は A5 判(ワイド判)だから一般的なコミック単行本よりも大きいのですが、それよりもさらに一回り大きい。原画展で原画の緻密さに心を奪われた私としては、可能な限り原稿の緻密さを再現するための大判、かつ新規スキャンとなる本書は手に入れておきたかった。
表紙カバーは基本的にコミック新装版のカバーイラストを踏襲していますが、なんと口絵に 1997 年版の単行本カバーイラストがカラーで配されています。1997 年当時の本は今や保存状態の良いものを目にする機会もほぼないので、この発色の良い状態かつこのサイズで当時のカラーイラストを見られるのは嬉しい。
ちなみにこのイラストは渋谷の百軒店が背景になっていますが、五郎の右側にある「とりかつ」の看板の店は現在でも営業しています。
なお、本書はおそらく初版本のリメイクという位置づけをとっているようで、2008 年の新装版に収録された病院のカレイの煮つけ回は収録されていません。残念。
私は新装版の単行本と電子版も持っているからこれが三冊目の『孤独のグルメ』ですが、今までで最も大きいサイズに加えて紙質と印刷の状態もとても良く、谷口先生の線画やベタのタッチまで見えるかのようです。こればっかりは写真では伝わらないのが惜しい。
まるで原稿をそのまま読んでいるかのようなクオリティ…とはさすがに言いません。それくらい、原画の緻密さや立体感は次元の違うものがあった。でもそれをできる限り再現しようというこだわりは伝わってきます。
原稿から新規スキャンされているということは、写植も改めて打ち直されているということです。よく見比べないと気づかないレベルではありますが、写植が微妙に異なるだけでも受ける印象が少し変わるのが興味深い。
新装版のコミックと比較すると(これも写真ではなかなか伝わらない)、新装版でも絵の緻密さの表現はかなり頑張っていますが、どうしても線が少し太く見えてしまっています。繊細なタッチの表現は谷口ジローコレクションが一段上。これは愛蔵版として持っておく価値があります。
なお、付録として漫画家のヤマザキマリ氏と演出家の中島諒人氏による谷口ジロー先生に寄せたエッセイの小冊子が入っています。谷口ジロー先生によるラフ画がプリントされているのが良い感じ。それにしてもヤマザキマリ先生、生前の谷口先生と面識があったとは。
ちなみに来月末には同 2 巻も「谷口ジローコレクション」として刊行されます。これも間違いなく確保予定。
ああ、なんだかうまいものを食べに行きたくなっちゃったなあ…。
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